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【連載】公文書管理法5年見直しにむけて 第1回 総論 [2015年公文書管理問題]

公文書管理法が2011年4月に施行されてから今年度で5年目に入っている。
公文書管理法の附則第13条第1項には以下の文面がある。

政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案しつつ、行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

そのため、2015年9月28日の公文書管理委員会において、この見直しの手続きに入ることが表明され、年度内に報告書をまとめることとなった。

公文書管理法は重要な法律ではあるが地味であるため、あまり普段は意識されることがない。
公文書管理法は、公文書の作成から保存・廃棄に至るまでの「文書のライフサイクル」全てのルールを定めたものである。

現在までに、公文書の作成義務(第4条)に違反する行為がたびたび表面化したため、法律自体の認知度は徐々に上がってはきている(原子力災害対策本部の議事録未作成から、最近の内閣法制局の集団的自衛権容認に至る過程の文書をほぼ未作成だった件まで)。
特定秘密保護法も、秘密文書をどう管理するかという点では公文書管理制度の一つである。

そのため、この5年見直しで、少しでも公文書管理制度が改善されることが、政府にとっても国民にとっても望ましいと言えるだろう。

委員会の資料に基づけば、見直しの流れは以下の通り。

● 9月28日 第44回公文書管理委員会
10月~ 公文書管理委員会を複数回開催
 ・各検討事項(「資料 1-2」参照)についての議論
 ・海外事例調査
 ・行政機関からのヒアリング 等を実施
● 2月~ 取りまとめに向けた作業を開始


資料1-2を見る限り、見直すのはあくまでも公文書管理法の範囲に留まる。
個人的には情報公開法も含めた、公文書管理制度全体を考え直して欲しいのだが、主旨も管轄も(情報公開法は総務省、公文書管理法は内閣府)違うのでそうはいかないだろう。

なお、海外事例調査やヒアリングと書いてあるが、2013年~14年度に行政管理研究センターに委託事業で調査をさせているので、それを使うのではないかと推測される(2013年度2014年度)。

見直しの報告書が出ても、今の安倍政権の姿勢を考えると、国会を通さなければならない法改正のハードルはかなり高そうである(担当大臣が河野太郎氏と思われるので、安倍政権の中では一番理解はありそうだが・・・)。

ただ、そうであったとしても、この段階できちんと問題点を洗い出し、法改正の必要無い施行令やガイドラインはきちんと見直すなどは十分可能だと思われる。
そのためにも、公文書管理法のルールが現場でどこまできちんと守られているのかをきちんと調査し、現場からの改善案もすくい上げられるようにしてほしいと思う。

ここから何回かに分けて、私なりの分析を重ねていきたい。

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内閣法制局の公文書管理法理解のおかしさ [2015年公文書管理問題]

内閣法制局が、2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定に関する内部での検討過程文書をほとんど残していなかったことが問題となっている。
毎日新聞が9月28日にスクープしてから、どんどんと問題の掘り下げが進んでいる。
私もこの件については、ブログの記事として取り上げた。

内閣法制局が憲法解釈変更の公文書を残さないこと
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2015-09-30

10月16日の毎日新聞の報道によれば、当時の担当参事官であった黒川淳一氏(現農林水産省官房参事官)が取材に応じ、その経緯について弁明を行っている。

<法制局>記録は決裁文書1枚 憲法解釈変更で
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151016-00000006-mai-soci
<法制局>黒川淳一・前内閣法制局参事官との主なやりとり
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151016-00000000-maiall-soci

公文書管理法との関係で黒川氏の発言内容に注目したい。引用します。

--どうして検討の過程を記録に残さないのか。

 成案があって、それに意見を述べるという形ではなかったので、従来の国会答弁をおさらいするようなことが多かった。記録を取るような性質の議論では、そもそもなかった。「頭の整理」というのが正直なところだ。結局、法制局は「何をどこまでやるか」という議論をするわけではなく、ある意味受け身でしかない。「大丈夫でしょうか」という問い合わせに「その考え方なら、憲法はじめ各種の法律に基づいて、まあ大丈夫じゃないか」と言うだけなので。

--普通の意見事務(法解釈について意見を述べる業務)では、意見を求めてきた省庁側の担当者と時間をかけて文書でのやり取りを積み上げると聞いたが。

 ケース・バイ・ケースとしか言いようがない。紙でやり取りする時もあれば、そうでない時もある。方針が固まってから持ち込んで来られるケースもある。

--公文書管理法はあまり意識しなかったのか。

 当然、意識はしていた。公文書管理法は意思決定過程をしっかり残せという趣旨だが、今回は特に我々のほうで意思を決定するという作業をしたわけではないので、特に文書を残す性格のものではなかった。ただ、今回は重要な案件なので、起案をして、うかがいを立てた形でしっかり残した。まあ、逆に「これしかないのか」となってしまうのは分かるのだが。

(引用終)

黒川氏の発言の中で、公文書管理法に関連して指摘しておきたいことは次の3点。

1.検討過程を「頭の整理」として、「私的メモ=行政文書ではない」という判断で記録を残していない。
2.意見事務の際に、文書を作らないケースがある。
3.法制局が「意思決定の主体」で無い場合は、「意思決定過程」の文書を残さなくて良い。


1は、情報公開法制定時から今までずっと問題視されている「抜け道」を使っている。
公文書管理法によれば、「行政文書」は以下の3つを満たすもののみが該当する。

①職員が職務上作成・取得したもの
②組織的に用いるもの
③その機関が保有しているもの


「職務上作成・取得」とは、仕事のために作ったり、他から受け取ること。
「組織的に用いる」は、部局内で共有されていること(回覧されたり、会議で使われたりしたもの)
「保有」はその機関内に保存されていること。

黒川氏は「頭の整理」なので、②に該当しないから行政文書ではないと主張したいのだろう。
黒川氏はインタビューの中で、次のように話している。

--誰が検討していたのか。

 主に私、そして第1部長と次長、長官ということになるが、一堂に会して会議をするという感じではなかった。例えば、過去の国会で「こんな答弁があったはずだ」とか、第1部長との間で議論したりとか。幹部は幹部でいろいろやっていたと思う。

(引用終)

第一部長や次長、長官と「公式に集まって」議論していないので②に該当しない。
実際にそうであるならば、公文書管理法を理解した上で、「途中過程の行政文書を作らなくて済むように仕事をしている」可能性がある。

「幹部は幹部でいろいろやっていた」と話しており、「いろいろ」の中身が長官などの「意見交換」であったならば②は満たされる。
ただ、あえてその時に文書を持っていかないで話せば、「作成していない」ので①を満たさないと言える余地が残る。

次に2であるが、「意見交換」を「非公式」なものとみなし「私的な会合」と称して文書を作成していないか、その場で取った記録は自分用に取った「私的なメモ」であり、②に該当しないから行政文書ではないというどちらかの解釈を取っている可能性がある。

1,2から透けて見えるのは、公文書管理法の主旨を理解していないということだ。
公文書管理法は政策決定過程の検証をするための文書を、きちんと作成し保存しなければならないという法律である。
なので、「非公式だから」とか「私的なメモだから」ではなく、「政策決定過程の文書は行政文書として作成しなければならない」のが筋なのだ。

そこで3の話になるが、「意思決定過程の主体」でないから文書を残さなくてよいという解釈も、公文書管理法の主旨を理解していないということの証左になる。

意思決定をする部署であるかどうかは関係が無い。
「検証」のために文書を残すのであるから、参考意見を話したということであっても文書を作らなければならないのだ。

もし「意思決定機関でないから文書は作らない」が許されるのであれば、複数の省庁で意見交換を行った際、「意思決定を行う機関」以外の省庁は一切文書を残さなくて良いということになる。
それで、どのようにして政策の「検証」を行うことが可能となるのだろうか。

行政文書の定義にあてはまらないから文書を残さないのではなく、「あてはまるように文書を作らなければならない」というのが公文書管理法の主旨である。

今回の問題は、黒川氏個人の問題ということではなく、法制局自体の体質の問題に見える。
なぜこのようなことになったのか、さらなる検証が必要だと思う。
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内閣法制局が憲法解釈変更の公文書を残さないこと [2015年公文書管理問題]

最近全くブログを書いていなかったのですが、さすがにこれは書き残しておこうと思ったので。
毎日新聞のスクープ記事です。私も事前に取材を受けていて、引用部分とは別の所でコメントが使われています。

引用します。

<憲法解釈変更>法制局、経緯公文書残さず
毎日新聞 9月28日(月)9時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150928-00000013-mai-pol

 政府が昨年7月1日に閣議決定した集団的自衛権の行使容認に必要な憲法9条の解釈変更について、内閣法制局が内部での検討過程を公文書として残していないことが分かった。法制局によると、同6月30日に閣議決定案文の審査を依頼され、翌日「意見なし」と回答した。意思決定過程の記録を行政機関に義務づける公文書管理法の趣旨に反するとの指摘が専門家から出ている。

◇審査依頼の翌日回答

 他国を攻撃した敵への武力行使を認める集団的自衛権の行使容認は、今月成立した安全保障関連法の土台だが、法制局はこれまで40年以上もこれを違憲と判断し、政府の憲法解釈として定着してきた。

 法制局によると、解釈変更を巡り閣議前日の昨年6月30日、内閣官房の国家安全保障局から審査のために閣議決定案文を受領。閣議当日の翌7月1日には憲法解釈を担当する第1部の担当参事官が「意見はない」と国家安全保障局の担当者に電話で伝えた。

 横畠裕介長官は今年6月の参院外交防衛委員会で、解釈変更を「法制局内で議論した」と答弁。衆院平和安全法制特別委では「局内に反対意見はなかったか」と問われ「ありません」と答弁した。法制局によると今回の件で文書として保存しているのは、安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の資料▽安保法制に関する与党協議会の資料▽閣議決定の案文--の3種類のみで、横畠氏の答弁を裏付ける記録はない。

 「集団的自衛権行使は憲法上許されない」とする1972年の政府見解では、少なくとも長官以下幹部の決裁を経て決定されたことを示す文書が局内に残る。法制局が審査を行う場合、原則としてまず法制局参事官が内閣や省庁の担当者と直接協議し、文書を残すという。しかし、今回の場合、72年政府見解のケースのように参事官レベルから時間をかけて審査したことを示す文書はない。

 公文書管理法(2011年4月施行)は「(行政機関は)意思決定に至る過程や実績を検証できるよう、文書を作成しなければならない」(第4条)とする。

 解釈変更を巡る経緯について、富岡秀男総務課長は取材に「必要に応じて記録を残す場合もあれば、ない場合もある。今回は必要なかったということ。意図的に記録しなかったわけではない」と説明。公文書管理法の趣旨に反するとの指摘には「法にのっとって文書は適正に作成・管理し、不十分との指摘は当たらない」と答えた。横畠氏にも取材を申し込んだが、総務課を通じて「その内容の取材には応じない」と回答した。【日下部聡、樋岡徹也】

 ◇「民主主義の原点」…記録なし、識者批判

 内閣法制局に関する本や論文を多数執筆している明治大の西川伸一教授(政治学)は「戦後の安全保障政策の大転換であるにもかかわらず、たった一晩で通すなど、あまりにも早すぎる。白紙委任に近い。従来の法制局ならあり得ないことだ」と指摘する。さらに、検討の過程を公文書として残していないことについても、「記録を残さないのは疑問。国民によるチェックや後世の人々の参考のため、記録を残すのは民主主義の原点だ。政府は閣議の議事録を公開するようになり、公文書管理法も制定された。その趣旨にのっとって、きちんと記録を残すべきだ」と話す。
〔引用終)

憲法9条の下での集団的自衛権の行使容認は、自民党政権の下で「不可能」として解釈されてきたものである。
これを変える以上、内閣法制局がどのような議論を行った末に解釈の変更を容認したのかということは重要な意味を持つ。
ところが、法制局曰く、「安保法制懇」と「与党協議会」の資料と閣議決定の案文しか、関連文書として保存していないとのことである。

ちなみに安保法制懇の資料はウェブ上で公開されている。
与党協議会の記録は、NPO法人情報公開クリアリングハウスが情報公開請求をして入手しており、その一部を公開している。

こう言っては何だが「法制局の職員で無くても容易に手に入る文書」である。
つまり、法制局は「誰でも手に入る」資料を、解釈変更を行った際の「意思決定過程の資料」の「すべて」だと主張しているのである。

常識的に考えて「そんなバカな」としか言いようがない。
もし法制局の主張が「本当」だとしたら、内部で「何一つ考えなかった=仕事をしなかった」と堂々と自ら主張していることになる。
「翌日伝えた」という速度については、事前調整の後の結果なのでまだわかるにしても、「電話で」というのもずさんにもほどがある。文書で渡して説明すべきものでしょう。

しかし、横畠裕介長官は「法制局内で議論した」と答弁もしているし、こちらの記事では、高村正彦・自民党副総裁や北側一雄・公明党副代表と長官は非公式に何度も会っており、具体的な調整を行っていたことが明らかになっている。
つまり、「検討している過程を行政文書として意図的に残さなかった」(「非公式」会談はあくまでも「私的に行っている」のであって「業務上」行っていない)ということでおそらく間違いがないだろう。

ではそもそも論として、こういった文書をきちんと残さないのは、法的にどのような問題があるのだろうか。

記事でも紹介されているが、「公文書管理法」の第4条への違反行為である。

第四条  行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
〔一は略〕
二  前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
〔以下略〕

公文書管理法第4条には、「経緯も含めた意思決定に至る過程」の文書を、検証のために作成しなければならないという義務が書かれており、「閣議決定やその経緯」について作成する義務が明確に法文に書かれている。
つまり「経緯」がわかるような文書を作成しなければならない以上、「公式」「非公式」の会談を問わず、長官が与党の関係者と閣議決定の案文の調整をしていれば、当然行政文書は作って記録を取らなければならない。
それを怠っているとすれば、重大な法律違反だと思われる。

おそらく法制局は、法の整合性を判断してきたというプライドから、「別の解釈があり得た」という記録はできるかぎり作りたくないという所もあるのだろう(情報公開請求されるのを嫌がって文書を作らない→作らなければ請求されても「存在しない」で跳ね返せる)。
また、今回の場合は長官と担当の参事官のみが関わり、記録をきちんと付けるような部下がいなかった可能性もあるだろう(それなら長官や参事官が自分で作らなければならない)。

ただ、法制局が今回の記事にどのような言い訳を付けようとも、公文書管理法が「検証」のために存在することは間違いないわけで、国民に対する説明責任を放棄したと言わざるをえない。

正直、解釈変更を認めたのであれば、むしろ堂々とどのような経緯で変更したのかをきちんと記録し、自分達の正当化を図る方が賢明だと私には思えるのだが・・・

この問題はきちんと批判を行っていく必要があると思われる。
安保法制に関わる決定過程も、果たしてきちんと残されているのかの検証も必要だろう。

続報がまたあれば、続きを書きたいと思います。

追記
今回の記事はラジオで話したことを文章にしたようなものです(荻上チキ・Session-22、TBSラジオ、2015年9月28日)。
ウェブ上に切り貼りして上げている人がいたので、紹介をしておきます。ご参考までに。
https://www.youtube.com/watch?v=qNS28lCT-8Q
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特定秘密以外の秘密文書の統一基準問題 (4)改正 [2015年公文書管理問題]

2014年12月末に行われたパブリックコメントを受け、2015年1月21日に公文書管理委員会が開かれ、「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正されました。

公文書管理委員会(第39回)配付資料
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2014/20150121haifu.html

このガイドラインは、特定秘密「以外」の各行政機関に存在する秘密文書の統一基準の作成を目的としています。
12月末までに3回にわたって、その改正案について書いてきました。

そこに書いた文章をもう一度載せておきます。

この問題に注目するのは、特定秘密保護法の濫用を防ぐためでもあります。 濫用を防ぐには、そもそもとして政府全体が所有している秘密文書を最小限に留めることや、いずれはきちんと公開されて検証できような仕組みの導入が必要なのです。

秘密文書全体の管理方法を厳密化することで、特定秘密指定自体も最小限に食い止めることが可能となります。
特定秘密だけを見ていては、木を見て森を見ずとなってしまいます。


すでに改正案の内容については、第1回第2回で述べていますが、簡単にまとめておくと、

・特定秘密以外の秘密を、「極秘文書」と「秘文書」に原則整理する。
・「極秘」は5年以内・延長可、「秘」は期限は無い(文書の保存期間内)。
・「極秘」は部局長、「秘」は課長が指定。
・秘密文書専用の管理簿で管理する。
・管理状況は毎年大臣に報告する。
・管理の規則を作る。


となります。

これまで、秘密文書の基準はほぼ50年前に作られたザックリとした規定しかなかったため、整備されることは良いことだと思います。
以下、パブコメを受けてどう変わったのかを書いてきます。

パブコメを受けて変わったところは、文字の微調整を除くと2ヵ所。

一つ目は、秘密指定の期間が満了した場合は、自動的に解除されることが明記された対照表9頁(4))。
パブコメへの返答13を見ると、自動解除させるつもりだったが言葉が足りていなかったという書き方をしているので、基準を明確にしたということでしょう。

これはパブコメで私も指摘していたところ。なので、きちんと書かれて良かったと思います。

二つ目は、指定した秘密文書のうち、「程度等に応じて必要と認める場合」に大臣に報告するとなっていたところを、「特に重要なものについては」に変更された(対照表11頁)。

これは、あいまいな書き方をしていた所を、「重要なもの」と明記したということでしょう。
変えて良くなったと思いますが、どこまで実効性があるかは未知数でしょうか。

これ以外の所は実質的には変更がありませんでした。もっと改善点はあったかと思いますが・・・

他に主なパブコメに対する答えがなされています。

私が注目したものは以下の通り。

・「極秘」「秘」以外のカテゴリーが置けることへの批判(3,4)
→置く場合は、行政文書管理規則に載せる必要があるので、公文書管理委員会に諮問される。

(コメント)
情報公開クリアリングハウスの調査によれば、「TPP秘密文書」(内閣府、農水省)、「NATO秘密文書」(防衛省)など、個別の秘密文書類型が存在している。
内閣府の説明から考えると、この類型は残るが、その管理方法などは公文書管理委員会で審査を受けるということのようだ。


・「極秘」「秘」の定義が曖昧であるという批判(5)
→各機関が業務内容や組織体制を踏まえて判断

(コメント)
この部分が曖昧だと、結局は秘密が広がることになると思われる。なので、各行政機関に投げっぱなしはまずいと思う。
そうなると、制限の多い「特定秘密」制度を使うよりも、漏洩の罰則は緩いけど使いやすい「極秘」制度が多用されるのではないかというおそれがある。


・「秘」に期間の上限がないのはおかしい(11,12)
→「極秘」に5年という期限があるのは、定期的に管理状況を確認するためにすぎない。「秘」はそれに該当しないので、保存期間を超えない(ガイドラインにも「極秘」の確認の話は追記された、対照表11頁)。

(コメント)
どうやら「極秘」を5年以内と制限を切ったのは、内部事情ということらしい。あまり国民の側を向いているようにも見えないが・・・
しかし、「秘」の管理状況は確認しなくて良いのか。


・秘密文書の管理に関する内部通報の仕組みを別立てで整備すべき(27,28)
→特に別に作る必要はない。通報者の不利益にならないようにする。

(コメント)
確かに特定秘密ではないので、普通の窓口でも良いのかもしれないが・・・


・1年以内に秘密文書を管理できるようにすべき(31)
→3年としたのは、公文書管理法施行時に、それ以前からある文書への適用は3年以内を目途に作業を終えるとしたことを参考にした。

(コメント)
公文書管理法施行時に文書を整理したのに、なぜまた3年が必要なのか。
ただ、秘密文書の管理状況はカオスなのだなと推測はできるので止むなしか。


・各行政機関で作成されることになる秘密文書管理要領を公表すべき(32,33)
→各機関で判断するもの

(コメント)
管理要領が作られた後に、各機関に情報公開請求をしてみないとわからないということになりそう。
新聞などに追及してほしいところ。


・行政文書ファイル管理簿に秘密文書の存在の有無などの欄を設けるべき(36)
→行政文書ファイル管理簿は「行政文書の適切な管理及び行政機関における行政文書ファイル等の保有状況を国民に明らかにすることを目的とするものであり、秘密文書の指定の有無を記載しなくとも、当該目的は達成されるもの」である。

(コメント)
行政文書ファイル管理簿の定義を狭く見すぎているのではないか?
「適切な管理」になぜ秘密文書の指定の有無が入らないのか?
説明になっていない。

ただ、管理簿の改訂を頑なに内閣府が拒む理由は見えてきた。
どうやら、ここを修正するには、ガイドラインを直すというよりは、公文書管理法第7条の管理簿についての条文や、関連する施行令の条文を直さないと解決しない問題のようだ。
その条文に秘密文書の管理についての項目を入れないと、内閣府は変える気がないということがわかった。

以上が細部についてのコメントです。

総合的に考えると、これまでのたいした基準が無かった時よりは改善されるのではないでしょうか。
その意味では整備されることは良かったと思います。

気になるのは、他の方も指摘をされていると思うが、「特定秘密」と「極秘」「秘」を各行政機関がどう使い分けていくかでしょうか。
「特定秘密」は管理が厳密で、他省庁との情報交換も容易ではなくなるので、漏洩時の罰則が緩くなるのを覚悟で「極秘」扱いにしていくということも考えられそう。

「特定秘密」「極秘」「秘」の運用を比較しながら、秘密全体をどう減らしていくかを考えていく必要があると思います。
どうやって監視するかがなかなか難しいですが、知恵を絞っていくしかないと思います。

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特定秘密以外の秘密文書の統一基準問題 (3)私のパブコメ [2014年公文書管理問題]

2014年12月17日、政府は「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についての意見の募集について」パブリックコメントを開始しました。
締切は翌年1月6日です。

今回のガイドライン改定の主な狙いは、特定秘密「以外」の各行政機関に存在する秘密文書の統一基準の作成となります。

なお繰り返しになりますが、この問題に注目するのは、特定秘密保護法の濫用を防ぐためでもあります。
濫用を防ぐには、そもそもとして政府全体が所有している秘密文書を最小限に留めることや、いずれはきちんと公開されて検証できような仕組みの導入が必要なのです。

秘密文書全体の管理方法を厳密化することで、特定秘密指定自体も最小限に食い止めることが可能となります。
特定秘密だけを見ていては、木を見て森を見ずとなってしまいます。

第1回で、現在の「特定秘密以外の秘密文書」の管理について述べました。
第2回は、その改正案の解説をしました。
今回は最後に私が書いたパブリックコメントを挙げておきます。

具体的にはすでに前回のブログで解説をしていますので、細かくは説明しません。
読みやすさを考慮してレイアウトを変更してあります。

文中の「改正案」はこれです。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000121224


「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についてのパブリックコメント
2014年12月25日
瀬畑 源

・ガイドラインの「第6 行政文書ファイル管理簿」の改訂を行い、秘密文書(特定秘密も含む)の存在の有無、秘密の指定期限などを記載する欄を設けるべきである。

 改正案7頁の「第10 2(5)」において、「秘密文書は、秘密文書を管理するための簿冊において管理するもの」とされ、秘密文書管理簿を別に作成して、秘密指定はそこで管理をするとされている。しかし、行政文書ファイル管理簿との事実上の二重帳簿になっており、前者を見てもその文書に秘密文書が含まれていたかどうかはわからない。なお、特定秘密も同様の仕組みになっている。
 よって、「秘密文書(特定秘密も含む)の存在の有無」などの欄を行政文書ファイル管理簿に設け、秘密指定解除後に検証を行いやすくするべきである。なお、秘密指定中ならば、この欄を情報公開法に基づいて非開示にすることが可能であり、欄があること自体に問題はない。また、保存期間の満了の際の移管・廃棄の判断を行う際に、誤って「歴史公文書等」にあたるものの誤廃棄を防ぐためにも重要である。


・ガイドラインの「第8 点検・監査及び管理状況の報告等」のそれぞれの項に、秘密文書の点検・監査・報告を重点的に行うことを明記するべきである。

 秘密文書の適切な管理は、国民に対する責務というだけではなく、内部統制のためにも必要なはずである。よって、管理を徹底化するための点検や監査などの仕組みを、より厳密にすることをガイドラインに明記するべきである。

〔注:上記の2つは、今回の改正案に入っていなかった箇所に「追加すべき」ものとして挙げました。〕


・「第10 2(1)」解説部分(8頁)にある、「原則として、極秘文書及び秘文書の2つに区分し指定する」のうち、「原則として」は削除するべきである。

 今回のガイドライン改正は、これまで各行政機関に任されてきた秘密指定を統一化するために行われるものである。そこに「例外」を作ることは、現在の各行政機関独自の秘密指定制度を残すことに繋がるため、今回の改正自体を無意味にする可能性が高い。よって、「極秘」「秘」の2つの分類に、全ての秘密文書を合わせるべきである。
 ただ、どうしても「原則として」を残さざるをえないとするのであれば、例外にあたる秘密文書は「極秘文書と同様の文書管理を行うこと」(秘密指定期間など)をガイドラインに明記するべきである。また、例外規定を作成する場合は、公文書管理委員会の同意が必要であることを明記し、規定の公開を義務づけるべきである。
 秘密指定制度自体への国民の不信感の大きさは、特定秘密保護法への反対運動の大きさからもうかがえる。そのために、透明性のある仕組みの構築をするべきである。


・「第10 2(1)」の「極秘」「秘」文書の定義が曖昧であるため、特定秘密保護法における「別表」(特定秘密に指定できる情報の限定)と同様の規定を、各行政機関で作成される規定の中に、この作成義務を盛り込むべきである。

 特定秘密保護法において、「別表」が存在していても、指定範囲が広がることへの懸念が表明されていた。今回の「極秘」「秘」については、その「別表」にあたるものすらも、作成義務を各行政機関は負っていない。このため、無制限に指定範囲が広がる危険性がある。
 秘密指定を最小限に抑えることは、秘密文書を各行政機関がきちんと管理するためにも必要な措置である。よって、各行政機関に対して、秘密指定の可能な情報類型を規定に組み込なければならないという義務を、ガイドラインに入れるべきである。


・「第10 2(2)」の「秘文書」も、秘密指定の期間を「5年を超えない」と限定する。また、秘密指定の期限が満了した際に延長手続きが取られなかった場合、秘密を「自動解除」するようにするべきである。

 「極秘文書」は特定秘密に準じた期間設定をしているが、「秘文書」については全く限定がなく、無制限に指定が可能となっている。これも同様に「5年を超えない」といったような期間の限定を行い、満了時に指定の見直しを行うことを可能にするべきである。また、「秘文書」の場合、件数が多い可能性も高く、見直しが繁雑になることも想定されるので、延長手続きが取られなかった秘密指定は、自動的に解除される規定をガイドラインに入れるべきである。


・「第10 2(7)」の「管理状況」への大臣への報告義務についての解説部分(9頁)にある「秘密文書の管理状況については、第8-3-(1)の管理状況の報告事項とすることを予定している」の「ことを予定している」を削除すること。

 秘密文書の管理も、公文書管理法に基づいて行われる以上、管理状況の報告は管理法上の義務である。報告内容は、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」の34-35頁に準じるものとするよう、報告の項目をガイドラインに列挙するべきである。


・改正案13頁「平成29年度末を目途に必要な措置を完了するよう努めるもの」とあるが、これを平成27年度末にするべきである。

 すでに公文書管理法が施行されて4年近くが経過しており、秘密文書の管理が徹底されるまでに3年かかるというのは、明らかに過剰な期間設定と考える。少なくとも1年以内には完了すべきである。


・改正案19頁「モデル要領」の「第13 秘密文書の管理の適正に関する通報」に関連する規定は、ガイドラインに新たな項目を立て、特定秘密における内部通報制度と同等の仕組みを構築するべきである。

 モデル要領のこの部分は、他に一切の説明が無い。公益通報者保護法に則って置かれているのならば、保護法自体が犯罪行為(刑罰規定に違反する行為)にあたるものしか保護していないため、ここで規定されている「秘密文書の管理が本要領に従って行われていないと思料した者は、○○(例:法令遵守対応窓口等)に通報できる」に適用されるのか疑問である。
 また、秘密指定の不正を通報した場合、具体的に対応する仕組みが全く述べられていない。よって、この規定は形式的に置かれているにすぎず、機能させることを意識しているとは思えない。
 秘密指定制度の適正な運用を担保するためには、公益通報制度は重要な役割を担っている。よって、最低限、特定秘密保護法における内部通報制度に準ずる統一的な仕組みをきちんと構築するべきである。

以上

連載はこれで終わりです。なにか御質問などがあればtwitterなどでご連絡下さい。
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