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【連載】法人文書と公文書管理法 第4回 国立大学法人における文書移管問題(後) [2010年公文書管理問題]

【連載】法人文書と公文書管理法
第1回 行政文書と法人文書の管理の違い
第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係
第2回 国立大学法人における文書移管問題(前)
第3回 国立大学法人における文書移管問題(中)

前回の続き。
前編では、公文書管理法施行によって、国立大学法人において、どのように文書管理が変わるのかという点について、主に保存期間満了後の措置を中心としながら説明をしてみた。
中編では、なぜ「国立公文書館等」は各大学に設置されないのかについて述べた。

最後の後編では、「国立公文書館等」になった国立大学法人の公文書館において、文書の移管の際にどのような問題が起きるのかということについて考えてみたい。

第4回 国立大学法人における文書移管問題(後)

まず、公文書管理法における「国立公文書館等」になるということによって、何が変わるのかを簡単に。

前回も軽く触れたが、「国立公文書館等」は、公文書管理法第15条から第27条までの条文を守ることを義務づけられている施行令第2条第1項第2号)。
これまで、独法の公文書館を縛る法律は存在していなかったので、自分たちの館の判断で規則を作ることができた。
しかし、今回の法律によって、この規則が統一化されることになる。

具体的な条文の解説は略するが、大きく変わるのは、不開示規定が明確化する(時の経過を踏まえても公開できない個人情報などを隠す)とか、開示が不十分だという不服があった場合には、公文書管理委員会に訴えることができるといったことなどであろう。
法文の逐条解釈をするのがこの記事の意図ではないので、詳しくは宇賀氏などの解説書を読んでいただければと思う。

今回の記事で考えてみたいのは、「公文書館に移管される際の手続き」のことである。

まず前提として、公文書管理法には次のような条文がある。

(特定歴史公文書等の保存等)
第十五条  国立公文書館等の長(国立公文書館等が行政機関の施設である場合にあってはその属する行政機関の長、国立公文書館等が独立行政法人等の施設である場合にあってはその施設を設置した独立行政法人等をいう。以下同じ。)は、特定歴史公文書等について、第二十五条の規定により廃棄されるに至る場合を除き、永久に保存しなければならない。


つまり、「国立公文書館等」に移管された文書は、すべて「永久」に保存しなければならない。
第25条にそれを廃棄できる条文があるが、内閣総理大臣の許可が必要なこと、また「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」において、この条文は「当該特定歴史公文書等に記載されている情報の内容に基づいて廃棄の判断を行うことは許されず、「劣化が極限まで進展し」歴史資料として重要でなくなったと判断されるという外形的な要素のみがその理由として是認される」(37頁)とされているため、実質的には廃棄は難しいということになっている。

以上が前提。

中央行政機関と国立公文書館の間での「移管」手続きは、公文書管理法第5条第5項で決められた「レコードスケジュール」に基本的には基づいて行われる。
レコードスケジュールの説明については第1回で解説しているので省略。

ここで注目したいのは、国立公文書館の側に「評価選別」(文書を移管するか廃棄するかを決めること)の権利がないということである。
つまり、国立公文書館には、各行政機関が「移管」と決めた文書を拒否する権限が存在しない。

ただ、第9条第4項に「内閣総理大臣は、前項の場合において歴史公文書等の適切な移管を確保するために必要があると認めるときは、国立公文書館に、当該報告若しくは資料の提出を求めさせ、又は実地調査をさせることができる」という項目があり、あまりにも不要な文書ばかりを移管させようとした場合には、内閣総理大臣(実質的には内閣府公文書管理課)を通して、国立公文書館が「調査」をできる余地は残している。
「調査」という言葉が微妙なわけだが、少なくとも「それは移管しなくてもよいのでは?」という話し合いには喜んで応じるだろう。

また、廃棄についても、第8条第2項で内閣総理大臣の許可が必要ということになっているので、これも上記の第9条第4項を使えば、不適切な廃棄を止めることに国立公文書館が関与できる余地を残している。
どちらにしろ、内閣府が動かないとどうしようもないという現実はあるが。

問題は、これが法人文書になった場合。
第1回で述べたように、法人文書関係の条文からは、内閣総理大臣による介入に関する条文がすべて落ちている。
よって、上記のような、「内閣総理大臣→国立公文書館」という歯止めになる条文がすべて欠けているということになる。

一方、レコードスケジュールについては、第1回でも説明したが、独法でも導入は不可避ということになった(私は法的不備だと思うけど・・・)。

よって、法人文書が「国立公文書館等」に文書を移管される場合、各部局が規則に則って機械的に付けた「レコードスケジュール」に基づいて行われることになる。
つまり、独法の公文書館の側は、文書の評価選別が一切できないということになるのだ。
しかも、文書の廃棄に対する歯止めもないので、重要な文書が各部局の判断で勝手に処分される可能性も十分にありうるということになる。

こうなると、各部局が重要だと思う文書(=歴史的に重要な文書とは限らない)だけが移管され、歴史的に重要だけど各部局にとって不要と見なされたものは廃棄されてしまう。
つまり、公文書館に歴史的に重要な文書がきちんと回ってこない可能性が十分にあり得ることになる。

ここで、第1回の冒頭の某文書館の方の「評価選別機能を失う」という発言が関わってくる。
公文書管理法を上記のような読み方をすれば、これまで国立大学法人の公文書館で、自分たちの館の側で評価選別を行ってきた公文書館は、その権限を失うということになる。
つまり、実質的に、公文書管理法施行によって、現在よりも状況が「後退」する可能性が出てきたということになる。

また、前提として説明したように、「国立公文書館等」は、移管された文書を廃棄することが事実上できないことになっている。
よって、とりあえず移管を受け入れてから、選別して廃棄するということもできないということになる。

さて、なぜ上記のようなことが起きてしまったのか。
個人的に思うのは、「たぶんそういうことが起きると誰も気づいてなかった」というのが本当のところなのではと思う。

今回の公文書管理法が地方自治体に適用されなかった理由の一つとして、公文書管理法よりも先進的な取り組みを行っている自治体もあるからというものがある(宇賀氏、187頁、参考文献は下段に。以下同じ)。
だから、本来、この法律は、これまで先進的なことをやっていた公文書館の邪魔をすることは意識されていなかったはずである。

これまで、国立公文書館には、「内閣府と各行政機関が移管で同意した文書」(国立公文書館はあくまでも意見を言えるだけ)のみしか移管されてこなかった。
その状況を少しでも前進させようとして、移管に関係する条文は作られた。

そして、公文書管理法を作るときに、法人文書はほとんど注目されず、条文の検討をされることがなかった。
そのため、「国立公文書館等」と公文書館をまとめた概念がそのまま通ってしまった。
今から考えてみると、「国立公文書館等」と「独立行政法人公文書館等」とでも概念をきちんとわけておけば良かったのだ。

ただ、いまさら言ってもしょうがない。
では、現在の条文でも、国立大学法人の公文書館側に評価選別の権限を残すことが可能なのか。
私は可能だと考えている。

ここから先は、法学をちょっとかじった程度の人の「たわごと」と考えてくださって構わない。
ただそれでも書くのは、評価選別を公文書館側に持たせておきたいと考えている人に、何らかのヒントを提供できる可能性がありうるのではないかという考えからである。
なので、はじめから無理そうな解釈も含めて、自分の思考していった流れのままに書き残していきます。
おそらく、私よりも専門的な方が色々と考えておられるのだろうから、釈迦に説法のようなことかもしれないが。

まず、移管を決めている第11条第4項をもう一度確認してみる。

独立行政法人等は、保存期間が満了した法人文書ファイル等について、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等に移管し、それ以外のものにあっては廃棄しなければならない。

これによれば、移管廃棄を決めるのは「独立行政法人等」である。
国立大学法人においては、移管元も移管先の公文書館も「独立行政法人等」の同じ機関である。
つまり、移管する際の選別評価の権限を、規則で「公文書館に属する」と定めればよい。

これに対しては、移管を「国立公文書館」にも行えるという解釈も成り立つ以上、独法の公文書館を「主語」とするのは無理という意見もある。
ただ、私はそこまで厳密に読み込む条文なのかなというのが率直な感想。
この部分については、内閣府の逐条解説本でも明確に説明されておらず、おそらく条文解釈がきちんと定まっていない部分だと思う。そこは自分たちに都合の良い「読み」をしてしまっても大丈夫だと個人的には思っている。

なぜそんなことを言うのかというと、第1回やその補遺で述べたように、公文書管理法に基づく内閣総理大臣の独法への介入は事実上行えない。
また、行う場合は、事実上、法に「違反する」(そのおそれ)の場合にしか、主管大臣への勧告はできない。
つまり、言ってはなんだが「内閣府がおかしいと指摘しなければOK」というものなのである。
しかも、評価選別を「独法の公文書館で行う」ことが、果たしてこの法律に反しているとまで言えるだろうか。私はそこまで言えないと思う。

ただし、上記の考え方については、以前、早川和宏氏に「独立行政法人等において規則制定権を有しているのは、一般に長ですので、その意味では国の場合と同じ」と言われているので、「独立行政法人等」を「公文書館を主語」にして考えるのはさすがに無理かなとは思う。

また、もう一つの案としては、第25条を、劣化した文書以外も「廃棄」できるという「読み」を行うということである。
この第25条は、宇賀氏の解釈によれば「移管された行政文書ファイル等の中に歴史公文書等でないものが混在していることが判明した場合」(165頁)も想定されているとされる(ただし、上記のガイドラインや内閣府の解釈ではそれは入っていない(101頁))。
そのため、一度受け入れてから「廃棄」するということは可能とも取れる。

ただ、この条文における「廃棄」は、内閣総理大臣との協議(公文書管理委員会への諮問)が要件となっているので、例外的に廃棄する場合を念頭に置いていると考えることが自然ではある。
だが、力業ではあるが、評価選別を行って、廃棄リストを内閣府と公文書管理委員会に持って行くというのも、あり得ない選択肢ではないと思う。
もちろん繁雑な手続きがあって面倒なのは確かだが、5年後の公文書管理法改正のためにも一石投じるのはありだと思う。

ただ、中編で述べたように、「国立大学法人も役所」であるということを考えると、さすがに上記の二つは無理と考えるのが自然だと思われるので、別案も考えてみる。

まず、法人文書におけるレコードスケジュールの「作り方」についての条文が、公文書管理法には存在していない。
行政機関では、第5条第5項で「行政機関の長」がレコードスケジュールを作る義務を負っているが、独法では作成主体が存在していない。
また、第11条第2項では、「保存する期間を満了したときの措置」を管理簿に記載することは独立行政法人等の義務となっているが、その措置をどのように決めるかについては法的な縛りがない。
つまり、移管するか廃棄するかを決める「レコードスケジュール」に、独法の公文書館が何らかの介入を行うことは、「規則」さえあれば問題なくできる。例えば、文書作成時から公文書館が指導したとしても違法にはならない。

なお、第5条第5項には「できる限り早い時期」にレコードスケジュールを決めなければならないという規定があるが、法人文書には存在しない。
よって、移管廃棄を決める「直前」にレコードスケジュールを定める、ないしはレコードスケジュールを「変える」ことは可能である。
さらに、集中管理の推進という第6条第2項の条文に従い、「中間書庫」を設置して、そこに保存期間満了前の文書を運び込むことは問題なくできる。

つまり、「移管後」に廃棄ができないのならば、「移管前」に選別評価を行うことが可能な仕組みを、「規則」において作り上げてしまえばよいのである。
例えば、「集中管理のため、保存期間満了前に「中間書庫」に「移送」」と定め、その「中間書庫の管理」を公文書館が行うことにしておけばよい。
そして、例えばレコードスケジュールで「廃棄」となっているが、公文書館側がこれは必要として「移管」にしたい場合は、中間書庫において「移管」に変えられる仕組みを作っておけば良い。

また、「中間書庫」の設置が難しいのであれば、保存期間満了時の文書を、さしあたり公文書館に「移送」し、評価選別をした上で、最終的に残ったものを「移管」するという解釈もありうると思う。

こういった、法が定めていない「空白」の部分を、自分たちの解釈で「埋めて」しまうことは、当然違法ではない。

そして最も重要なのは、こういった手続きをきちんと「規則」に書き込み、「透明性」を確保することである。

公文書管理法の第1条には「説明責任」ということが明確に描かれている。
内部の部局間の移管となる国立大学法人内の手続きは、外部から見て透明性がなければならない。
それさえ確保できていれば、上記の解釈は十分に役所の世界でも通用すると思う。

法律というのは、なにも立法時の解釈が絶対なわけではない。
もし絶対ならば、世の法学者の9割は失業してるはずだ。

法律は作られたときに、すべての穴を埋めているわけではないのだ。
その穴はあとから解釈で埋めていくものである。
そして不備であれば改正するということもありうる。

少なくとも、公文書管理法における法人文書に関する条文は、色々と不備があらわになりつつある。
いまのところ、抜け道のようなやり方しか考えられないが、5年後の見直しで「改正」に結びつける努力も必要となるだろう。

なお、今回のこの「評価選別」問題は、現在それが行えている大学がどのような「規則」を作ってくるのかで、のちのちに非常に大きな影響を与えるだろう。
ここで、評価選別権を失うことになれば、今後「国立公文書館等」をつくろうとする国立大学法人の意欲を削ぐ可能性は十分にあり得る。
つまり、評価選別をすべて各部局に握られた場合、新しく「国立公文書館等」を作ったとしても、現在の国立公文書館がよく言われるように「決裁文書の山」しか結局は残らなくなるかもしれない。

理想的なモデルケースができれば、あとから続くところも非常にやりやすくなるだろう。
だからこそ、踏ん張ってほしい。心から願っている。

以上で、国立大学法人における移管問題については終了。
次回は、研究文書の問題について考えます。更新は年明けになるかと思います。→第5回

本年も、長い長い文章におつきあい下さいまして、ありがとうございました。

参考文献


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【連載】法人文書と公文書管理法 第3回 国立大学法人における文書移管問題(中) [2010年公文書管理問題]

【連載】法人文書と公文書管理法
第1回 行政文書と法人文書の管理の違い
第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係
第2回 国立大学法人における文書移管問題(前)

前回の続き。
前編では、公文書管理法施行によって、国立大学法人において、どのように文書管理が変わるのかという点について、主に保存期間満了後の措置を中心としながら説明をしてみた。
その中で、「移管」先となる「国立公文書館等」が存在しないために重要文書の廃棄が起こる可能性について、色々と考察をしてみた。

中編では、なぜ「国立公文書館等」は各大学に設置されないのかという問題と、について考えたい。

第3回 国立大学法人における文書移管問題(中)

前編において、国立大学法人から国立公文書館への文書移管はおそらく不可能であるという話をした。
では、「各大学が公文書館を作れば良いではないか」という話に当然なる。

現在、「公文書館」らしきものを持っている国立大学法人は合計9校ある。
北海道東北東京名古屋金沢京都神戸広島九州(+大阪は準備中)
しかし、今回この中で、「国立公文書館等」に手を挙げたのは、東北、名古屋、京都、神戸、広島、九州の6校に過ぎない。

確かに、毎年継続的に法人文書の移管を行えていたのは、京都や広島などほんのわずかでしかない。
だが、曲がりなりに大学の法人文書を移管していた所でも、公文書管理法の「国立公文書館等」の指定を受けないところが出てきた。

前回説明したように、「国立公文書館等」に指定をされなければ、法人文書の移管を受けることができない。
つまり、この指定を受けなかった北大、東大、金沢大の公文書館は、今後、法人文書の新たな移管ができないことになる。

なぜ、このようなことがおきたのか。
これは、「国立公文書館等になるためのガイドラインがきつすぎる」という理由に他ならない。

この「ガイドライン」とは、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」のことである。
これは、国立公文書館等が利用規則を作成するためのガイドラインである。
いわゆる「特定歴史公文書等」(国立公文書館等で保管されている歴史文書)の扱い方に関する規則の「モデル」となる。

このガイドラインは、内容的にはかなり充実した内容になっている。
以前、4回にわたって内容を解説したことがあるので、そちらを参考にしてほしいのだが、公文書館として備える必要のある物理的な条件から文書管理のやり方まで、かなり細かい所まで書き込まれている。
そして、前回(第5回)の公文書管理委員会において出された、国立公文書館外交史料館宮内庁宮内公文書館の規則は、このガイドラインに沿った形で作られた。

ただし、このガイドラインは、公文書管理委員会の委員の石原一則氏(神奈川県立公文書館)が、「もしこれを私の職場で同じようにやれと言われたときに、どのような反応が出るか少し冷や汗を流しながら読んでおりました」第3回議事録、11頁)と述べたように、相当にハードルの高いものであった。

私自身は、国立レベルの3館については、この基準で行うべきだと思って、基本的にはこのガイドラインに賛成していた。
そして、国立大学法人においては、公文書管理委員会での利用規則の承認が必要ないのだから、それを「参考」にして、できる範囲で整備すれば良いのではと思っていた。
なので、既存の国立大学法人の公文書館では、ハード面で同様の整備は無理でも、利用者への対応の部分などは十分対応可能だと思っていた。

しかし、予想以上に国立大学法人は「役所」であった。

「国立公文書館等」になるためには、前編で説明したように、「前号に掲げる施設[引用者注、国立公文書館]に類する機能を有するものとして政令で定めるもの」(第2条第3項第2号)でなければならない。
さらに、その政令(施行令)によれば、「独立行政法人等の施設であって、法第十五条から第二十七条までの規定による特定歴史公文書等の適切な管理を行うために必要な設備及び体制が整備されていることにより法第二条第三項第一号に掲げる施設に類する機能を有するものとして内閣総理大臣が指定したもの」(第2条第1項第2号)と定められた。

よって、国立公文書館に「類する機能」を持っていることが条件となり、「内閣総理大臣が指定」(つまり事実上、内閣府の許可)が必要だということになる。

つまり、この「法令」の文章を読むと、「国立公文書館」が従わなければならなかった「ガイドライン」に、他の国立公文書館「等」も事実上従わざるをえないと見えるのである。

これによって、いくつかの国立大学法人の公文書館はひるんだ。
だから、「こんなに厳しい規則は自分の所では無理」と判断したところは脱落していくことになった。

私にとっても、この反応は予想外のことであったし、自分の考え方が甘かったことに気づかされた。

また、私の所属大学のある職員の方から、公文書管理法への対応を聞かれたときにも、やはりこのガイドラインの「読み方」について聞かれた。
「このガイドラインに完全に従わないと「国立公文書館等」として認められないのか」と。

はっきり言って、いま、公文書館の無い大学に、いきなりハード面も含めた充実した公文書館を作れというのは、財政の厳しい状況の下では厳しい。
私の大学も、実際にそういう状況である。

私は、この「ガイドライン」がこんなにも国立大学法人にとって重荷になるとは、予想だにしていなかった。
これは、あくまでも国立3館をどうにかするためのものであり、独法は「参考」にして考えればよいのであって、必ずしもそれに完全に従う必要はないと思っていた。

だが、法令での「国立公文書館に類する機能」という規定、そして「内閣府の許可」という二つが、「役所」である国立大学法人には重くのしかかった。
また、内閣府も表だっては「ガイドラインに従わなくても良い」とは当然言えない。
よって、公文書管理法への対応のために公文書館を作った神戸大学以外は、新規の公文書館は作られなかったのである。それどころか、既存館すら脱落する状況になってしまった。

私としては、もちろん、本来ならば、きちんとした公文書館が各国立大学法人に作られてほしいと思う。
ただ、今のままでは、「ガイドラインがきついから公文書館ができない→重要文書の廃棄」という、本末転倒な状況になってしまう。

この状況の突破策をどうすればよいのだろうか。

思いつくこととしては、「国立公文書館等」への指定を許可するのは内閣府なのだから、ハード面(施設)にある程度不備があっても、「体制」が整備されていれば柔軟に指定を出すというのがあるだろう。
さきほど引用した施行令によれば、「法第十五条から第二十七条」に適合した施設と体制が整備されていれば良いのだから、「施設」は「集中管理倉庫」があれば良い、「体制」は公文書管理部局が総務課とは別に組織されていて、目録作成と閲覧業務を最低限行える状況になっていれば良いというぐらいにハードルを下げるというのは、法令の読み方としてギリギリありではないかと思う。

なお、この国立大学法人が直面している問題は、全史料協大会でも話題になっていた、自治体の公文書管理問題と完全にリンクしている。
つまり、「館」を財政的に作ることができない自治体において、重要な歴史的公文書を残すためにはどうすれば良いのかということである。

そのためには、ハードはさしあたり置いといて、まずは「機能(体制)」をどうにかする。
全史料協の早川・冨永報告での公文書館機能の「ミニマムモデル」を最低限整備しようということである。→参考記事
そして、内閣府はその最低限の「機能」を整備した大学には、「国立公文書館等」の指定をしてほしいと思う。

おそらく、ここまでハードルを下げないと、国立大学法人において歴史的に重要な公文書は残らない。

もちろん、理想は「館」として整備されること。
だが、第一歩として、最低限の公文書館機能を持つ部局を設置して体制を作り、そこから場合によっては「館」も整備するという二段ロケットのようにしなければ、おそらく何も変わらない。
それが国立大学法人の現実だろう。

内閣府は1月以降、独法に対する説明会を開催すると聞く。
何とか、「現実的な対応」をしてくれることを願ってやまない。

長くなったので残りは後編にて。
「国立公文書館等」が設置される大学において、この法律はどのような影響を与えるのかについて書く予定です。

※長めの追記

なお、上記のような文章の書き方をしているが、「館」は必要だという立場に私は立つ。
なぜならば、大学の歴史を守るためには、公文書だけを保存すればよいという話ではないからだ。

例えば、学長や事務のトップなどの私有文書や、学生生活を記録した写真や学生団体の資料なども、本来は集めないと歴史は守ることはできない。
つまり、「公文書館」だけではだめで、「アーカイブズ」と呼べるような記憶装置が必要だからである(公文書館もアーカイブズの一種だが、定義が狭い)。
だから、本来ならば、二段ロケットではなく、「公文書館」からさらに「アーカイブズ」へと広げていく三段ロケットが必要なのかもしれない。

ちなみに、私は、自分の所属している一橋大学の某研究会で、一橋が「国立公文書館等」をすぐに作れないのであれば、次のようなことを考えたらどうかという話をした。

①アーカイブズを作るための前提としての悉皆調査→各事務室にどれだけの文書が存在しているのかを把握すること。ファイル管理簿上の書類がきちんと残っているかの点検作業。

徹底的な研修の実施→重要文書の作成、保存の必要性を訴える=アーカイブズへの理解者を増やす。教員に対しても行うべき(学内行政に関係しているのであれば)。

③優先的に「集中管理システム」の導入を図ること。そのための受入部署を用意すること(「倉庫」を作ればよいという話ではない。目録整理、評価選別を行うための人員が必要)。
―各事務室に分散管理されている状況の改善―作成30年(あるいは10年)以上経過した文書を全て集中管理書庫に移すこと。さしあたりは国立の時計台塔など、事務から近く、それなりのセキュリティーが働く所に置く。集中管理書庫は「公文書館」ではないので、アーカイブズを作るまでは「延長」措置でカバーする(歴史公文書のガイドラインにおける「公文書館」になるには、ただ組織をいじれば済むという次元では済まないので)。
=情報管理との関わりでも早急に取り組むべき課題。また遅れれば各部署が重要文書を廃棄する―「歴史的に重要な文書」=「現場にとって重要な文書」とは限らない。5年10年で捨てられる文書の方が重要なこともあり得る。

④大学創立150周年に向けての資料収集のための編集委員会(教員を中心)を設立し、学内外からの大学史資料の収拾を図る。

⑤集中管理書庫をアーカイブズに発展させるための説得工作を150周年編集委員会に担わせる。総務と教員の連携で大学当局を説得する。予算は如水会・一橋大学基金(キャンパス整備基金)にも支援を要請する。

⑥アーカイブズをできれば時計台塔に作る。書庫は小平でも構わないが、大学本部や図書館の近くにあること、OBOGなども立ち寄りやすい場所にあることは、施設の理解度を増すためにも必須


悉皆調査は、公文書管理法を制定する過程の中で、上川陽子公文書管理担当大臣(当時)が行った各省庁調査をイメージしたもの。
国立大学法人は、各学部ごとの独立性が高いので(キャンパスが離れていれば特に)、学部事務室で文書管理が完結しているケースが高いと思われる。
よって、まずは実態を把握することが必要。

さらに、集中管理システムの導入は、統一的な文書管理を行うためにも必要。
また、集中管理の推進は、公文書管理法第6条第2項に「努めなければならない」と書いているので、法的な裏付けもある。

おそらくこの二つを推進するだけでも、かなりの作業量を伴うだろう。
だが、そもそも歴史的に重要な文書を残すか否かという以前に、適切な公文書管理を推進するためにもこの二つは絶対に必要なことだと思う。

これが解決策になるかはわからない。現実的に厳しいのかもしれない。
でも、この二つをするだけでも、重要文書の廃棄はかなりの部分、食い止めることができるのではないかと思う。
もちろん、集中管理を担当する部局に、それに気づいている人がいるかにもよるけれども・・・

後編
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【連載】法人文書と公文書管理法 第2回 国立大学法人における文書移管問題(前) [2010年公文書管理問題]

【連載】法人文書と公文書管理法
第1回 行政文書と法人文書の管理の違い
第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係

今回は、法人文書と公文書管理法の第2回。
国立大学法人において、公文書管理法はどのように適用され、どのような問題がおきうるのかについて考えてみます。
しつこいようですが、あくまでも私の「私見」です。その点は読む際に頭に置いてください。

第2回 国立大学法人における文書移管問題(前)

前回では、法人文書の条文の読み方について解説を行った。
これを国立大学法人にあてはめて見た場合、どうなるかというのが今回の話である。
なお、国立大学法人と区切っているが、これはたまたま私がその近くにいるので例として挙げているだけであって、実際には他の独立行政法人(独法)にもあてはまることになるだろう。

まず、前提から。
公文書管理法は、中央の行政機関だけでなく、独立行政法人にも適用される。
具体的には、情報公開法の適用を受けている機関と同じことになると思われるので、次のページの下部に記載されている機関が全て対象となるだろう。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/gaiyo.html

次に、これまでの情報公開法下での文書管理と、公文書管理法下での違いから考えてみよう。
前回と同じ順番で簡単にまとめてみる(前回と合わせて読んでください)。
規定が細かくなったぐらいで済むものには、特に細かい解説はしていませんので、条文を見比べてください。

・作成(第4条)
○行政機関情報公開法施行令(*)第16条第1項第2号の規定よりも要件がきつくなり、意思決定過程までも文書を作成しなければならなくなった。

(*)独法情報公開法第23号第2項に基づき、行政機関情報公開法施行令第16条を参酌する。施行令第16条とは、情報公開法上における文書管理を定めた部分。
以後、この第16条第1項第○号はたくさん出てくるので「行施行令16-1-○」で省略。

・整理(第5条)
文書保存期間の延長は、これまでは内部の処理だけで可能であったが(行施行令16-1-7)、内閣総理大臣への「報告義務」を課されることになった。
○レコードスケジュールについては、第1回を参照。

・保存(第6条)
○これも以前(行施行令16-1-3)と比べものにならないほど規定が細かくなった。
「集中管理の推進」が第2項に入っているのが注目。これは今までなかった規定。

・法人文書ファイル管理簿(第11条第2項、第3項)
○法人文書ファイル管理簿については以前から作成義務があった(行施行令16-1-10)が、内容がさらに細かくなった。
○インターネット上への公表は事実上行われているのを追認して義務化。

・移管・廃棄(第11条第4項、第5項)
○移管については長いので後述(※)。
○廃棄については以前(行施行令16-1-8)と同様に自分たちの機関の判断のみで可能。
なお、行施行令でも、移管するもの以外は「廃棄すること」とあるので、保存年限が来たら延長されたものを除き、基本的には廃棄されていることに注意。
○意見書の付与については新設。

・管理状況報告(第12条)
○これまでは情報公開法に関する報告義務はあった(独法情報公開法第25条)。公文書管理については新設。

・管理規則(第13条)
○これまでは定めることは義務だった(独法情報公開法第23条第2項)。内容が公文書管理法に基づいたものに変わることになる。

以上だが、基本的には、これまで情報公開法施行令で決まっていた条項が、細かく法律で規定されることになったと考えてよいと思われる。

ただし、根本的に大きく変わったものがある。
それは、法人文書の保存期間満了時の処置の仕方である。

それでは、後述することにしておいた「移管」の話を切り口に詳述してみる。

※「移管」について
○移管については、以前は2つの移管先があった(行施行令16-1-8)。

□国立公文書館
□行施行令第2条第1項(同内容は独法情報公開法施行令第1条)に規定された機関


前者は、国立公文書館が、国立公文書館法の規定によって「国の機関」の文書しか受入できなかったため、独法の文書は移管できなかった。
後者は、独法情報公開法施行令第1条によれば、次の機関。

(法第二条第二項第二号の政令で定める施設)
第一条  独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (以下「法」という。)第二条第二項第二号 の政令で定める施設は、次に掲げる施設とする。
一  独立行政法人国立公文書館が設置する公文書館
二  独立行政法人国立文化財機構が設置する博物館
三  独立行政法人国立科学博物館が設置する博物館
四  独立行政法人国立美術館が設置する美術館
五  前各号に掲げるもののほか、博物館、美術館、図書館その他これらに類する施設であって、保有する歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料について次条の規定による適切な管理を行うものとして総務大臣が指定したもの


この第5号の規定によって、例えば、日本銀行アーカイブズ、国立大学法人京都大学や広島大学の文書館のような、独法が独自に作った公文書館に法人文書の移管を行うことができた。

今回の公文書管理法では、この移管先が「国立公文書館等」と規定された(第11条第4項)。
この「国立公文書館等」の定義を見てみると

第2条
3  この法律において「国立公文書館等」とは、次に掲げる施設をいう。
一  独立行政法人国立公文書館(以下「国立公文書館」という。)の設置する公文書館
二  行政機関の施設及び独立行政法人等の施設であって、前号に掲げる施設に類する機能を有するものとして政令で定めるもの


これによって、国立公文書館への移管が可能となった(国立公文書館法も改正)。
また、独法の公文書館はこの第2号の規定が適用されることになった。

しかし、一方、法人文書の定義の所には次のような規定がある。

第2条
5  この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一、二、四略
三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)


お気づきになるだろうか。
独法情報公開法施行令第1条に規定されていた「施設」が、公文書管理法では2つに分割され、法人文書を受け入れる公文書館は「国立公文書館等」に、それ以外の施設は「博物館その他の施設」となることになったのである。

これによって何が起きるか。
これまで、法人文書の移管は、博物館や美術館、図書館でも、総務大臣の指定を受けさえすれば可能だったが、公文書管理法では「国立公文書館等」と認定された施設以外には移管が不可能になったということである。

これは、もちろん、公文書をきちんとした専門施設で保管し公開しようという意欲を示した条項であり、本来ならば歓迎すべき条項である。
だが、色々と実態を見てみると、この分離したことがマイナスに働く可能性もでてきた。これについては次回にて。

さて、この結果、法人文書の保存期間満了時の措置は、これまでは

□移管→できない。ただし独法が独自に持っていた施設には可能。
□延長→内部の手続きで可能
□廃棄→内部の手続きで可能


であったのが

□移管→「国立公文書館等」へ
□延長→内閣総理大臣への報告義務
□廃棄→内部の手続きで可能


となった。

「移管」が、独法のどの機関であってもできるようになったのは大きな前進だが、「国立公文書館等」が「無い」場合には移管ができないということでもある。

さて、「無い」ってどうして?と思う方もおられるだろう。
国立公文書館はあるのだから、「無い」というのはおかしいだろうと。
だが、もし国立公文書館が「移管を受けたくない」と言い出したらどうなるだろうか。

そして、国立大学法人の法人文書では、実際にそのような事態になっている。
もちろん、国立公文書館は公式的に「受け入れない」とは言ってない。
国立公文書館に拒否権は無いからだ。

だが、さまざまな集まりで、国立公文書館の館長や理事が「国立大学法人は独自によろしく」といったような発言をくりかえしている。
私も、ある講演会で、某国立大学法人の関係者が「国立公文書館は国立大学法人の文書を受け入れるのか」といった質問をしたときに、「頑張ってください」という答え方をされていたのを聞いたことがある。
なので、おそらく国立公文書館は国立大学法人の文書を「受け入れない」。

一方、国立公文書館がそう言いたい理由もわからなくはない。
歴史学においては「資料の現地保存の法則」というのがある。
歴史資料はその「地域の歴史」なのだから、基本的にはその地域で保存されるべきものであり、中央が収奪してくるのは問題だという考え方である。
これは、植民地から資料を奪ってきた反省の中から生まれてきた概念でもある。

だから、例えば東京にある大学ならまだしも、各地域にある国立大学法人の文書は、基本的に地元で何とかするべきだというのはわからない発想ではないのだ。
もちろん、国立公文書館の本音は「大量に持ってこられてもスペースも限られているから困る」といったところかもしれないが。

よって、独自に公文書館を持たない国立大学法人では、「移管先がない」という事態がここで起きうることになった。
そうなると、進むべき道は「延長」か「廃棄」かということになる。

ただ、これまで、「延長」は内部の論理で簡単にできた。
だが、これからは内閣総理大臣への「報告」が義務となる。
つまり「面倒くさく」なるのだ。

そこで、第1回の冒頭で紹介した某大学文書館員の方の発言の前半部の話になる。
つまり、移管先の文書館を独自に持たない国立大学法人では、情報公開法施行直前に起こったような大量廃棄がまた起きるのではないかと。

しかし、情報公開法施行直前と異なるのは、国立大学法人では、情報公開法ができてからずっと、大量の文書が「延長」もされずに「廃棄」されてきたということである。

上記の「移管・廃棄」の項で触れたが、移管も延長もされなかった文書は「廃棄」されることになっている。
別に、公文書管理法ができたから「廃棄」が起こるわけではない。

身内の恥をさらすのでやや躊躇はあるのだが、表4は私の所属する一橋大学の重要な政策決定機関における「議事録」と「附属資料」の残存状況を調査した記録である。
特に下部に記載の各学部教授会の資料の残り方に注目してほしい。

おそらく教授会の議事録は、ほとんどの学部で情報公開法施行時までは持っていたのではないかと思われる。
だが、情報公開法によって、文書の「永年保存」規定が無くなった(最長30年保存)ことで、こういった議事録なども「廃棄」の対象になっていった。
たまたま、内部で捨てたらまずいと気づいた人がいた場合に、捨てられずに済んだものもあったようだが、附属資料については、今でも年限が来たら粛々と捨てている学部も多い。

つまり、すでに、重要な文書の「廃棄」は行われてきた。
国立大学法人では、国立だった時に行政機関情報公開法の適用を受けている。
だから、2000年にすでに1回大量廃棄は起きており、その後も、独自の文書館を持たない大学は、重要な資料を捨て続けているのが現状だろう。

ただ、これまでは心ある人が何とか「延長」という措置を取って、内部で文書を抱えることで保存してきた。
しかし、「延長」の手続きが面倒になることで、これまで何とか残っていたものまでもが「廃棄」にまわる可能性は十分に考えられる
その意味では、公文書管理法施行後に大量廃棄が起きる可能性はありうるということになる。

いま、かろうじて延長で残っている文書は、おそらく「重要な記録」であることは疑いない。
これらをどう守っていくことができるのか。残された時間は必ずしも長いわけではない。

自分の大学に公文書館のない国立大学法人に所属している方は、一度事務室に行って「公文書管理法への対応はどうなっているのか」尋ねてみると良いと思う。
少なくとも重要文書だけでも「延長」措置が取られるようにしなければ、その大学の歴史を遡ることはできなくなるだろう。
もし重要な文書の廃棄が続けば、その大学の在校生や卒業生にとっても大きな損失を抱えることになる。

すでに相当に長くなったので、中編に続く。
中編では、ではなぜ「国立公文書館等」は各大学に設置されないのかという問題について考えたい。
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【連載】法人文書と公文書管理法 第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係 [2010年公文書管理問題]

前回の追記。
1点、書いていなかった部分があったので、そこを補足しておきます。

公文書管理法における内閣総理大臣の独立行政法人への介入について。

前回書いたように、それぞれの条項の業務において、内閣総理大臣は独法に介入できない。
ただし、何もできないということではない。

公文書管理法第31条には次のように書かれている。

(内閣総理大臣の勧告)
第三十一条  内閣総理大臣は、この法律を実施するため特に必要があると認める場合には、行政機関の長に対し、公文書等の管理について改善すべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。


これは、公文書管理法に則った管理が行われていないときに、内閣総理大臣が改善勧告をできるという条文である。
ただし、これも「行政機関の長」だけが対象であるので、独法には直接勧告ができない。
しかし、独法を所管する主務大臣(例えば、国立大学法人であれば文部科学省)に対して、勧告を行うことは可能である。

そして、主務大臣は、独立行政法人に対して、法令に違反する(「おそれ」も含む)場合には、改善を求めることができる。

独立行政法人通則法
(違法行為等の是正)
第六十五条 主務大臣は、独立行政法人又はその役員若しくは職員の行為がこの法律、個別法若しくは他の法令に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該独立行政法人に対し、当該行為の是正のため必要な措置を講ずることを求めることができる。
2 独立行政法人は、前項の規定による主務大臣の求めがあったときは、速やかに当該行為の是正その他の必要と認める措置を講ずるとともに、当該措置の内容を主務大臣に報告しなければならない。


つまり、「内閣総理大臣→主務大臣→独法」という流れで、内閣総理大臣は「勧告」は行うことが可能である。

ただ、この勧告は、おそらく相当にひどい法令違反でもないかぎりは使われないものと思われる。
独立行政法人はあくまでも「独立」している機関なので、通常業務に対していちいち内閣総理大臣(実質的には内閣府か内閣官房の公文書管理課)が勧告をしないだろう。
独立行政法人通則法を見ても、「法令違反」(orそのおそれ)でないと是正を求めることはできないとあり、「違法」というハードルは結構高いと思われる。

この点は、次回の記事を読む際の前提となるので、あえて追記として書いておきました。
第2回へ続く。
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【連載】法人文書と公文書管理法 第1回 行政文書と法人文書の管理の違い [2010年公文書管理問題]

公文書管理法の施行を来年の4月に控え、文書管理規則などが整備されつつあります。
その中で、先日の全史料協の大会で、ある国立大学法人の文書館員の方が次のような発言をされました。

 公文書管理法はバラ色の法律ではない。国立大学法人で文書移管を行うことのできる「国立公文書館等」に立候補したのは6校に過ぎない。このままでは、全国の国立大学法人では来年以降大量の文書廃棄がおきるおそれがある。
 また、自分の大学の文書館は、これまで自分たちが主導となって文書の評価選別(廃棄か移管か)を決めていたが、今回の法律によって、評価選別の機能を失ってしまう。これはゆゆしき問題だ。


この話を聞いたときに、これまで何となく違和感があったものが、頭の中で結びつきました。

10月から11月にかけて、私は母校の小さな研究会で、国立大学法人の文書管理が公文書管理法によってどう変わるのかについて講演依頼を受けて、そのことについて話をする機会がありました。
その時に、色々と調べていく中で、「何かおかしい?」と思うようなことにいくつもぶつかってきました。
だが、その違和感をどうも上手くまとめることができませんでした。

その後、法人文書について勉強し直しました。
その過程で、当の文書館員の方や、公文書管理法に詳しい早川和宏大宮法科大学院准教授に疑問をぶつけてみたりしました。

そこで、今回から数回に分けて、法人文書と公文書管理法の問題について、ここできちんとまとめておこうと思います。

なお、私も、まだ完全にわかりきったわけではありません。
よって、この記事は「中間報告」的なものとして考えていただければと思います。

参考文献としては、下記に貼っておきますが、宇賀克也氏や内閣府の解釈本があります。
しかし、これらは法律の一文一文の解釈を行っているだけで、実際に運用されたときに出る問題に対する回答が書いてあるわけではありません。

これから書くことは、あくまでもこれは私の「個人的な解釈」です。早川氏にはアドバイスをいくつかの点で頂きましたが、早川氏と同じ解釈をしているとは限りません。
あくまでも文責は私にあります。
そこを踏まえた上でお読み下さい。

それでは第1回目に入ります。

第1回 行政文書と法人文書の管理の違い

私は、これまで国の行政機関に注目してこの問題に取り組んできたので、法人文書の管理については「行政文書とほとんど同じだ」ぐらいにしか考えていなかった。
実際に「ほとんど同じ」なのだが、微妙に違うところがある。

そこでまず、今回は法律上の違いを改めて整理しておきたい。
公文書管理法本文についてはこちらを参照

表1は、行政機関と独立行政法人等(以下「独法」と略す)における文書管理の違いを一覧にしたものである。
この表を参照しながら、以下の部分を読んでいただきたい。

・文書の定義

これについては両方とも同じ。
「職務上作成・取得」「組織的に用いる」「保有している」という3条件が当てはまるものがこれにあたる。
例外規定もほぼ同じである。

・作成・整理・保存

第11条第1項には、「独立行政法人等は、第四条から第六条までの規定に準じて、法人文書を適正に管理しなければならない。」と書かれており、「準じて」の解釈が問題になる。

宇賀克也氏によると、「準じて」とは「ある事項について定める規定の内容をそれとは異なるが実質的に類する他の事項について、必要な変更を行った上で用いるという意味」(88頁)と指摘している。
独法には「独立性」や「自律性」があるので、それに応じて変更を加えろということである。

なので、独法ごとの特性に合わせて変えても良いが、実質的には、第4条から第6条の規定から外れたようなことはできないということになると思われる(例えば、第4条の「作成」の範囲を狭めて、文書を作らないようにするとか)。

・ファイル管理簿

同じなので略。

・移管・廃棄

この部分については、行政機関と独法では大きく異なってくる。
まず挙げることができるのは、第8条第2項、第4項にあるような「内閣総理大臣の介入」についてである。
行政機関では、文書廃棄の際に内閣総理大臣の同意が必要である。また、内閣総理大臣によって、保存する文書の指定(例えば、阪神淡路大震災の文書は全て保存せよと指定できる)を行うことが可能である。
この規定が独法には存在しない。

この理由は、独法の独立性や自律性を尊重したためである。
つまり、内閣総理大臣による介入はあくまでも行政機関に対してしかできなくて、政府からは独立した機関になった独法には、そこまでの権限はないということである。
よって、「内閣総理大臣の介入」に関わる条項は、以下に述べる「管理状況報告」や「管理規則」に関わる部分でも全て外されている。

この結果、独法が文書を廃棄するときには、他の第三者機関からの歯止めがないということになった。

また、第8条第1項と第11条第4項についても、微妙な表現の違いがある。
それは、独法には「レコードスケジュール」の設定が明記されていないということである。
「レコードスケジュール」を設定するとは、文書を作成した際に、保存期間満了後の措置について定めておくということである。つまり、保存期間が切れた際に「捨てる」か「移管して残す」かということをあらかじめ決めておくということである。
この法文だけを読むと、独法はレコードスケジュールを作らなくて良いということになる。

だが、一方、第11条第2項の「ファイル管理簿に記載しなければならない情報」「保存機関が満了した時の措置」ということが記載されている。
よって、この条文からは、独法にもレコードスケジュールがないとおかしいということになる。

これをどう解釈すればよいのだろうか。
宇賀氏は、この部分については、独法におけるレコードスケジュールの導入が、行政機関の場合のように「直接的ではないものの、示唆されている」(89頁)という言い方をし、実際には独法に導入を求められていると読んでいる。

私は、これは「立法の際のミス」だと思っている。
つまり、おそらく独法にはレコードスケジュールを導入する気が無かった。だが、管理簿の所に、行政機関と同じものを組み込んでしまったので、そこにズレが生じてしまったのではないか。

なぜそう思うのかは2つ理由がある。
一つめは、わざわざ第11条第4項の記述からレコードスケジュールについて落とした理由の説明が付かないからである。レコードスケジュールが必要なら、別に文面を変える必要がなかったはずだ。
二つめは、内閣府の逐条解説本の法人文書に関する項目に、一切レコードスケジュールについての記述が無いことである。宇賀氏の上記の解説の部分に照らし合わせても、そういった記述は一切出てこない。
つまり、独法へのレコードスケジュールの導入は想定されていなかったのではないか。

ただ、こう「推測」しても、内閣府がそれを認めることは絶対にありえないし、ひょっとすると別の意図があるかもしれない。
もともとこの部分は、これまで独法の文書が国立公文書館等に「移管」できなかった点を改善しようとして作られた条文なので、そちらの意図のみが書かれたということなのかもしれない。
なので、法学者でもない私の「推測」レベルの話だ。

しかし、宇賀氏が書かれているとおり、管理簿に満了後の措置を記載しなければならない以上、独法はレコードスケジュールを導入せざるをえないだろうと思う。

****************
追記 12/23

説明がやや不十分だったので補足(私の誤認も若干あったので)。

第8条第1項と第11条第4項の違いは、前者には「第五条第五項の規定による定めに基づき」と入っているので、そこに書かれているレコードスケジュールに則って移管を行わなければならないが、後者は「歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより」移管を行うと書いており、レコードスケジュールに則った移管を想定されていない(政令で定められているのは、国立公文書館等に移管することしか書いていない→施行令第18条)。
よって、上記のような説明がなりたっているということである。

なおこれに基づき、表1のこの部分の記述を修正した。

****************

さらに追記 2/1

そもそも論として、第5条第5項のレコードスケジュールの導入の部分が、第11条から「準じ」なければならないので、やはりレコードスケジュールは作られなければならないということだと思う。
よって、上記の推論は的を外している可能性が高い。
推論部分だけを消しても良いが、変えるのにかなり手間もかかるので、とりあえずはこの追記をもって訂正に代えます。
いずれきちんと直したいと考えています。

****************

さらに、第8条第3項に対応する第11条第5項についても、微妙に違いがある。
これは、国立公文書館等に文書を移管する際に、非公開にしたい情報がある場合には、移管元の機関が「意見書」を提出することができるという部分である。
このことに関連して、条文内に出てくる第16条第1項第1号と第2号の、いわゆる国立公文書館等に移管された文書(特例歴史公文書等)の非公開に関する基準も、この条文には関わってくる。

表2を参照していただきたい。
これは、第16条第1項の第1号(行政機関)と第2号(独法)の違いについてである。

基本的には同じであるが、「国の安全」に関わる部分と「公安」関係の部分には違いがある。

行政機関から移管された文書の場合は、基本的には行政機関の長の判断を優先させる仕組みになっている。

一方、独法の場合は、判断を優先させる規定が無い。
元々、「国の安全」や「公安」情報の中で、移管元の判断を優先させなければならないと判断するようなものを、独法が持っているわけがないということでもあるようだ。
もちろん、「判断を聞かなくてよい」という意味でないのは言うまでもない。

なお、他の項目に対して出された意見書については、基本的には国立公文書館等の判断が優先されると考えて良いだろう。
独法の「国の安全」「公安」情報も、この基準と同レベルでの判断ということになるものと思われる。

なお、ついでに述べておくと、意見書に反して国立公文書館等が開示することにした場合には、移管元からの反論提出権が「国の安全」「公安」については認められている(第18条第3項)。
「個人」「法人」情報については、移管元ではなく、開示される「個人」や「法人」に対して反論提出権が認められている(第18条第2項)。
「事務・事業」関係については、移管元の反論提出権は存在しない。

この「移管・廃棄」の規定は、全ての条文において、行政機関と独法では解釈が異なっているので、注意が必要である。

・管理状況報告

違いは、すでに説明したように、内閣総理大臣の介入の部分が独法には無いということ。
つまり、報告義務はあるけれども、報告に対する「監査」のようなものは無いということになる。

・管理規則

これも同様に、内閣総理大臣の介入が独法にはない。
そのため、管理規則は、行政機関のように公文書管理委員会の諮問を通す必要が無く、独自に決めることができる
ただ、公表しなければならないので、行政機関とはそれほど変わらない規則が作られるものと思う。


以上が、公文書管理法における、行政文書と法人文書の管理の違いである。

付記として、現在制定中の公文書管理法「施行令」(案)での違いがあるのかについて。

表3は施行令(案)における、行政文書と法人文書に関する条文対照表である。
これを見ると、ほとんど違いはないということがわかる。
よって、上記の法解釈の部分に注意を払っておけばとりあえずは良いということになるだろう。

第2回以降は、具体的な事例を挙げながら、個々の場合においてどのように法律を考えれば良いのかについて、考えていきたい。

今のところ取り上げようとしているのは
・法人文書の「移管」にまつわる問題
・独法における「研究関係文書」の取扱の問題
を考えている。
ただ、前者については、かなり根が深い問題なので2回ぐらいに分けるかもしれない。

第1回補遺

第2回

参考文献


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大阪の文書館をめぐる問題 [2010年公文書管理問題]

先日の全史料協で、大阪歴史科学協議会の方から機関誌の『歴史科学』(第202号、2010年10月)を頂いた。
せっかくなのでここで紹介しておきたい。

アーカイブズ関係の記事の目次は以下の通り。

<シンポジウム 地域資料の保存と活用を考える 第3回「大阪の文書館をめぐる現状と地域資料保存・活用の問題」>
 ①地域資料シンポ実行委員会 大阪における文書館の現状と地域資料保存・活用の課題をめぐって
 ②小松芳郎(松本市文書館)  自治体文書館の責務―公文書と地域資料を視野に―
 ③高木秀彰(神奈川県寒川文書館)  地方公文書館と行政改革
 ④谷合佳代子(大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)) 働く人々の歴史を未来に伝えるエル・ライブラリー ―「橋本改革」がもたらした地域資料保存の危機と打開―
 ⑤室山京子  地域資料シンポ参加記・記録
<科学運動通信>
 ⑥佐賀朝   大阪府市公文書館問題の経過と課題


この号は、2009年9月に行われたシンポジウムの記録である。⑥はその後の状況を解説したものであり、シンポジウムの報告を補完している。
共通の問題意識としては、「事業仕分け」にさらされる文書館(図書館)の意義をどのように市民にアピールしていくのかという所にあるように思う。

自治体財政が苦しくなる中で、「構想日本」によるムダな予算の削減のための「事業仕分け」が各地で行われるようになった。国でもそれが採用されたのは周知の事実である。
そして、大阪府では、橋下知事の就任以降、急速に「民間活力」の名の下に文化関係予算が削られていった。
本来は文化施設とは異なるはずの公文書館も、その対象となり、予算をカットされたり人員を削減されたりしている。

また、大阪市でも事業仕分けが行われ、公文書館の正職員が5人からゼロになった。
公文書館は、そもそも「民主主義のインフラ」であり、行政の説明責任を果たすための施設である。
そのため、利用数が少ないから意味がないといったような施設ではないのだが、そのような議論がまかり通ってしまっている。

大阪府公文書館や大阪市公文書館は、1980年代に開館された公文書館であり、公文書館の中では早くに設置された館である。
しかし、大阪府、大阪市では、公文書館の職員が事業仕分けの論理に飲み込まれ、自分たちの存在意義について説明できず、むしろコスト削減に協力していった。
その意味では、職員の質も相当に厳しい状況であったことが見て取れる。
詳しくは①⑥や、この問題に関する情報を集積したwikiを見ていただければと思うが、内部の正職員に戦う人がほとんどいないときの惨状がここには現れている。

また、③はその事業仕分けを受けた寒川文書館の報告であるが、ここでもやはり事業仕分けの「コストカット」の論理に、文書館が切り捨てられていることが示されている。

これらを見ていると、公文書管理法は地方公文書館には決して追い風にはなっていないということに気づく。
ただ、逆風が吹き荒れたときに、それを「押しとどめる」論理としては機能しているようには思うが。
そして、追い風になっていない理由は、ひとえに「追い風になるための市民からの支持が無い」ということに尽きると思う。

私が、一連の公文書管理問題に関わる中で思ったことの一つに、「情報公開に積極的な方すらも、公文書館とはどのような施設なのかわかっていないことが多い」ということがある。
つまり、これまで公文書館は、自分たちの存在意義について、広報することがまともにできていなかったのではないか。
また、行っていたとしても、「古文書講座」を館で開くだけで、むしろ「文化施設」としてしか認識されない方向に「広報」していたのではないか。

よって、これからは、どのように自分たちの存在意義をわかってもらうかの「広報戦略」が必要になる。
しかし、一方で、「広報を積極的に行う」ということは、「広報をしてどれだけ人が来たのか」ということとセットに評価されることがあるということだ。
なので、広報のやり方に工夫が必要だし、また公文書館の意義は来館者数の問題ではないということとわかってもらう必要があるだろう。

私が個人的に思うことは、公文書館は、広報というよりは「教育」に力を入れた方が良いのではないかということだ。
つまり、学校で公文書館を使ってもらうための授業を提供するということが、一番必要なことではないのだろうか。
例えば、総合学習の時間で使ってもらえるように、授業案をパッケージで提供するとかはどうなんだろう。
歴史教育者協議会(歴教協)に協力をあおぎ、古い公文書を使った授業案を提示してもらい、積極的に各小中学校に売り込みに行くのはどうなんだろうか。
また、社会科見学に来てもらうための「見学パッケージツアー」みたいなものがあっても良いと思う。

「古い文書」というのは、そのもの自体に「力」がある。
私は職業柄、明治期の文書とかの現物を見たりすることがあるが、内容如何を問わず、現物の持つ「力」は強い。見るだけでテンションが上がる。
これは別に歴史研究者だからということだけでもないだろう。歴史博物館で坂本龍馬の書簡を見て興奮する人と、実はそれほど変わりがあるわけではない。

子供達に文書を見せても内容はわからないだろう。
でも、例えば明治期の文書を触らせてあげる(触り方の指導も兼ねて)ことは、おそらく相当に強い印象を残すと思う。
まずはモノを見せること、そしてそのモノが持つ地域の歴史を認識させること。これが公文書館の意義を知ってもらうためには一番の近道ではないだろうか。
そこから、現在の文書の保管の重要性(100年経てば、その古い文書と同じ意味を持つということ)も説明ができるだろう。

「文書が劣化するから持ち出したり触られたりするのは・・・」というのは、私は本末転倒だと思う。
昔から文書は「触られて」きたのだ。使ってもらわなければ、残しておく意味も無いと思う。
もちろん、慎重に扱うためのレクチャーは必要だけど、「金庫に入れてしまっておく」ことだけではダメなのだと思う。

そして子供に公文書館の意義を教えれば、それは親に伝わる。
そこからさらに理解を広げていけばよい。

この事業を行うには、歴史研究者などの協力が必要になっていくものと思う。
職員だけで抱え込まずに、外部に「助け」を求めていくことが必要だと思う。

なお、個人的に思うが、アーカイブズ関係の人は外に助けを求めるのが下手な方が多いように思う。
ぎりぎりダメになってから泣かれても、そこから挽回するのは大変。もっと初期段階で「事業仕分けにあいそう」と思ったら、その瞬間に地域の研究者や全史料協などに連絡して支援を仰ぐことをもっとやらないといけない。また、その時にすぐに助けを求められるような関係を地域に作っておかないといけない。
外の人は、中で起きていることをすぐには察知できないのだから。忙しくても、外の人に愚痴でもいいからこぼしておくことは必要なことだと思う。

その意味で④のエル・ライブラリーの話は実に興味深かった。
エル・ライブラリーは労働運動史関係の資料を多数所蔵する図書館(文書館でもある)である。財団法人大阪社会運動協会が運営している。
大阪府が約60年前に設立した労働図書館(大阪府労働情報総合プラザ)の運営を委託されていた。

ここは、関西地域の労働関係の資料の所蔵量では、他に類を見ない機関である。
東京にある法政大学大原社会問題研究所と並ぶ、貴重な労働関係資料を保存している。

そのエル・ライブラリーは、橋下行革のあおりを食ってそれまで出ていた府からの補助金を打ち切られ、並行して市からの補助金もゼロとなり、年間予算3200万円のうち、2200万円を失った。

しかし、そこからの動きが早かった。
すぐにホームページブログを使って、エル・ライブラリーの立ち上げを宣言し、情報を積極的に発信していくことで多くのサポート会員を獲得し、苦しいながらもなんとか所蔵資料の多くを残した状態で再度立ち上がることができた。
また、今でもtwitterでの広報活動に熱心である。

ただ、この生き残りのために、職員の方は大幅な賃金カット(月給が3分の1に減った人もいる)を受忍し、土日出勤などが常態化しているような状況だという。
職員の「無理」で何とか成り立っているのが現状であろう。
④の中で、館長の谷合氏が「このような職員の犠牲によって維持している図書館の実情を見ず、安易に「民間でもできるじゃないか」という発想することは戒めるべき」(47頁)と叫んでいるのは、本当に切実なものだと思う。

しかし、エル・ライブラリーに見習うべきことは、「すぐに助けを求め、自分たちの窮状をきちんと説明した」ことにあるように思う。
そして、そのときに助けに応じてくれるだけの関係を周囲に築けていたということなのだろう。
結局、文書館などが生き残るためには、こういった普段からの「関係」の構築や、「発信力」を鍛えることは必要不可欠であるように思う。

ただ、生き残るためには「お金」が必要である。
そして、今ではどこもかしこも「お金がない」という言葉のオンパレードである。これまでこういった施設を支援をしてきた行政機関がもっとも厳しい状況に追い込まれている。

この状況を打開する一つの案としては、寄付税制の改革という手があるだろう。
寄付控除額の拡大、寄付先となる機関を広げることで、さまざまな機関への寄付を促す仕組みである。

民主党が現在、この点についての改革を行おうとしている。これを後押しする必要があるように思う。
詳しくはNPO法人のシーズが解説をしているのでそちらを参照

④で「日本には寄付文化というものが存在しない」と書かれているが、問題は「文化」ではなく「制度」の方である。
自分たちの税金の使われる先を選べるようなレベルにまで寄付税制が制度化されれば、状況は変わると思う。ふるさと納税制度(事実上寄付控除に近い)の2009年度の寄附金実績が72億円もあったように、制度があれば動く可能性は高いのだ。

民主党には色々と幻滅している人もいるだろうが、内部には様々な議員がいる。
情報公開法改正に取り組もうとする人、寄付税制の拡大を図ろうとする人など、社会の仕組みを変えようとする人たちが、少ないながらもいる。
そういう議員達を支援していくことが必要なのだと思う。

なお、この雑誌は、大阪歴科協のブログに連絡先が書いてありますので、そこから入手することが可能だとのことです。
なんだか、雑誌の感想というよりも、それを元に考えたことを放言したような形になってしまって申し訳ないです。

この雑誌の記事の一つ一つが、現在の地方の公文書館や図書館の切実な状況を表していると思います。
情報共有のためにもご一読をおすすめします。
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防衛省防衛研究所と公文書管理法 [2010年公文書管理問題]

ツイッターでつぶやいたら、えらい勢いでリツイートされたので、どうやら関心のある方は多いのだなと思って、あらためてブログに書き残しておきます。

防衛省防衛研究所の旧陸海軍資料の扱いが、来年4月の公文書管理法施行でどうなるのかという話。
ちょうどいま、公文書管理法の解説に関する原稿を書いていたので、多少改変した上で、下に貼っておきます。

公文書管理法
第2条 4  この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める研究所その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)

5  この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
四  別表第二の上欄に掲げる独立行政法人等が保有している文書であって、政令で定めるところにより、専ら同表下欄に掲げる業務に係るものとして、同欄に掲げる業務以外の業務に係るものと区分されるもの


注目したいのは、第4項、第5項の双方の第3号に掲げられた「施設」のことである。
おそらく、ここで対象となる「施設」は、現在の情報公開法による、歴史的・文化的な資料などを保存する施設として指定を受けた所と同じになると思われる。
具体的には、宮内庁書陵部図書寮文庫、国立大学法人の図書館、大学共同利用機関法人(国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館など)の資料保存部局、独立行政法人の博物館や美術館(国立科学博物館、国立西洋美術館など)がその対象となるだろう。

これらの施設で管理する文書は、自らの運営に関するものは「行政文書」や「法人文書」になるが、歴史的・文化的資料や学術研究用の資料にあたるものは、「行政文書」や「法人文書」からは「外れる」ということになる。
ただし、公文書管理法施行令案第四条、第五条では、この特別な「資料」の管理方法についての以下のような規定がある(第5条はほぼ同文なので略)。

(法第二条第四項第三号の歴史的な資料等の範囲)
第四条 法第二条第四項第三号の歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料は、次に掲げる方法により管理されているものとする。
 一 当該資料が専用の場所において適切に保存されていること。
 二 当該資料の目録が作成され、かつ、当該目録が一般の閲覧に供されていること。
 三 次に掲げるものを除き、一般の利用の制限が行われていないこと。
  イ 当該資料に行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第五条第一号及び第二号に掲げる情報が記録されていると認められる場合において、当該資料(当該情報が記録されている部分に限る。)の一般の利用を制限すること。
  ロ 当該資料の全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法第二条第七項第四号に規定する法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は個人から寄贈又は寄託を受けている場合において、当該期間が経過するまでの間、当該資料の全部又は一部の一般の利用を制限すること。
  ハ 当該資料の原本を利用させることにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該資料を保有する施設において当該原本が現に使用されている場合において、当該原本の一般の利用の方法又は期間を制限すること。
 四 当該資料の利用の方法及び期間に関する定めが設けられ、かつ、当該定めが一般の閲覧に供されていること。
 五 当該資料に個人情報(生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下同じ。)が記録されている場合には、当該個人情報の漏えいの防止のために必要な措置を講じていること。


これを見ると、この指定を受けた施設は、専用の場所での資料保存、所蔵資料目録の作成・公表、一部の利用制限を除き資料を全て公開、規則の作成・公表、個人情報漏洩防止措置、に取り組む必要がある。
ただ、これは第5号を除くと、現在の情報公開法施行令(行政機関第3条、独法第2条)とほぼ同文なので、実際には大きな変化はないということになるだろう。

なお、防衛省防衛研究所もこの「施設」にあたることになり、「国立公文書館等」(外交史料館や宮内庁書陵部宮内公文書館など)にはならない。
よって、国立公文書館等に保存される資料と防衛研究所で保存される資料では、扱いが大きく変わってくる。

行政文書が国立公文書館や外交史料館などに移管された場合は、公文書管理法における「特定歴史公文書等」になるのだが、同じ行政文書であった旧陸海軍文書は、事実上「民間文書」として「研究所その他の施設」にて管理されることになるのである。
「特例歴史公文書等」にあたれば、公文書管理法に基づいた公開方法を取らなければならず、そこに法的な拘束力が発生する。
しかし、「特定歴史公文書等」から外れた文書には、上記の公文書管理法施行令第4条の制限しかかからない。
出自は同類の文書にも拘わらず、施設の違いでこのような差が出るのは、本来ならばおかしいと言えよう。

以上が原稿の一部ですが、防研の話は11月8日に担当者から電話で直接うかがった話です。
その際に、その担当者の方は「今と変わらないと聞いている」とおっしゃってました。

なお、なぜ「国立公文書館等」にならないかということを聞いたところ、「文書の移管を受けないから」という回答でした。
別に移管を受けなくても、「国立公文書館等」になって問題はないのだけれども、結局色々な規制のある制度にわざわざ加わらなくてもということなのでしょう。

この上記の問題は、施行令のパブコメの中で、かなり細かく指摘をされている方がおられます。
それも参考になるかと思います。(45頁、意見146)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu1.pdf
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公文書管理法施行令の法定パブコメ開始 [2010年公文書管理問題]

公文書管理法の法定パブリックコメントの募集が始まりました。

公文書等の管理に関する法律施行令案についての意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095101000&Mode=0

期日は12月5日までとのこと。
これが施行令に対して意見の言える最後の機会ですので、言いたいことがある方はぜひぜひ。

内容についてはまだ見ていないので、さしあたり募集が始まったことのみお知らせにて。
もし何か特記することがあれば、後日ブログに書きます。

追記 11/20

ざっと読んだところ、委員会で議論された際の案に沿ったものが出てきているようです。よって、特に解説を書く予定はありません。
もしわからない点などがありましたら、質問を受け付けますので、コメント欄に書き込んでください。
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札幌市での講演レジュメ公開 [2010年公文書管理問題]

2010年10月15日の札幌市文化資料室での講演「札幌市公文書館に期待すること―利用者としての視点から―」のレジュメ&資料です。

札幌講演の話は書いている時間が無いので、とりあえずレジュメだけ公開しておきます。
だいたいなにを話したのかはわかるかと思います。

講演内容自体は、年度末に出ると思われる『札幌市文化資料室研究紀要』の第3号に収録される予定です。文化資料室のサイトで公開されるはずです。

非常に熱心に聞いて下さる方が多くて、私としてもやりがいがありました。
それなりには好評だったとのことで、札幌までわざわざ招いていただいた役割は果たせたかなとは思っています。

レジュメ本文
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/sapporo-kouen.pdf

資料
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/sapporo-kouenshiryo.pdf
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文書改竄を「問題ない」とは・・・ [2010年公文書管理問題]

今日の毎日新聞の記事。引用します。

東北厚生局:開示文書、また改変 不祥事発覚後 提出元に訂正させ
毎日新聞 2010年10月20日 東京朝刊

 開示請求のあった公文書を改ざんした不祥事が6月に発覚した厚生労働省東北厚生局(仙台市、石井博史局長)が、7月にも開示請求のあった公文書を提出元に書き換えさせてから開示していたことが分かった。同局の担当者は「(書き換え前の)文書に誤りがあった」と釈明するが、総務省行政管理局情報公開推進室は「請求時点で行政機関が保有している文書は、仮に間違っていてもそのまま公開しなければならない。情報公開法の趣旨に反する不適切な行為」と指摘している。

 書き換えられた文書は、福島県郡山市にある医療専門学校が国の規則に基づき東北厚生局に提出した08~09年度の年次報告など。歯科衛生士科の授業時間数などが記されている。

 開示請求したのは同校を「不当に解雇された」として6月に福島地裁郡山支部に提訴した元教員(52)。裁判資料として7月8日に開示請求した。東北厚生局総務課によると、開示期限は8月9日だったが「開示・不開示の審査に時間を要する」との理由で期限を30日間延長した。しかし元教員によると、延長期限を過ぎても通知がなく、9月中旬に同課に問い合わせると「記載に間違いが見つかったので学校に訂正を求めている」と言われたという。

 10月2日にA4判87枚の文書が届いたが、年次報告には専門学校が東北厚生局に提出した日付がなかった。同局に確認したところ、開示請求後の9月下旬に書き換えさせたことを認めたという。元教員は原本の開示を求めたが拒否され、どこが書き換えられたのか不明のままだ。

 6月に東北厚生局による改ざんが発覚した公文書も同じ医療専門学校に関するもので、元教員は「知られたくないことを組織的に隠したのではないか」と話している。毎日新聞の取材に対し、同局の千葉孝司総務課長は書き換えの事実を認めたうえで「誤った記載がある(改変前の)文書を開示すると誤解を招くと判断し、正しい文書を開示した。組織として判断したもので局長の決裁も受けている。問題とは考えていない」と話した。【坂本智尚】

==============

 ■ことば
 ◇厚労省東北厚生局の開示文書改ざん問題

 授業時間数不足の疑いがある福島県郡山市の医療専門学校を06年に実地調査した同局が07年、調査結果を記した公文書の開示を卒業生から求められた際、不足時間数などを指摘した部分を削除したり文書を差し替えた不祥事。今年6月に毎日新聞の報道で発覚し、厚労省は当時の担当者ら4人を減給などの処分とした。

(引用終)

(・・)
もし本当であったならば、いくらなんでも、これは尋常でない酷さだ。
その酷さは次のようにまとめられる。

・「請求された」文書が「存在」するにもかかわらず、それを隠匿し、別の「正しい」文書を「作って」渡した。
→文書を意図的に隠匿したと言われてもおかしくない。
=Wikiの知識だが、刑法の「文書等毀棄罪」が適用される事例(文書の利用を一時不能にする目的で、隠匿する行為)にあたるのでは?
→さらに原本の開示を拒否していることで「隠匿」は確定。もし原本を捨てていたなら、刑法第258条の「公用文書等毀棄」に完全に適用する。

・相手を見て開示内容を変えた可能性が高い。
→裁判係争中の相手が有利になる情報を渡したくないがゆえに、文書を変えた可能性。
=つまり、相手の利用目的を推測して開示内容を変えた。これは利用目的を問わない情報公開法の根本概念を揺るがす。

・文書の「原本性」を無視することを「問題」と思っていない。
→情報公開はその政策を「行ったとき」の文書を開示するべきもの。間違ったデータで行政を行ってしまっても、「行った」以上はその情報は開示する必要がある。
もしこのようなことが許されるなら「失敗した政策のデータは全て書き換えて良い」ということになりかねない。
→しかもそれを「問題ない」と言い張るのは大問題。文書管理の研修をきちんとやっているのか疑う。懲戒免職レベルのことを行っているのに、それを堂々と「問題ない」というのはどういうことなのか。

もしどうしてもデータ的に問題だったというなら、元の文書を公開した上で、新たに直したデータを行政サービスとして提供すれば良いのだ。なんでそんな考え方すらできなかったのか。

この後、どういう処分が下されるのか注目したい。
もしこれを「減給」レベルで済ませたら言語道断。公務員倫理そのものが問われていると考えるべき。

しかし、これ「事実」なのか・・・。目を疑う。
公文書管理法を作るときに、意図的に文書を廃棄した場合のために罰則を入れるべきという議論があって、結局見送られたが、なんというかそういうレベル以前の問題。

こういう事例はさすがにあきれ果てるなあ・・・・
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