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情報保全諮問会議について考える [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法に関連するさまざまな基準について意見を述べる「情報保全諮問会議」が発足し、2014年1月17日に初会合がありました。
この会議の権限とメンバーについて、分かる範囲でコメントしてみたいと思います。

情報公開諮問会議のウェブサイトはこちら
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/index.html


まず権限について。

諮問会議の行う職務については次のように書かれている。

(1) 会議は、次に掲げる意見を、内閣総理大臣に対し述べることとする。
 ア 特定秘密保護法第3条第1項、第18条第2項及び第3項並びに附則第3条の規定に
   基づく意見。
 イ アに掲げるもののほか、特定秘密保護法の適正な運用を図るために必要な意見。


イは+αの職務が発生するかもしれないための保険。
アから見ると主に3つの職務がある。

特定秘密の指定・解除、適性評価の統一的な運用を図るための基準への意見を述べる(第18条第2項)。
②毎年、①の実施状況を内閣総理大臣から報告を受け、意見を述べる(第18条第3項)
③施行から5年間「特定秘密」を保有しなかった機関を特定秘密を指定できなくする際に意見を述べる(第3条第1項、附則第3条)。


施行前に行う職務は①にあたり、今後、そのために会議が開かれることになる。
権限の薄さなどの問題については、以前書いているので今回はそこには触れない。


次にメンバーについて。

メンバーは7名。以下、繁雑になるので敬称略。

宇賀克也 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
塩入みほも (駒澤大学法学部准教授)
清水勉 (日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長)
住田裕子 (弁護士)
永野秀雄 (法政大学人間環境学部教授)=主査
南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー取締役 ファウンダー)
渡辺恒雄 (読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆)=座長


菅義偉官房長官の1月14日の記者会見(15:25~)によれば、「安全保障、情報保護、情報公開、公文書管理、法律、報道」の識者を集めたとのこと。
なお、諮問会議第1回資料5を見ると、このうち「安全保障」は書かれていないので、この部分は官房長官の勘違いかもしれない。

では、この識者を分類してみると、

情報保護  南場?
情報公開  永野、塩入
公文書管理 宇賀
法律     清水、住田?
報道     渡辺


という分類であろうか。

秘密保護法との関係で考えると、永野、宇賀、清水の人選は非常によくわかる。

永野はCiNiiの論文検索を見ると、元々は米国の環境法や労働法が専門だったのが、その関係で情報公開などに興味を持ち、次第に秘密保護法制について論陣を張るようになったようだ。
保護法の審議の際にも与党の参考人として賛成意見を述べており、「主査」として議論の中心的な役割を担うことを期待されての起用だろう。

宇賀は公文書管理委員会の委員も務めており、公文書管理法や情報公開法の解説本を書くなど、この問題の第一人者の法学者。
政治的な発言をそれほどしないことも、政権にとっては安心材料ではあるだろう。

清水は日弁連で秘密保護法反対の先頭に立っていた弁護士。
反対派から1名は入れないとバランスは取れないということから起用されたものと思われる。

残り4人。

渡辺は誰もが知っている読売新聞のドン。政治記者としても著名。
報道の自由については強く主張するとは思われるが、なにぶん87歳。
法律の細かい部分まで理解しているのかどうか(会議での議事録が公開されれば、理解度はわかると思うが・・・)。

別に渡辺が入ること自体の是非は問わないが、メディアの代表が「彼だけ」であるというのはそれで良いのかと疑問に思う。
今現在、取材活動を行っている現役の編集委員クラスの記者が起用されるべきだったのではないか?

次に塩入だが、CiNiiで論文を検索してみると、判例解説などで情報公開などについて書いたものはあるが、基本的にはドイツ法(公権論)の専門家。
駒澤大学のサイトでの紹介を見ると「行政法上の国民の請求権」が研究テーマとなっている。
だが、秘密保護に関係するような論文を書かれているわけではない。
海外の法制との比較を期待されてなのだろうか?

住田と南場については、何の「識者」なのか正直よくわからない。
官房長官の分類からすれば、住田は「法律」、南場は「情報保護」にあたるのだろう。

住田は、本人のサイトの経歴を見ると、元検事で弁護士に転身。
男女共同参画などについての論文などがあり、基本的には民法系の専門のように見える。
テレビの「行列のできる法律相談所」に出演していたことで知られているので、橋下→安倍のラインで推薦されたのだろうか。
刑事法の専門家は誰か入るべきだと思うが、その役割を期待されているとはさすがに思えないのだが・・・

南場はモバゲーなどを運営するDeNAの創業者として知られている。
だが、マッキンゼーの出身などを考えても、経営者ではあっても、情報保護の専門家では全く無いだろう。
もちろん、運営しているサイトにおける個人情報保護などについては、それなりに知っているだろうが・・・
情報セキュリティ対策については結構重要だと思うのだが、その代表としてはどうなのか?

この7人のメンバーを見てみると、秘密保護についての議論をするのにふさわしいメンバーが揃ったのかと言われると正直疑問である。
依頼をして断られたケースがひょっとすると多かったのかもしれないが、それにしても不安の残るメンバーではある。


最後に、この会議の公開の問題について。

各紙ですでに報道されているが、この会議については一般公開せず(記者にも公開しない)、議事録は作成されるが公開せず、「議事要旨」のみが公開されるとのことである。
朝日の1月18日の報道だと、永野主査は「機密性の高い事柄も議論になり(議事録全文の)公開には問題がある」とし、要旨の公表で「透明性は確保される」と述べた」とのこと。
また、渡辺座長は「秘密なしの秘密会議だ」述べたという。

これは非常に問題がある。
私は以前から、この諮問会議の「議論をオープンにすること」を主張してきた。

国民からはこの法律が「恣意的に」運用されることへの不安が多く提示されてきた。
その不安を払拭するためにも、議事録はきちんと公開するべきである。

ちなみに「議事要旨」で透明性が確保できるという永野の発言は、あまりに楽観的にすぎる。
審議会などの「議事要旨」が、いままでどのようなものとして作られているのかを知らないのだろうか。

私がこれまで見てきたものでは、だいたいがA4で2枚ぐらいで、書かれている内容は出席者の一覧+「○○について議論した」「○○については疑問があるとの意見があった」ぐらいのことしか書かれず、はっきり言って内容はスカスカで意味をなさないのがデフォルトである。
よって、議事要旨で透明性など確保されるわけがない。

なお、センシティブな議論があるから全て公開できないというのであれば、毎日新聞が1月18日の社説でも書いていたとおり、「機密性が高かったり、プライバシーにかかわったりする部分は伏せて公開すればいい」のだ。
その部分だけ墨塗りにして公開すれば良いのであり、全てを非公開にする必要性があるとは思えない。

また、議事録を「作成」することは明言している以上、日弁連などが情報公開請求を行うことは目に見えており、いずれにしろ部分的には公開されることになるはずである。
それならば、最初からできうる限りの情報は公開するべきであろう。

秘密保護法は、その運用面で多くの不安を抱えている法律である。
そうである以上、できうる最大限の情報は政府が自主的に公開するべきだろう。
そうしなければ不安など解消されるはずもないだろう。


議事録無しでの分析は相当に厳しいが、公開された資料を見ながら、できる限りの分析を今後も続けていく予定である。
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自民党「特定秘密保護法 ―3つのポイント―」を検討する [特定秘密保護法案]

2013年12月24日に自民党は「特定秘密保護法 ―3つのポイント―」を公開しました。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/123257.html

特定秘密保護法についての「皆さんの誤解を解きます」として用意されたビラです。
今回はこの内容を検討します。

私の立場は毎回書いてますが、秘密を統一的に管理する法律は必要、だが、今回の特定秘密保護法は不備が多すぎて反対という位置です。詳しくはこの記事を参照

以下、見出しを抽出して、必要に応じて内容部分も引用していきます。
論じやすくするために、適宜丸数字などを補います。

上記にリンクしたビラ本体を見ながらご覧頂く方がわかりやすいかと思います。


1 この法律は、国家・国民の安全を守ることが目的です。
 ≪緊迫化する国際情勢の下、一日も早い法整備が必要≫
 ≪国際的には当たり前の法律≫


(コメント)
安全保障のために「秘密を守る」ということについては、おそらく否定的な人はそれほどいないのではないか。

揚げ足を取ってるのは承知だが、「ルールを作ったことによって、国際的な信用が増し、より核心に迫る情報が得られるようになります」というのは、そんなに簡単な話でもないと思う。
特定秘密をハッカーなどに盗まれたりなどしないための情報セキュリティーのあり方など、むしろ情報の管理システムのあり方が重視されると思うが。


2 一般の方の生活には、全く影響はありません。
 ≪政府の「特定秘密」のほとんどは、「衛星写真」と「暗号」です≫
(①)
 ≪一般の方は政府の「特定秘密」に触れることはありません≫ (②)

(コメント)
①「特定秘密」のほとんどは「衛星写真」と「暗号」です

これは、議論がずらされているように思う。
ずっと、安倍首相が言っていたのは、現在「特別管理秘密」として指定されているものの9割が「衛星写真」であるということだ(12月9日記者会見)。
少なくとも一国の首相がこういったことでウソはつかないだろうし、また特別管理秘密への質問主意書への答弁で挙がっている例を見ても、この裏付けはできるだろう。

また、「特別管理秘密」よりも「特定秘密」が絞られるということも国会で述べている(11月26日→産経記事)。
よって、9割ではなく「ほとんど」という言い回しになったのだろう。

問題なのは、首相の発言などからは、「今はほとんどが衛星画像」ということしか保証されていないことである。
つまり、今後も「衛星画像」や「暗号」がほとんどだと断言できる根拠が無いのだ。
「特定秘密」にしてしまえば外部からは確認できない以上、首相が言っていることは検証できない。

さらに、くせ者なのが実は「件数」の数え方
首相が9割と言っているのは、おそらく文書の「件数」が9割ということで考えているのだろう。
だが、この「1件」あたりどれだけの分量の文書があるのかは、現場の人間以外わからない。

ちなみに、私は宮内庁に情報公開請求したとき、「行政文書ファイル」1件に簿冊1000冊以上入っていたことがあってびっくりしたことがある(さすがに宮内庁も自らその酷さを認めていたが・・・)。
これは極端な例であるが、もともと「外部に見せたくない」ものは、タイトルを曖昧に付けて、その下に大量の関係文書を入れておくというのは十分にあり得る話である(情報公開請求を行う時に利用する「行政文書ファイル管理簿」が検索に使いにくいというのは有名な話)。

もちろん、特別管理秘密を私が見れない以上、「推測」の域は出ない。
だが、こういう可能性もあり得るということは頭に置いてよいことだと思う。

②一般の方は政府の「特定秘密」に触れることはありません

これは一見するとすんなり読めてしまう部分。
もちろん、本来「特定秘密」にあたるものが、そうやすやすと一般の目に触れる所に出てくるはずがない(というか出てきていたら、情報管理がまずすぎる)。

これは「問題の立て方」が「狭い」のが問題。
そもそもの大見出しである「一般の方の生活には」という立て方自体が狭い。

確かに自民党が示唆しているとおり、「自分が特定秘密を入手して捕まるか否か」という点だけを考えれば、「一般の方は捕まる人は出ません」というのは、おおよそはその通りだと思う。
ただ、「共謀」「教唆」でも逮捕される以上、「全く影響はありません」と断言はできないだろう。
何をもって「共謀」「教唆」とするのかは、警察などの権力側が決定権を持っているのだから。

ただ、問題はそこではない。
そもそも「直接本人に影響があるか否か」という所が焦点なのがおかしいのだ。
(なお、保護法案審議終盤の朝日新聞の「直接的な影響の例」の報道は、安倍首相の土俵に乗って論を展開しているためにとんちんかんなものが多く、むしろ首相を利していたとしか思えなかった。)

「秘密保護」という問題は、民主主義のインフラである「知る権利」とのバッティングこそが焦点である。
民主主義を機能させるためには、情報がきちんと国民に提供されることが絶対に必要である。
その情報に基づいて、国民は選挙などの政治行動をするからだ。

だが、一方で安全保障上の重要な情報には、リアルタイムであらゆる国民に見せられないことはありうる。
では、その「秘密」と「知る権利」を両立させるためにはどうするか。

「秘密」を極小化する仕組みを作ること。
「秘密」指定をされた情報は、いつかは必ず国民に公開され、検証の対象とすること。


この二つが必要なのである。

ではこの二つは今回の特定秘密保護法で保証されているのか。

保証されていない。

3にて具体的に説明するが、結局この部分が保証されていない以上、安全保障や公安関係の情報の多くは「特定秘密」に指定されて国民に提供されない。
特に安全保障関係の情報が恣意的に特定秘密をかけられて伏せられた場合、国民の「政治判断」への影響は甚大なものになるだろう。

その意味で「生活に全く影響ない」というのは論点をずらしているとしか見えない。


3 秘密保護法は、“官僚の勝手を許さない”ための法律です。
  ≪今まで、ルールがなかったことが問題だったのです≫
(①)
 ≪二重三重のルールができます≫ (②)
 ≪国立公文書館を積極的に活用します≫(③)

(コメント)
①今まで、ルールがなかったことが問題だったのです

「今までルールがなかった」のは全くもってその通り。
私は冒頭でも述べたように、秘密を管理する統一法は必要という立場である。

ただ、そこで引用されている例は恣意的(民主党政権時の尖閣ビデオ問題)。
そもそも、秘密に関するルールも作らずに、50年を超える期間、政権を握っていたのはどこの党なのですかと。

「自分たちがずっと恣意的にやっていたのはまずかった。だから今回、法で統一的に管理することにしたんです」と言うならわかる。
自分たちを棚に上げて、民主党の失策のみを取り上げるのはフェアではなかろう。

(これは「防衛秘密廃棄問題」にも同じ事が言える。安倍首相は「4万件廃棄されたうち3万件が民主党政権」と言って責任転嫁しているが、それは廃棄記録自体が5年で廃棄されているから遡れないだけで、その前の自民党政権時代にも同様に捨ててる。国立公文書館に防衛秘密にあたる文書が移管された話など聞いたことがない。)

②二重三重のルールができます

ここは解説の部分も引用しておく。

指定は外部有識者の会議の意見を踏まえた政府統一基準に基づき、大臣が行います。さらに、総理大臣が、各省庁の運用状況を厳しくチェックし、有識者の意見を付して、毎年、国会に報告します。ですから、官僚だけで決めることはできません。

これはすでに以前のブログで書いたので細かく繰り返さないが、まず「外部有識者の会議」=情報保全諮問会議は、法定の機関でなく権限も限定的。
しかも運用がきちんと行われているかの監察権限もない。

総理大臣がチェックすると言うが、チェックするのは保全監視委員会や情報保全監察室という、秘密指定を行う省庁の次官やその部下達が出向してくる機関であり、その報告を総理大臣が受ける仕組みである。

この監視委員会や監察室は、どう見ても内部統制機関でしかない(ある省で特定秘密にしていた文書が他でも特定秘密になっているかチェックするなど)ので、チェック機関としては機能するとは思えない。
よって、恣意的な拡大解釈や、特定秘密の間にこっそり廃棄される可能性を消すことができない。

また、安倍首相はインタビューで、9割は衛星写真でほかに暗号などがあるのだから、「残りはかなり少なくなる」として、首相でチェックは十分できると示唆している。

ものすごく好意的に見てみる。

特別管理秘密は42万件だから、「特定秘密」は多少減るとして35万件ぐらいとする。
その95%を衛星写真や暗号と仮定すると、17500件。
もっと多く見て、99%が衛星写真と暗号と仮定しても3500件。

上記したように、1件あたりの文書量は不明である。
これを多忙な首相がチェックできるというのだろうか。

目玉的に特定の情報だけをピックアップしてチェックできるかもしれないが、やはり官僚のいいなりになる以外ありえないと思う。
正直、チェックできるほど首相は暇ではないと思う。

結局、こういったチェックの仕組みというのは、「存在する」ことに意味があるのではなく、「機能する」かどうかで判断する必要がある。

首相がこれまで提示しているものからは、恣意的な判断をさせないしくみが「機能する」とはいくら好意的に見ても厳しいと言わざるをえない。
「官僚の勝手を許さない」と言っているが、むしろ「政治家の勝手を許さない」になりかねないように見える。

③国立公文書館を積極的に活用します

ぜひ積極的に活用していただきたい。
だが、そこまで言っている以上、当然、「国立公文書館の拡充計画」は用意されているんですよね!

いまの国立公文書館は、独立行政法人であり、正規の職員数は50人に満たない。
書庫は2016年には満杯になり、新館を作らないとパンクしてしまう。
この拡充をしなければ、大量に移管されても、目録の作成や公開の審査などだけでも大変な作業量になり、まともに機能しなくなる可能性が十分にありうる。
今現在ですら、職員が過重労働で大変だという噂が漏れ伝わってくる状態だ。

是非とも「大国日本」にふさわしい国立公文書館へと拡充していただきたいと思う。


以上で具体的な検討は終わり。

総合的に見ると、自分に有利な土俵を引いて、その上で「大丈夫です!」と叫んでいるようにしか見えない。
これで不安を解消させようとしているのであれば、説明が全然足りていないし、そもそも恣意的な運用をできないような制度的な保証を作る以外に、結局不安を解消させることなどできないと思う。


本年の更新はこれにて終了です。
来年も公文書管理制度の視点から、この特定秘密保護法の問題を引き続き論じていこうと思います。

よろしく御願いいたします。
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「第三者機関」について改めて考える(特定秘密保護法) [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法が2013年12月6日に成立しました。
成立直前になって、政府からさまざまな「チェック機関」を作るとの提案がなされています。

正直、よくわからない部分もある(政府の説明が足りてない)のですが、いま分かる範囲で、どういった組織が作られそうなのか、その問題点はどうなのかをまとめておきたいと思います。

これまで第三者機関については以前に書いたことがありますので、それも合わせて参照のほどを。
修正案が出る前の記載ですが、内容的には今でも参考になると思います。

特定秘密保護法案を考える 第4回 監視・検証のしくみ
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04

「第三者機関」のあり方が問題(特定秘密保護法案)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17


政府が4,5日の参院の特別委員会で設置を表明したのは以下の4つ(すべて「仮称」とのこと)。

①情報保全諮問会議
②保全監視委員会
③独立公文書管理監
④情報保全監察室


国会答弁や各紙の記事を総合すると、それぞれ以下のような組織らしい。合わせて論評もしてみる。


①情報保全諮問会議

秘密保護法第18条第2項と第3項に基づいて設置される。
この条文によると、

A:「特定秘密の指定及びその解除」「適性評価」の「基準を定める」
B:「内閣総理大臣」がAの状況を毎年「報告」し「意見を聴かなければならない」


の2点が職務となる。
Bについては、その意見を聴いた後、首相は国会に報告する義務がある(第19条)。

メンバーについては、時事通信の報道によれば「情報保全諮問会議は5人以上の有識者で構成。(1)情報保護(2)情報公開(3)公文書管理(4)報道(5)法律-の各分野から首相が選ぶ。任期は3年となる見通し」とのこと。

(論評)
まず、政府の外に置かれるということみたいだが、法的に設置内容が定めれていない機関なので、一体どういった組織の位置づけになるのかがよくわからない。
報道などから推測すると、首相の「私的諮問機関」という扱いになるように見える。
本来ならば、どこに設置されるとか、委員の数や任命方法などが法律に明記されるべきものではないか。

Aについては、おそらく、この法の担当部局である内閣情報調査室が案を作って、それを元にして諮問会議が議論するということになるだろう。

ここで重要なのは「議論をオープンにすること」。
議事を公開し、議事録もきちんと作成、配付資料も公開すること。

作成された基準自体は公開すると安倍首相は12月5日の党首討論でも明言している以上、その基準を決める過程も公開するべき。
ここを非公開にすれば、「やはり秘密を拡大しようとしている」と疑われても仕方ないだろう。

また、委員になった方には、濫用されない基準を作るための努力を期待したい。

Bについて、毎年1回、報告を首相から受けるということだが、国会へも報告するということは、指定・解除件数や適性検査に受かった人数などの報告がなされる程度ではないか。
これ自体は意味があると思うが、ただ、「公開される」ことが前提である以上、報告内容は概説的な情報しか出てこないものと思われる。

また、そもそもこの諮問会議は、直接的に各行政機関に監察をする権限は無い。
報告に対する不服があった場合に、各行政機関に調査を求める権限も無い。

これでは、あまり監視機能としては役に立たないというのが率直な感想。


②保全監視委員会

内閣官房に設置。トップは官房長官。
外務、防衛、警察などの次官級の官僚(情報コミュニティーの関係者と首相は述べていた)を集めて、各行政機関の秘密の妥当性を相互チェックする仕組み。
また、適性評価のチェックもという言い方を4日の国会答弁ではしていた(監察室が後から作られることになったのでそこは無くなった?)。

この委員会が、①のBにあった報告を作成し、首相に提出する。
首相の4日の委員会答弁によれば、米国の省庁間上訴委員会(Interagency Security Classification Appeals Panel、略称ISCAP。訳語は人によって異なる)を参考にしているとのこと。

(論評)
「チェック機関」と言われているが、正直「内部統制機関」としか見えない。
つまり、「秘密の指定漏れ」の相互チェックが目的なのではないか(例えば、外務省で特定秘密にされているのに、防衛省では指定してなかった→指定させる、みたいな)。
「その意味」では法律を動かすためには必要だろうが、これを「チェック機関」と言われても・・・という感じ。

また、米国のISCAPを参考にしているなら疑問が出てくる。
ISCAPという組織は、

・機密指定に関する重大な役割を担う行政機関の代表者(国務省、国防省、司法省、国立公文書館、国家情報長官室、国家安全保障問題担当大統領補佐官、からの代表)による合議制機関
・情報自由法(日本で言う情報公開法)に基づく請求が機密指定で不開示だったときに、請求者が機密指定への不服申立をISCAPに行い、その審査をする。
・機密の自動解除を適用しない例外を決定する、などの権限がある。
(参考資料A、Bより)

というものである。
ISCAPのウェブサイトにそのあたりは詳しく書かれている。
すべてに目を通すことができていないが、少し見るだけでも、ずいぶんと政府が述べている監視委員会とは機能が異なっているように見える。

そもそも、機密指定の解除を国民の側が請求できるというシステムは、秘密保護法には入っていない。
選定されるメンバーを真似をしたことはよくわかるのだが。

またISCAP自体も「監視機関」とは少し違うように見える。
なにをどう参考にしたのかは、色々と政府に説明してほしいところだ。


③独立公文書管理監

内閣府に置かれる審議官級の職。
国会答弁を見ていると、「勝手に廃棄されないようにチェックを行う」「スムーズに国立公文書館に移管させる」ために設置するとのこと。
報道を見ると、④の監察室はこの管理監の下部組織とするとのようだ。

(論評)
この4つの組織のうち、一番良くわからないのがこの管理監。
そもそも、「特定秘密」を解除した後には国立公文書館等(外務省外交史料館なども含む)に「すべて」移管される以上(第4条第6項)、何をチェックするんだろうか。

もし「特定秘密」指定中に廃棄されないようにチェックするのであれば、この管理監が独立性と強力な権限がないと、何も機能しないように思う。
チェックするという以上、例えば警察庁の公安部にすら査察に行けるぐらいでないと意味がない。

でも、内閣府の中の「審議官」である以上、そのような権限は望むべくもないだろう。
なので、これで「特定秘密」の間に闇に葬ることを止めることはできないと思われる。


④情報保全監察室

内閣府に設置。20人規模で外務省、防衛省、警察庁などの課長級未満の職員で構成。
③の管理監を補佐する。
「室」の予定だが、「局」への格上げも検討する。

国会での答弁によれば、これが秘密保護法附則第9条の組織にあたる。

附則第9条の該当部分は「行政機関の長による特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が真に安全保障に資するものであるかどうかを独立した公正な立場において検証し、及び監察することのできる新たな機関」である。

機能としては、行政機関の指定・解除の監察、有効期間の適否などをチェックし、是正を勧告できるとのこと。
首相などの答弁では、米国の情報安全保障監督局(The Information Security Oversight Office、略称ISOO)を参考にしているとのこと。

(論評)
やろうとしていることは、秘密を監視するために必要不可欠。
だがこの監察室は「独立した公正な立場」なのか
これは成り立っているのだろうか。

毎日新聞の報道によれば、維新、みんなの党などとの4党実務者協議での合意文書では、「内閣府設置法第3条」に基づいた組織(内閣官房を助ける)とのことであり、事実上、次官級の②の監察委員会の補佐役になるのではないかとされている。

5日の参院の特別委員会で、維新の室井邦彦議員から「公正取引委員会などと同格にする気は」と聞かれた際に、菅官房長官はずらした回答をしたので、組織としては「局」までで止めるつもりであり、それ以上のものにする気はないのは明らかだ。

そもそも、内閣から独立してるというのは、「内閣総理大臣の言うことを聞かない」可能性が担保されている必要がある。
内閣府の官僚にそれができるだろうか。

権限的に無理だろう。
せめて人事院並みの独立性が担保されていないと、「独立」「公正」な機関とは言えないのではないか。

この独立性が無い「監察室」が、果たして特定秘密の指定・解除などを「監察」し「是正勧告」など出せるだろうか。
しかも、そこの職員は秘密指定を行っている各機関からの出向組。

どうみても無理。
これで機能するとは、どれくらいポジティブに考えてもありえない。

また、米国のISOOを参考にしているのであれば、「強制的な秘密指定解除権限」や「局長は大統領任命」に類する独立性や権限の強さが必要だろう。
ISOOは大統領直轄の国立公文書館記録管理庁(NARA)に存在しており、大統領令によって強力な監査機能を与えられている。

よって、情報保全監察室がISOOと同様の機能を果たせるとは全く思えない。


以上が、この4つの組織の紹介と論評になります。

さて、改めてまとめてみたい。
この4つの組織で「監視機能」が働くとは思えない。

内部統制機関としての監視委員会は置いておいて、問題は情報保全監察室(管理監も含める)と諮問会議の位置づけだろう。
監察室を「情報保全管理院」として人事院並の独立性を担保し、その管理院を監察する機関として諮問会議を位置づけるというのであれば、かなり「独立」「公正」は保たれる可能性が高くなる。
人事が数年で元の行政機関に帰る出向組で固められて骨抜きにされない限りは。

こういった機関を置くことは、今の秘密保護法上でも十分可能。
ここまでやって、初めて「第三者機関」と言えるのではないか。

政府には、「独立」「公正」な監視機関のあり方を再考してほしいと強く願う。


追記

今回のことを調べていて気になったことを一つ。
安倍首相は国会答弁でずっと「第三者機関」という言い方をしていた。
4日の参院の特別委員会の佐藤正久議員への答弁の時には、「第三者機関」と言ってから「第三者機関」とわざわざ言い直していることがあった。

そもそも、衆院のみんなの党との修正協議の時に、首相は「第三者な仕組み」という言い方をしている。
よって、この「的」という点に大きな意味があるのではないか?

その後、官房長官や首相がどういう言い回しをしているかはわからないが、「的」というのは「のような」みたいな意味合いだから、「第三者機関」とは意味が相当に変わってくると思うんだが。
映像を全部チェックできてないので、いまはどのような言い方をしているんだろうか。

メディアの方は、そのあたり是非とも検証してほしい。


参考資料

A: マイケル・カーツ(米国国立公文書館記録管理庁(NARA)記録サービス局局長、館長補)「米国における政府公文書へのアクセスの保証―米国国立公文書館・記録管理庁(NARA)の役割―」『沖縄県公文書館研究紀要』第10号(2008年3月)
http://www.archives.pref.okinawa.jp/press/kiyou/kiyou10/kiyou10_07.pdf
→米国の機密解除についての当事者による講演。

B: 今岡直子(国立国会図書館調査及び立法考査局行政法務課)「諸外国における国家秘密の指定と解除―特定秘密保護法案をめぐって―」『調査と情報』第806号(2013年10月31日)
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8331133_po_0806.pdff?contentNo=1
→他国の国家秘密指定、解除についてコンパクトにまとめたもの。

C: 「特定秘密保護における第三者機関の独立性」、sunaharayの日記、2013年12月4日
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20131204/p1
→砂原庸介大阪市立大学准教授による「第三者機関」のあり方についての解説。非常にわかりやすい。
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特定秘密保護法成立後の課題 [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法案が12月6日に参議院で可決されて成立しました。
本ブログでは、公文書管理制度の視点から、この法案が非常に不備だらけであることを指摘してきました。

以前のブログと記述がかぶりますが、改めて反対理由を簡潔に書き、その上で今後どう考えるべきか指摘したいと思います。


そもそも国家が存在する以上、「秘密」は存在します。
それは、「公表されると国や国民の安全に支障が出る」という文書に「秘密」指定をして、取扱いに注意をするためです。その情報に触れることが可能な人を制限するためのものです。
兵器の性能が高まった現在において、秘密指定を行って情報を厳重に管理をする必要は間違いなくあるでしょう。

しかし一方で、民主主義という制度は「情報を有権者である国民に知らせる」ことが必須となっています。
国民はその情報を元にして、政府を支持するのか否かなど、さまざまな政治判断をします。
そのため、政府に不利な情報を隠蔽することや、誤った情報を流すことは、民主主義という制度を動かすために絶対にしてはならないのです。

この「秘密を守る」ことと「知る権利」を保証するということは、もともと理念としてバッティングします。
ですが、この両方は、現在の国家においては必要不可欠です(前者は「必要悪」とも言えるでしょう)。

よって、この二つのバランスをどう取るのかというのが問題になります。
特に「秘密」は、一度指定されてしまえば国民の前からは「見えない」ものになってしまうため、この指定をどうコントロールするのかが非常に重要になります。
「秘密」を極小化すること、そして「秘密指定」されても、いずれ公表しても問題ない時期になった時にすべて国民に公開することで、このバランスは保たれることになります。

他国では「秘密保護」の仕組みがある一方、できる限り減らすための監視機関が整備されています。
この監視機関が機能しなければ、民主主義という制度自体が機能不全を起こすからと考えられているからです。

しかし、今回の法案には監視するために必要な機関が法文に組み込まれていません。

政府は参議院可決間際になって、「情報保全監察室」「保全監視委員会」など、思いつきのように連発して「第三者機関」による監視ができるようになると主張していますが、政府から独立した権限を持つ機関になるようにはどう見ても読めません(これについては次回のブログで詳細に検討します)。
こういった機関は「存在」すれば良いのではなく、「機能」しなければ意味がありません。

本来ならば、「監視機関」をきちんと整備をするというのであれば、法案と一緒にどのような監視機関を作るのかを提示するのが当然でしょう。
ですが、そういったあたりまえとも言える主張が顧みられなかったのは残念の一言に尽きます。


なお、今回の法案を賛成する方には、「スパイ防止のためには必要」ということをおっしゃる方が多いように思います。
それが必要だとしても、なぜ「官僚が秘密をいくらでも指定できて、ろくな監視もできません」ということを許容することにつながるのでしょうか。

後者を無視するのはおかしいでしょう。
この二つの間には論理的に飛躍があるでしょうに。


では、今後どうしたらよいでしょうか。
保護法が可決され、現在の国会での議席数を見れば、これが撤回される可能性はほぼゼロでしょう。
よって、施行されるまでの間に、少しでも濫用されないような仕組みを組み込ませなければならないと思います。

焦点となるのは2つあると思います。

1つめは「施行準備の透明性」の確保を要求すること。

施行のためには、施行令(政令)を作成する必要がありますし、さまざまな機関を作ったり、秘密指定や適性評価の基準を作ったりすることになります。
その「作成」の過程を「透明化」させることが絶対に必要です。

例えば基準作成は、有識者会議の「情報保全諮問会議」で議論されることになるでしょう。
この会議が非公開で行われたり、議事録が作成されなかったりした場合は、基準を作成する過程自体が「秘密」となってしまい、これこそこの保護法に「裏」があると思わざるをえなくなります。
基準自体は公開すると政府は明言していたはずですので、それを決める過程も当然公開されなければなりません。

また、施行令を作る際はパブリックコメントを法的にやらなければならないはずです。
まず、施行令を「情報保全諮問会議」で議論させることは必要です(確実に担保されているとは言い難い)。
そして、国会の公聴会のように法施行直前にアリバイのようにパブコメをするのではなく、パブコメを受けて会議を数回は開いて施行令の内容を精査し直すぐらいの余裕を持って作成を行わせる必要があります。

首相などは、国民に分かってもらえるようにもっと丁寧に説明をすると言っているのですから、駆け込みで施行直前に「こういう制度になりました、以下略」みたいなことは許されません。
それは自分たちの発言を裏切ることになります。

国民からの多くの批判が「拙速で説明が足りていない」ことの不安からきている以上、秘密保護法を施行するための準備に関わる情報は、できるかぎり早く公表して、意見を受けて修正するという態度を政府には取ってほしい。

そして、政府にこういう「透明性」を求めるためにも、プレッシャーは与え続ける必要があります。
保護法が通ったから批判を止めてしまった場合、基準を裏で好き放題に作られかねません。
監視を怠らず、通常国会においても、準備状況は詳しく追及するべきだと思います。


2つめは、情報公開法改正や公文書管理法改正を行うよう要請し、「知る権利」の拡大に努めるべきです。

情報公開法改正案に関しては、すでに民主党政権時代に法制局の審査も終わっている法案が存在しています。
今回も民主党はすでに国会に提出していますが、内容はそれなりに評価できるものです(提出された時点で解説はブログに書きました→第1回へのリンク)。

また、公文書管理法改正は、公明党が保護法案を承認する際に、閣議や閣僚懇談会の議事録をきちんと作成させて、30年後には公開させる仕組みを入れることを自民に同意させたものです。
なお、民主党も秘密保護法案への対案として公文書管理法改正案を出しており、これも参考にされるべきものでしょう(解説はブログですでに書きました)。
ですので、自民党は公明党との約束を反故にせずに、きちんと取り組んでほしい。

この二つの法案については、野党から検討に値する法案が出されているので、これを元に与野党間で議論がなされるべきだと思います。


特定秘密保護法は成立しましたが、このブログでは、引き続き、特定秘密保護法の分析や提言を載せていきたいと思います。
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特定秘密保護法案論説まとめ [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法案について、公文書管理制度の視点から解説をかなり書いてきました。
ただ、本数が多くなってきましたし、ダブることは書いてこなかったので、どの記事を見れば何が読めるかを整理したいと思います。

私の基本的な立場は、秘密を管理するための統一的なしくみは必要、だが今回の法案は不備だらけで話にならないので反対、というもの。

○修正案の解説

改めて特定秘密保護法案に反対する
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-26
→簡単に反対理由をまとめたもの。一番わかりやすいかと。

特定秘密保護法案修正案を読む
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-28
→具体的な内容解説。


○修正案を見る際に必要な視点

秘密指定の期間をめぐるやり取りがズレている(特定秘密保護法案)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-21
→秘密指定を「原則最長60年」にしたことが「改善」だと、なぜ維新の会は思ってしまったのか?
それは公文書管理制度を理解していないからだという批判。
あまりメディアでもこの視点からは解説されていない。ブログでのアクセス数が一番多かった記事。

「第三者機関」のあり方が問題(特定秘密保護法案)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17
→監視機関としての「第三者機関」とはどうあるべきなのかを論じたもの。
「存在する」ことと「機能する」ことは違う。

「特定秘密」の範囲限定の困難さ
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-12
→みんなの党からの修正要求で秘密の範囲が限定されたが、そもそも範囲を限定するという議論には限界があることを指摘したもの。

大臣は「特定秘密」関連の政策をどうやって精査するのか(特定秘密保護法案)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-12-03
→実際に法律を施行した場合、特定秘密に関連する政策で、大臣は相談相手がほとんどいない状態に陥る可能性を指摘したもの。


○公文書管理法と秘密保護法案との関係

「特定秘密」に公文書管理法は適用されるのか
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-07
→「特定秘密」指定の間は公文書管理法が適用されない。勘違いされている方が結構いるので。


(2014年1月5日 訂正)
上記のブログを書いた後に、政府答弁が変わっており、適用されるとのこと。詳しくは↑の記事に追記した。
ただし、↓で示した公文書管理法との整合性の問題は、残ったままである。
改めて考え直してみたい。
(追記終)

秘密保全法案(特定秘密保護法案)と公文書管理法(仮説)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-09-09
→まだ概要しか発表されていなかった時に書いたもの。もし特定秘密に公文書管理法が適用されたら色々と矛盾が生じることを論じた。


○がっつりと解説を読んでみたい方用

特定秘密保護法案私注を作りました
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-10-31

特定秘密保護法案を考える 第1回 概要
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-1

特定秘密保護法案を考える 第2回 なぜいまこの法案が
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-02

特定秘密保護法案を考える 第3回 そもそも秘密はある
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-03

特定秘密保護法案を考える 第4回 監視・検証のしくみ
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04

特定秘密保護法案を考える 第5回 民主党情報公開法改正案は歯止めになるか
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-07

特定秘密保護法案を考える 補論 「特別防衛秘密」の闇
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09

→この7つは、法案自体を解説したもの。
この法案がどのような経緯で出てきたのか、何が問題なのかを公文書管理制度の視点から解説したもの。
第2回から4回あたりが最も読んでほしいところです。

民主党の秘密保護法案対案を考える(上) 公文書管理法改正案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

民主党の秘密保護法案対案を考える(下) 情報適正管理3法案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-11-29

→この2つが民主党の対案を論じたもの。

以上になります。よろしければご参照のほどを。
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大臣は「特定秘密」関連の政策をどうやって精査するのか(特定秘密保護法案) [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法案でずっと気になっていることがある。
それは、この法律が施行されたときに、「特定秘密」に関わる政策を大臣はいったいどうやって精査するのかということ。

「特定秘密」を扱えるのは、法案11条によれば、「適性評価」を合格した者に原則限られる。
「適性評価」の該当者は、国家公務員、都道府県警察官と「物件製造・役務の提供」をする民間業者の社員。

それ以外に「適性評価」を受けなくても「特定秘密」を扱える人として次の7つが挙げられている。

一 行政機関の長
二 国務大臣(前号に掲げる者を除く。)
三 内閣官房副長官
四 内閣総理大臣補佐官
五 副大臣
六 大臣政務官
七 前各号に掲げるもののほか、職務の特性その他の事情を勘案し、次条第1項又は第15条第1項の適性評価を受けることなく特定秘密の取扱いの業務を行うことができるものとして政令で定める者


つまり、政府の要職にある者がこれにあたる。

さて、ここで考えてみたいのだが、例えば、ある大臣に「特定秘密」に関連する政策が官僚から提案されたとする。
その時に、この大臣は誰と相談できるのか。

今の規定だと「副大臣・政務官+官僚」ぐらいにしか相談できない。
とすると、自分の盟友である仲間の議員や、ブレーンになっている学者などに意見を聴くことはできない。
彼らは適性評価を受けていないので、話せば「秘密漏えい」の罪になる。
そうなると、よほどその大臣本人があらゆる政策に精通してない限り、官僚のいいなりになるしかないのではないか?

「七」の政令委任事項があるので、関われる人の範囲は広がるかもしれないが、少なくとも「職務の特性」などを勘案ということは、何らかの関連する「職」に就いていない人が当てはまることはないだろう。

裏技を少し考えてみると、例えばブレーンになっている学者や議員を全員「○○省顧問」みたいな役職(公務員にあたる役職を作る)にでも就けて適性評価を受けてもらうか。
民間のシンクタンクに相談するのであれば、特定秘密が扱える民間業者に指定して、担当社員に適性評価を受けてもらうか。

でも前者となると、ブレーンを全員公表する必要があるし、公務員と相談していることになるので記録も残さないとまずかろう。
後者は、そのシンクタンクが「特定秘密の保護のために必要な施設設備を設置」していないといけないので、民間業者も負担が大きい(適性評価を受けていない社員に漏れないようにしなければならないなど)。

よってこの二つはできなくもないけど、ずいぶんとハードルが高いように思える(他にも裏技があるかも)。

また、原理的には「官僚は大臣の命令を遵守する(官吏服務紀律)から大臣の意向に逆らわない」とか、「副大臣・政務官に専門家を起用すればいい」とか言えなくもない。
だが、実態とはずいぶん乖離しているように思える。

政治家は自分一人だけで政策を考えているわけではないだろう。
特に大臣になるような政治家は、各所のブレーンとなるような人からアドバイスを受けながら政策を考えているものではないのか。また秘書なども大きな役割を果たしているだろう。

この法律が施行された後、「特定秘密」に関わる政策を実行する際に起こりうることを、いま大臣になっている政治家たちはどのように考えているんだろう。
まさか「官僚を信用しているから全然問題ない!」とか思ってないよね・・・
また、実際に施行された際にどういう運用がされるのかについて、政府側はどこまで詰めて考えているんだろうか。

国会でそのあたりは議論になっていたのだろうか?
もしご存じの方がいれば教えていただければと思う。

追記

改めて考えたのだが、要するに官僚の「政治任用」の幅が狭いことが問題になる。
米国は、長官による政治任用の幅が大きいので、自分のブレーンを要職に起用できる。
だが、日本では今のところ政治任用できるポストは副大臣政務官+αぐらいに限られている。

この場合に今回の法案のような仕組みができた場合、大臣は省内で孤立無援になる可能性がありうるのではということなのだ。
結局、日本の政治システムに適合した仕組みになっているかが怪しいということなのだ。

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民主党の秘密保護法案対案を考える(下) 情報適正管理3法案 [特定秘密保護法案]

政府の特定秘密保護法案がみんなの党や維新と修正されていく中で、11月19日に民主党が対抗するために公文書管理法の改正案と情報適正管理3法案をぶつけています。
民主党はそれ以前にも情報公開法改正案を国会に提出しているので、これで5つの法案が提出されたことになります。(情報公開法改正案についてはすでに分析した。)

衆議院を特定秘密保護法案が通ったのですっかり忘れられてますが、秘密保護制度を考えるためにも分析だけは続けてしておこうかと思います。
ウェブ上に上がっているPDFが文字認識できずコピーできないので、要約で話を進めます。
(ささいなことだが、こういう配慮ができないのはどうかと思う。)

(上)で公文書管理法改正案を分析したので、残りの情報適正管理3法案について書きます。
長文なので分割しようとも考えましたが、切るのが難しいのでそのまま行きます。読みにくい方は要約部分を別のウィンドウに出すか、印刷して読むかしていただければ。


民主党が「情報適正管理3法案」として出しているのは以下の3つ。

A 特別安全保障秘密適正管理法案(以下「管理法案」と略する)
  →政府の「特定秘密保護法案」をベースに修正を行ったもの
B 情報適正管理委員会設置法案(以下「委法案」と略する)
C 国会法改正案


具体的な内容は以下のように要約できる。

「目的」に「知る権利」などが記載(管理法案1条)

②政府案の「特別秘密」を「特別安全保障秘密」(外交及び国際テロ)に限定
 (管理法案3条1項、別表)。
 a)これまで別法で存在していた「防衛秘密」「特別防衛秘密」は除外
  公文書管理法を適用して、そちらで管理
(自衛隊法、MDA秘密保護法改正)。
 b)「適格性確認」(政府案の「適正検査」)は、「特別安全保障秘密」と「防衛秘密」
  「特別防衛秘密」で共通化
(管理法案附則4,5条)。

監視機関として「情報適正管理委員会」を設置(委法案2条)
 a) 内閣府設置法第49条による行政委員会(公正取引委員会や国家公安委員会と同じ。
  いわゆる「三条委員会」にあたる)
(委法案2条)
 b)委員は6名(常勤は最大3名)。事務局も置かれる(年間予算約5億)(委法案6条1、2項、
  17条、末尾の「本案施行に要する経費」)
 c)委員は国会が指名して、内閣総理大臣が任命(委法案7条1項)
 d)「特別安全保障秘密」の指定・解除や適格性確認の基準を定める(管理法案19条)
 e)「特別安全保障秘密」の解除申請、または内部告発による異議申立の際に、
  調査して勧告。勧告に対する措置も報告させる
(管理法案5条)
 f)「特別安全保障秘密」の指定を30年以上行う場合の審査(承認がないと延長不可)
  (管理法案4条4項)
 g)「適格性確認」に不服があったときにその申立を審査(管理法案15条)

④「特別安全保障秘密」に指定できない情報を列挙(不祥事、すでに公表、公正競争阻害目的、
  国・国民の安全確保に必要ない情報)
(管理法案3条2項)

国会に対して管理状況報告、報告の公表義務(管理法案21条)
 a)国会への「特別安全保障秘密」提供は議長が最終決定権限
  (インカメラ審査も可能)
(国会法改正案)

罰則は内部からの漏えいのみ(管理法案23,24条)
 a)未遂、取得(故意に唆した場合などは罰則あり)には特別な罰則は無し
 b)最高刑は政府案の半分の懲役5年

⑦裁判所におけるインカメラ審理を可能に(管理法案11条1項3、4号)

一つ一つ分析してみる。

①について
管理法案1条の「目的」に、「国の保有する情報は本来国民のものであるとの国民主権の理念にのっとり国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由を十分に尊重しつつ、恣意的な情報の秘匿が行われないよう、当該情報の適正な管理に関し・・・」という言葉が挿入された。

政府案に落ちている視点。
これを挿入することは、もし裁判などで秘密指定を争うような事態になったときに、こういった理念が法律に書いてあるのは重要になると思う。

②について
情報を「外国政府又は国際機関との情報共有」に絞った民主党案概要)。
政府案の別表にあった、「防衛に関する事項」と「特定有害活動の防止に関する事項」を全て削除。「テロリズム」については「国際的な」との限定を付けた。

防衛を外したのは「防衛秘密」を外したことによる措置。
特定有害活動を外したのは「公安」関係の条項を削除したということ。この法案が公安警察の強化であるとみなして、ここを外したものと思われる。
「テロリズム」も「国際的」に限定し、国民への恣意的な適用を防いだというもの。

公安を外したのは賛成。
テロリズムを「国際的」に限定することに、実効面で意味があるのかは正直なんとも言い難い。

だが、「特別安全保障秘密」と「防衛秘密」「特別防衛秘密」を分けたのは疑問。
公文書管理法で管理をするということのようだが、その場合は公文書管理委員会が秘密を監視するということになる。
別に情報適正管理委員会を作ることになっているのに、重複して職務をさせるのだろうか。

制度設計上この2つを分けるのはすっきりしない印象。
この3つに公文書管理法を適用した上で、アクセス制限などを秘密管理条項として付けるというのならすっきりすると思うんだが。

③について
民主党案の胆の部分。
第三者機関である「情報適正管理委員会」を作り、委員は国会が選ぶ。
秘密基準を定めたり、解除・延長審査を行う。

・・・うーん。
監視機能を考えたことは評価する。だが不十分にすぎる。

機能面からすると、d~gの機能はすべて重要なので、この点は良いと思う。

問題点としては、「解除・延長以外の審査機能が無い」ということ。
各行政機関から「解除」や「延長」の申請があって初めて審査ができる。

よって、自発的に秘密管理を調査する機能がない。
これでは、「特定秘密」が指定されている間はブラックボックスのままであることは何も変わらない。
「内部告発待ち」みたいな状態になっているのだ。

少なくとも、毎年報告を提出させ、各機関を抜き打ちで調査する権限(秘密管理が徹底されているかの確認も兼ねて)がなければ、監視機能としては不十分だろう。

組織面からすると、公取などと一緒の権限は、「首相が第三者」とか言うレベルよりはマシだが不十分。
(私は最低限人事院と同格であるべきという主張。)

それより問題は「組織が小さすぎる」こと。
年間予算5億なら、委員6名+事務局数人という体制なのでは?

おそらくこういった組織で大丈夫だと考えているのは、「待ち」の組織であるからということなのだろう。
あるいは、公務員を削減しているさなかだから、あまり大きな組織は作れないという配慮か。

国会が主導して委員を指名するかどうかという点が自民から批判を浴びていたが、正直その議論以前に、組織と機能の貧弱さを感じる。
また国会が主導して人選するというのも、どうやるのかイメージがわかない。
国対委員長が集まって、政党バランス考えて委員を推薦するということなのだろうか?

監視機関をろくに検討しようとしない自民党よりははるかにマシだが、残念だがこちらも付け焼き刃で作ったという評価をせざるをえない。

④について
いわゆる「ネガティブリスト」(これに当てはまる情報は秘密指定不可)を定めたもの。
この発想は良いと思う。ここは文句なし。

⑤について
国会に管理状況を報告させるのはいいのだが、このままだと件数ぐらいしか出ないかも。
また、報告内容に対して、国会の側が何か行えると一切書いていないので、ただ単に報告書を受け取るだけになってしまうように思う。

もし監査を機能させることを考えれば「秘密会を開いて監査できる」という条文が必要かもしれない。
また、最低限、「報告内容に異議がある場合は、情報適正管理委員会に調査を要請できる・調査結果を国会に報告させる」ぐらいは入れておくべきではないか。

aの特別安全保障秘密の国会への提供について、議長が最終権限を握るというのは賛成。
前回のブログでも書いたが、今のままだとまだ行政機関側の判断で国会に提出しないことが可能なので。

⑥について
未遂や取得に罰則が無くなったことで、報道関係者などへの適用ということは無くなった。
不正に入手した場合は、普通に刑法(窃盗罪など)が適用されるのだろう。
ただ、漏えいさせた側が厳罰に処されることは変わってはいないので、公務員の側に萎縮効果はあるだろうなとは思う。

私は現在の政府案の厳罰化には反対。あのままでは拡大解釈がし放題になりかねない。
民主党案については、この案にプラスして、監査が機能している(特別安全保障秘密が本当に国や国民の安全などに限定できている)ことと、公益通報制度(不正告発)が整備されていることがあれば賛成する。
この2つが保証されていない時点では、言論弾圧に利用される可能性が高いので断固として反対。

民主党案では、「特別安全保障秘密」の不正適用についての内部告発制度は③eで整備しているが、例えば金銭面などでの不正行為などがあった際の告発制度は整備されていない(この案のままだと、告発した側が漏えいで罪に問われる)。
もう少しきちんと詰める必要のある部分だろう。

⑦について
今の政府案だと、特定秘密の指定をめぐる裁判(行政訴訟)になった場合、その特定秘密文書を裁判官は見ることができない。
それを裁判官が見れるようにするということ。

これは必要な条文だと思われる。


以上が具体的な分析。

総合的な評価としては、「政府案よりははるかに良い」が「まだまだ不十分(特に監視機能)」というところだろうか。
評価できる部分も多いが、根本的には「特別安全保障秘密」である間に監視ができないので、闇に葬られる可能性は残り続けるだろう。
だが、今の政府案を少しはマシにするためのアイデアは含まれていると思う。

では、批判している私はどういう制度を考えているのかだが、すでにブログでは色々と書いてきたし、もう長いので簡単に書くと次のようになる。

公文書管理制度全体を管理・監査する公文書管理庁(院)の設置(100人規模、人事院と同格)
管理庁を監視、または諮問を受ける公文書管理委員会の強化。国会からの監視も可能にするシステムも保証。
秘密文書もすべて公文書管理法の指定下に入れる。その上で、秘密を統一的に管理(アクセス制限など)するための条項を管理法に加える(ないしは別法を作る)。


秘密は統一的な基準で管理し、監査機能を働かせてできる限り最低限の指定に絞る。
文書をきちんと作成させ、勝手に捨てさせず、いつかは国立公文書館等で公開させる。

以上で分析を終わりにします。

追記 BLOGOSに転載されたものを御覧になった方へ

BLOGOSに過去の記事がどこまで転載されるのかわかりませんが、自分のブログで特定秘密保護法案の話は、かなりの本数の記事を書いています。その文脈でこの記事は書かれています。
よろしければご参照のほどを。(転載されるようになったのはここ数日なので。)
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特定秘密保護法案修正案を読む [特定秘密保護法案]

11月26日に衆議院を通過した特定秘密保護法案。
みんなの党と維新の会と作成した修正案が可決されたわけですが、いったい何が変わったのか精査してみたいと思います。

修正案の私注を作りましたのでご参考までに。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_law2.pdf

ちなみに修正前の法案の私注はこちら。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_law.pdf

では主に何が変わったのか。

①目的や罰則の部分に「外部からの侵略」などの限定が入った(1条、24条1項)

②「特定秘密」を指定できない機関を内閣総理大臣が決めることが可能になった。また5年間特定秘密を指定しなかった機関は、自動的に指定できない機関に移行する(3条1項、附則3条)

③「特定秘密」は原則30年で解除。ただし、暗号などを除いて60年を延長上限とする。延長を許可されなかった文書は全て国立公文書館等へ移管(4条3、4、6項)

④国会が特定秘密の提供を求めた場合、原則的には行政機関は従う(10条1項、附則10条)。

⑤政府は特定秘密の指定などについての報告を、毎年国会に報告し公表する(19条)。

⑥有識者会議が特定秘密の基準を作成する(閣議決定で確定)。また、政府は特定秘密指定などの報告について有識者会議から意見を聴くこと(18条2、3項)

⑦「特定秘密」は内閣総理大臣がコントロールし、各機関の長に資料提出や改善指示を出せる(18条4項)

⑧検証・監察機関の設置を検討する(附則9条)

⑨「特定秘密」の文書類型のうち、「その他の重要な情報」という曖昧な記述は削除(別表)


順番に見ていく。

①について
「外部侵略」などの限定を付けたのは、おそらく「国内の言論弾圧に使うのではない」と主張したいということだろう。
だが、法技術的な問題だと分かってはいるが、「等」が付いている以上、拡大解釈は可能だろう。
また、24条1項についても、別にこれを限定したところで、報道の自由等への影響が軽減されるわけでもない。

②について
維新が主張していた「特定秘密」を指定できる機関を限定すべきという主張を容れたもの。
だが、わざわざ内閣総理大臣がそんな限定をするとも思えないし、5年間特定秘密を指定しなかった機関を外したところで「だからどうした」と。
維新の顔を立てたというだけで、実質的には何も意味が無い改正。

③について
これが「改悪」されたとメディアなどから総叩きにあった部分。
30年で原則解除と書いたまでは良かったが、7つの類型(政令で決める事項があるから実質はそれ以上ある)以外は60年までOKと入れたのは致命的な改悪。
これでは60年までは延長できるとみなされるのがオチ。

すでにこの問題についてはブログで書いたので詳細には書かないが、各機関で保存するのではなく、国立公文書館に移管して、そこでいつ公開するかの判断をするのが筋。
各機関で抱え込むということが前提になっている時点で、公文書管理制度が何一つ分かってない。
この条文ははっきり言って「酷い」の一言に尽きる。

あと、延長を内閣が拒否した場合には、その文書は国立公文書館等に全て移管(廃棄できない)と決めたのは良いのだが、「拒否した場合」のみなのかが気になる。
つまり、延長申請をせずに解除した文書を全て移管対象とするとは読めない。
この点は、最低限参議院ではっきりさせておくべきところ。

・・・まあ、監視機関が無い以上、特定秘密から解除される前に闇に葬られていても気づけないんですけどね。

④について
ここは改正してかなり良くなった部分。
さすがに自分たちが特定秘密を見れるか否かという部分だったので、自民党側もある程度は妥協しやすいところだったか。
国会の求めに対して、行政機関側が「特定秘密」を提供するか否かの決定権があるように読めた部分が、原則的には提供するというように読めるようにはなった。

ただ、「安全保障に著しい支障」の時には拒否できるという部分は残ったので、恣意的な情報隠しが行われる可能性は排除できていない。
この点については、民主党が対案として提出している国会法改正案を取り入れ、議長がインカメラ審査を行って最終判断を行うという仕組みにするべき。
そこまでやらないと国会のチェック機能は働かないだろう。

⑤について
政府は「特定秘密」の指定解除について、毎年国会に状況を報告して公表する仕組み。
これ自体は必要だと思われる。
ただ、公表する以上、件数などぐらいしか出ないだろう。

それよりも問題なのは、この報告書に異議があるときに、国会が行政機関の長から意見を聴取する権限がないこと。
つまり、報告を受けるだけで、その報告の監査のようなことを国会が行う規定が存在していない。
チェックする機能もセットで作らないと、ただ単におざなりな報告書が出てきて終わりになるだけだ。

⑥について
結局「有識者会議」がなんぞやということに尽きる。
基準を作ったり、毎年の報告書に対する意見が言えたとしても、その会議自体が法定組織ではなく、法的にどのような地位・権限があるのか全く決まっていない以上、まともに機能するとも思えない。

せめて⑦の監査を内閣総理大臣が行うときにこの会議を絡ませろと思うが、そういった規定も無い。
結局おざなりな会議を作ってお茶を濁そうという発想からなにも変わっていない。

⑦について
各行政機関任せにせずに内閣総理大臣が「特定秘密」の指定解除に関与できるというのは、総合的に特定秘密をコントロールするという側面では評価はできる。
だが、あくまでも「内部統制」の話であり、これが「監査機能」として働くかと言われると違う次元の話ではと思う。

またせめて、実地調査をできる権限とか、「指示」に対する「回答義務」(どういう取り組みをしたのか)ぐらい無いとおかしいだろうと思う。
別にこれがあっても監査機能にはなってないですが。

この条文は「付け焼き刃」として作られたとしか正直思えない。
どうやって機能させる気なのかさっぱり見えない。
結局「機能する監視機関」をどうやって作るかという発想が無いから、なんだかよくわからない仕組みを作ってごまかすということになっているのだ。

⑧について
検証・監視機関は絶対に必要。
だが、法を作ってからこの機関を検討するのはおかしいでしょう。

最初からこういった機能を組み込んだ上で法律を作っていないとおかしい。
附則はしょせん「附則」にすぎないので、これをやらなかったからといって責任を取る必要は無い。
なので、こういった文章が入っているから大丈夫と主張するのはおめでたいとしか思えない。

⑨について
前にも書いたが、情報の類型を限定するのは限界がある。
よって、「その他の・・・」を削ったところで、拡大解釈を止めることはできない。


以上、述べてきたが、はっきりいって「小手先に色々なものを直したが、本質的な欠陥をほとんど変えていない」というものでしかない。
評価できるのは、国会への特定秘密提供に関わる部分が多少改善されたという所ぐらいで、あとは改悪されている部分すらある。

前回のブログでも書いたが、結局「機能する監視機関」を設置しなければ、この法案の欠点は解消されないのだ。
いくら小手先で文面をいじっても、各行政機関の恣意的な拡大解釈や廃棄は止められない。

何度もくり返し書いているが、どのような監視機関を作るのかを議論するのが先。
それをせずにこの法案を通してしまえば、後世に重大な禍根を残すことになると思う。

以上で分析は終わります。引き続き、参議院での議論も注視していく予定です。
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改めて特定秘密保護法案に反対する [特定秘密保護法案]

先ほど11月26日に特定秘密保護法案が衆議院を通過しました。
これまでさんざん本ブログにおいて、この法案の何が問題なのか書いてきましたが、改めて「公文書管理制度」の点から批判をまとめておきます。

そもそも国家が存在する以上、「秘密」は存在します。
それは、「公表されると国や国民の安全に支障が出る」という文書に「秘密」指定をして、取扱いに注意をするためです。その情報に触れることが可能な人を制限するためのものです。
兵器の性能が高まった現在において、秘密指定を行って情報を厳重に管理をする必要は間違いなくあるでしょう。

だが一方で、民主主義という制度は「情報を有権者である国民に知らせる」ことが必須となっています。
国民はその情報を元にして、政府を支持するのか否かなど、さまざまな政治判断をします。
そのため、政府に不利な情報を隠蔽することや、誤った情報を流すことは、民主主義という制度を動かすために絶対にしてはならないのです。

この「秘密を守る」ことと「知る権利」を保証するということは、もともと理念としてバッティングします。
ですが、この両方は、現在の国家においては必要不可欠です(前者は「必要悪」とも言えるでしょう)。

よって、この二つのバランスをどう取るのかというのが問題になります。
特に「秘密」は、一度指定されてしまえば国民の前からは「見えない」ものになってしまうため、この指定をどうコントロールするのかが非常に重要になります。

他国では「秘密保護」の仕組みがある一方、できる限り減らすための監視機関が整備されています。
この監視機関が機能しなければ、民主主義という制度自体が機能不全を起こすからと考えられているからです。

今回の安倍政権が出している「特定秘密保護法案」は、この「監視機関」が存在しません。
よって、秘密が無尽蔵に増えていく可能性が極めて高いと言わざるを得ません。

政府はこう言います。

「秘密にできるものは表に掲げてあるものに限定しているから大丈夫!」
「第三者機関が基準を作るから大丈夫!」
「首相が監視するから大丈夫!」
「監視機関の設置を検討するから大丈夫!」
「特定秘密が解除されたら国立公文書館に移管されて公開されるから大丈夫!」


その表に従っているかを誰が確認するのですか?
法的権限が一切決まっていない機関がまともな基準をつくれるんですか?そしてそれを守ってもらえるんですか?
首相が監視するというなら、それをどういう仕組みで運用するのですか?
監視機関は「いつまでに」「どのような」ものを作るのですか?
「特定秘密」が移管される前にこっそり捨てられても、誰も気づけなくはありませんか?


監視機関というのはただ「あれば」いいということではありません。
「機能」しなければ意味など無いのです。
また、いくら「情報類型を限定」したところで、チェックする人が誰もいなければ、拡大解釈されてもわかりません。

もし本気で「監視機関」をきちんと整備をするというのであれば、法案と一緒にどのような監視機関を作るのかを提示するのが当然でしょう。
「これから検討します」では話になりません。
法案が通ってしまえば、まともな検討をしないのは目に見えています。

この他にも報道の自由等、様々な問題がある法案ですが、公文書管理制度という点から見れば、この点が最も大きな問題だと考えています。


なお、この法案を潰しても「秘密」は存在し続けます。
すでに今でも秘密は闇に葬られ続けているのです(「防衛秘密」は毎年廃棄され、国立公文書館に移管されていない)。

なので、私はこのブログで、「秘密を統一的に管理するルール」は必要と主張しています。
そのためには、強力な監視機関を作らなければなりません。

いまのままこの法案が通ってしまえば、全てが闇に葬られても誰も気づけません。
そして、これまでの官僚文化を考えれば、こういう時には文書を捨てるでしょう。

まずはこの法案を廃案にした上で、監視機関のあり方をきちんと検討し直すべきでしょう。
その上で、情報公開法や公文書管理法との関係を整理し、できうる限りの情報は公開し、秘密指定された文書は監視して、いずれはきちんと公開される仕組みを構築しなければならないと思います。

参議院で慎重な審議をきちんと行ってほしいと思います。


追記

この法案、自民党や安倍首相を強烈に支持するような方々は、「スパイ防止のために必要」うんぬんで賛成する人が多いような気がしますが、「スパイ防止」のためなら「官僚が何をやっててもわからない」ことを許すのでしょうか?
前者が必要だとしても、後者を容認するのは別問題ではありませんか?
そんなに政府や官僚は無条件で信じられるものでしょうか?

また、自民党は「永久与党」でいられると思ってるんですかね?
自分たちが野党に回ったときに、あらゆるものが「特定秘密」で覆い隠されていることに気づいて頭を抱える姿が目に浮かびますが。
せめて国会がもっと監視できる機能を作っておかないと・・・
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秘密指定の期間をめぐるやり取りがズレている(特定秘密保護法案) [特定秘密保護法案]

11月20日に自民党と維新の会が特定秘密保護法案の修正案に同意をしたというニュースが流れている。
その中には、「特定秘密の指定期間を「最長60年」とし7項目の例外を設けること」という内容が入っている。

つまり、

(原案)「特定秘密」の指定は5年以下+延長可、30年を超える場合、内閣の同意
     ↓
(修正案)上記の内容+特定の分野(暗号など)以外は60年を超えさせない。

ということのようだ。
維新の会としては、いつまでも際限なく延長される点に歯止めをかけたとでも言いたいのだろう。

だがそもそもの前提の考え方がおかしい。
これではむしろ「60年までは延長し放題」という解釈を行政機関側がしかねない。
制限を付けたように見えるが、むしろ延長を推奨する可能性が高い。
少なくとも「歯止め」というのであれば、「原則30年で解除」「例外は60年まで」「それ以上はダメ」というのが筋論だ。

ではなぜこんな修正案が出てきて、これが「良くなった」と解釈されてしまうのか。
それは、「特定秘密解除」=「即全面公開」と勘違いされているからだ。

「特定秘密を解除する」というのは、あくまでも「特別な管理を止めるというだけであり、解除した後は情報公開法や公文書管理法に沿って、公開や非公開が決められることになるのだ。

解除後も行政機関が対象文書を持ち続ければ情報公開法が、解除後に国立公文書館等に移管された場合は公文書管理法が適用される。
この2つの法律には、個人情報の公開制限など、さまざまな公開制限規定がある。
防衛や公安関係も非公開にすることが可能である(国立公文書館の場合は「時の経過を考慮」した結果、大丈夫だと判断されれば公開される)。

よって、「特定秘密が解除」されたからといって、その文書が「すぐに全て公開」にはならないのだ。

だが、なぜか「特定秘密解除」=「即全面公開」と思われているために、「まだ公開できないものは「特定秘密」を延長指定して、各行政機関でそのまま保持する」という発想になるのだ。

本来ならば、30年経過した時点で国立公文書館に移管をし、国立公文書館の審査に基づいて公開・非公開を客観的に決めるべき
また、国家の安全保障に関わる文書については、各行政機関が「意見書」を国立公文書館に提出することができるため、国立公文書館に移管した上で非公開ということも可能なのである(あくまでも意見書を「参酌」するだけなので、絶対に国立公文書館が従わなければならないという規定ではない)。

こういうことを書くと、「なんだ特定秘密が解除されても見れないじゃん」と思われるかもしれない。

そうではない。
国立公文書館に移管をするということは、「いつかは公開される」ことを「保証」することなのだ。

例えば、最近の国会の議論で、公安情報などの情報源の秘匿が必要だから、これに関係する特定秘密は国立公文書館に移管せずに廃棄するという答弁を、政府関係者がしていたはず。
本来、こういった文書もきちんと国立公文書館に移管されなければ、その情報源からの情報の妥当性を検証することはできない。
でも、一方で、その情報源が存命だった場合、その文書の公開によって本人の生命や名誉が傷つけられる恐れはあり得るだろう。

そういった情報の場合、50年とか100年といった単位で、名前の部分だけは墨塗りする必要はある。
でも、200年後には見せても問題ないかもしれない。
「いつか必ず公開される」というのを保証するのが公文書館というものである。

「そんな後に公開されても意味ないじゃん」と思うかもしれない。
でも「いつか公開される」ことが保証されていれば、官僚達の仕事への緊張感は相当に変わるはずなのだ。


なぜこういった「勘違い」は生まれるのだろうか。
維新や自民の政治家達は、本当に「勘違いをしているだけ」の可能性が高そうだ。
だが、この法案を作っている官僚達が全く分かっていないとも思えない。

ではなぜこういった修正になるのか。
それは、官僚達が国立公文書館を信用していない(存在自体を認知していないのもあるかも)からではないか。
つまり、彼らは「移管されるとすぐに全面公開される」と警戒しているのだ。

当然、国立公文書館が専門的な知識でもって公開の妥当性を審査するのだから、各行政機関と公開・非公開の判断が変わる可能性はある。
だが、国立公文書館のことを良くわかっていない、もしくは「舐めてる」官僚達にとっては、「信頼できない」国立公文書館に文書を渡すということ自体がナンセンスだという考え方なのだろう。
だから「延長して持ち続ける」という話になるし、その限界を60年にしようという、ズレた話になってしまうのだ。

ただ、いまの国立公文書館は、独立行政法人でありかつ職員の数も40数名しかいない組織である。
よってある意味「舐められて当然」という地位に留まっており、米国政府の秘密を管理する国立公文書館記録管理庁とは規模や権限が桁違いに異なる。

そもそも論としては、先に国立公文書館をはじめとする公文書の管理を監視したり、内容を検証する機関などを整備・強化しないといけないはずなのだ。
なのに、そこが整備されず、公文書管理法から逸脱する特定秘密制度がかぶさってくる。
公文書管理制度から考えると最悪のシナリオが進んでいると言わざるをえない。

もう少し公文書管理制度をきちんと理解した上で議論をしてもらえないだろうかとつくづく思う次第だ。
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