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【連載】公文書管理法修正案の解説(第3回)附帯決議、積み残された課題 [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回→こちら
第2回→こちら

6月11日に公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)が衆議院を通過しました。
法案についての解説はすでに以前の連載(全八回+補遺三回)でやっておりますが、今回は修正された部分の解説をしたいと思います。
2回かけて修正案の解説、あと1回で附帯決議の内容について解説します。

修正案の比較表→こちら

第3回 附帯決議、積み残された課題

まず「附帯決議」とは何かということですが、Yahoo!「みんなの政治」によれば

議決された法案や予算案の、運用上の努力目標や注意事項などを盛り込んだ決議。 政府提出法案または与党側の議員提出法案に、野党側が求める付帯決議が付く場合がある。ただし、付帯決議には法的拘束力がないため、行政に対し法律の運用面での配慮を求めるに過ぎないとされる。」

拘束力はないが、これを元にして自らの主張を正当化できるので、思ったよりも意味があると思う。

それでは附帯決議について述べていきます。


公文書等の管理に関する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

一 公文書管理の改革は究極の行政改革であるとの認識のもと、公文書管理の適正な運用を着実に実施していくこと。

→「行革の一環」であることを明示したもの。

二 公文書等の管理に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための公文書管理担当機関の在り方について検討を行うこと。

→民主党が政権を取ったならば、これを根拠として公文書管理庁の設立を呼びかけることができそう。

三 行政文書の管理が適正に行われることを確保するため、一定の期間が経過した行政文書に関しその保存期間満了前に一括して保管等の管理を行う制度(いわゆる中間書庫の制度)を各行政機関に導入することについて検討を行うこと。

→「中間書庫」の制度を作るよう求めているが、「各行政機関に」という点でやや不満あり。国立公文書館が管轄する集中管理制度にはまだほど遠い。

四 国民に対する説明責任を果たすため、行政の文書主義の徹底をはかるという本法の趣旨にかんがみ、軽微性を理由とした恣意的な運用のなされることのないよう、万全を期すること。

→第4条関係。「処理に係る事案が軽微である場合を除き」との文面が残ったため、その「軽微」が恣意的な拡大解釈がなされないようにするということ。

五 公文書管理と情報公開が車の両輪関係にあるものであることを踏まえ、両者の適切な連携が確保されるよう万全を期すること。

→公文書管理は内閣府、情報公開は総務省担当でもあることも注意。万全を期してほしい。

六 公文書の適正な管理が、国民主権の観点から極めて重要であることにかんがみ、公文書管理に関する職員の意識改革及び能力向上のための研修並びに専門職員の育成を計画的に実施すること。また、必要な人員、施設及び予算を適正に確保すること。

→研修の充実は第33条が入ったので良し。重要なのは最後の「人員、施設及び予算」。これがないとこの制度は動かない。

七 既に民営化された行政機関や独立行政法人等が保有する歴史資料として重要な文書について、適切に国立公文書館等に移管されるよう積極的に対応すること。

→JRやNTT、JTなどが持っているはずの行政機関時代の文書の回収ということになる。自主的に持ってきてもらう以外には無理なので説得が必要。重要なことである。

八 国立公文書館等へ移管された特定歴史公文書等に対する利用制限については、利用制限は原則として三十年を超えないものとすべきとする「三十年原則」等の国際的動向・慣行を踏まえ、必要最小限のものとすること。

→これが入ったのは意外。「三十年原則」とはICA(国際文書館評議会)が1968年に決議した「マドリッド原則」というもので、国際的にはこのルールが適用されていることが多い。むやみやたらな長期的な利用制限はできる限り避けるべきという主張をするには都合の良い項目。

九 本法に基づく政令等の制定・改廃の過程及び公文書の管理・利活用に関して、十分に公開し、多くの専門的知見及び国民の意見が取り入れられる機会を設けること。

→この法律に関する手続きができる限り透明度の高いものになることを期待。

十 特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱いにおける除外規定である本法第十六条に規定する「行政機関の長が認めることにつき相当の理由」の有無の判断に関しては、恣意性を拝し、客観性を担保する方策を検討すること。

→これについては、衆院では全く審議されていないので不安が大きい。「意見書」をどのように国立公文書館側が判断をするのか、また外務省外交史料館や宮内庁書陵部は内部部局からの「意見書」を鵜呑みにするのではないか、などはきちんと詰める必要がある。(詳しくは下記にて)

十一 特定歴史公文書等の適切なデジタルアーカイブ化を推進し、一般の利用を推進すること。

→アジア歴史資料センターの資料の強化を図るということだと思う。現在は国立公文書館、外交史料館、防衛省防衛研究所図書館の旧陸海軍資料に限られているが、是非宮内庁書陵部の資料もデジタルアーカイブに加えてほしいと思う。

十二 公文書の電子化の在り方を含め、電子公文書の長期保存のための十分な検討を行うこと。

→電子化は、フォーマットを何で統一するかによって、その後の見読性が問われることになる。
例えば、昔のワープロ専用機で作られた文書を現在のパソコンで読みこむには、コンバーターなどのソフトが必要になる(また、表などはそれでもうまく表示できない)。
今はWordが主流でも、マイクロソフトが永久に滅びないとは限らないわけで、どう保存し、利用可能にしておくかは、意外と難しい課題である。

十三 刑事訴訟に関する書類については、本法の規定の適用の在り方を引き続き検討すること。

→民事訴訟関係の書類は国立公文書館に移管されたが、刑事の方はまだ裁判所に残っている。有名な物としては2・26事件の時の記録とか。これらを自由に見れるようにするためには、個人情報をどうするかなど色々と検討する必要がある。

十四 一部の地方公共団体において公文書館と公立図書館との併設を行っていることを踏まえ、これを可能とするための支援を検討すること。

→地方への支援ということはよいのだが、公文書館と図書館を併設することを例に出したのはどうなんだろう?公文書館と図書館は機能が全然違うので、本来ならば一緒にするべきではないと思うのだが。まあ、公文書館を新設するのはお金がないから、まずは併設という形でということなんだろうが、文書保存の仕方とか考えても、図書の扱いとは別物だと思うのだが。

十五 宮内庁書陵部及び外務省外交史料館においても、公文書等について国立公文書館と共通のルールで適切な保存、利活用が行われるよう本法の趣旨を徹底すること。

→ちゃんと入れてくれた。書陵部と外交が置いていかれないように、是非とも国立公文書館とのルールの共通化に努めてほしい。


さて、衆議院での修正は、法案の問題の多くを解決できたと思う。また、附帯決議でもかなり重要なものが入ったので、かなり満足度の高い物になった。

だが、衆院では、官僚達による作為的な文面を変えるために、「行政文書とはそもそも何だ」というレベルから議論せざるを得なかったので、「歴史公文書」の話が全くされていない。
これについて、以下の点はきちんと詰めておく必要がある。

1.外交情報や公安情報を、移管元の行政機関が非開示にしたいときに「意見書」を提出することができることについて。(第8条第3項、第16条第1項・第2項、第18条第3項)

手続きとしては、

移管元の行政機関が意見書を提出
  ↓
国立公文書館等が「参酌」して公開非公開を決定


ということになっているわけだが、この「参酌」の手続きの内容が全く審議されていない。これが、移管元との「協議」という意味であったら大問題。移管元の非公開要求を跳ね返す論理を構築するだけでも結構大変なのに、それが「協議」ということになれば、もっと移管元の意見が強くなる。

国会では増原義剛内閣府副大臣が答弁で

「特に、外交とか犯罪とか、将来予測等の専門的、技術的な判断、こういったものが必要になってくるということになりますと、やはり現在の情報公開法と同様に、これらに知見のある行政機関の長の第一義的な判断を重視するという規定ぶりとしたところであります。」(衆院内閣委5月27日、西村智奈美議員への答弁)

と述べているように、政府官僚側は移管元の意見を「重視」すべきだとの認識があるように思う。
この手続きはきちんとしておかなければならない。また、外務省外交史料館や宮内庁書陵部では、内部から内部への「意見書」提出になるわけだから、その「意見書」に逆らえないことは必定。客観性を持たせるための外部有識者の導入などが必要だと思う。

この点は法の修正無しに十分可能なことなので、紛れのない用にきちんと国会審議で詰めてほしい。


2.外務省外交史料館と宮内庁書陵部の拡充問題

国立公文書館の拡充は衆院でも問題になっていたが、残りの2つについてはあまり配慮がされていなかったように思う。
この2つの部局は、各省庁内の一部局に過ぎないので、行政改革基本法の影響をもろにかぶる。つまり、各省庁には定数削減のノルマが課されているので、この二部局の人数を増やそうと思ったら、他部局に削減人数を押しつけるだけでなく、人員を奪ってこなければならないという困難を抱えることになる。

おそらくこれは政治判断でどうにかするしかないと思う。本来なら、やはりこの二部局を国立公文書館の分館として各省庁から切り離すべきだと思うのだが。

とりあえずは以上です。参議院の審議は、16日にお経読み(法案読み上げ)、19日に審議採決(一日しかない!)の予定らしいです。

追記 審議は23日(火)に5時間の審議を行って、そこで採決ということだそうです。

追加することがあれば、また書きます。あともう少しです。もっと良いものになることを望みます。
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【連載】公文書管理法修正案の解説(第2回)第7条~最後まで [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回→こちら

6月11日に公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)が衆議院を通過しました。
法案についての解説はすでに以前の連載(全八回+補遺三回)でやっておりますが、今回は修正された部分の解説をしたいと思います。
2回かけて修正案の解説、あと1回で附帯決議の内容について解説します。

修正案の比較表→こちら

第2回 第7条~最後まで

それでは、第7条(行政文書ファイル管理簿)について。
第1項はそのままなので省略し、第2項が付け足されました。

2 行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿について、政令で定めるところにより、当該行政機関の事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。

この文章は附則の第5条にあったものである。つまり、情報公開法の改正案にあった文面である。
少々わかりにくいのだが、これを情報公開法から公文書管理法に持ってきた理由は、おそらく行政文書ファイル管理簿に関する業務の責任を、総務省から内閣府に持ってきたということだと思われる。
情報公開法の管轄は総務省が行っており、おそらく今回の公文書管理法ができても、そこは変わらないと思われる。ただ、その下で行われていた管理簿の内容は、ずさんきわまりない物だった。
だから、内閣府に持っていって、その改善を目指し、公文書管理の一元化を行ったということなんだろう。
ちょっとこの部分の解釈は自信がない。内閣委の議論でもあまりきちんとされていなかったので。


次に第8条(移管又は廃棄)について。第2項が第3項に移動し、第2項と4項が加わった。
加わった所だけ引用します。

2 行政機関(会計検査院を除く、以下この項、第四項、次条第三項、第十条第三項、第三十条及び第三十一条において同じ。)の長は、前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の協議し、その同意を得なければならない。この場合において、内閣総理大臣の同意が得られないときは、当該行政機関の長は、当該行政文書ファイル等について、新たに保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。

4 内閣総理大臣は、行政文書ファイル等について特に保存の必要があると認める場合には、当該行政文書ファイル等を保存する行政機関の長に対し、当該行政文書ファイル等について、廃棄の措置をとらないように求めることができる。


この部分は、文書作成の第4条の次に重要な修正。
法案の解説の際に書いたが、当初の文面は「行政機関の長」のみの判断によって移管廃棄ができるというものだったため、これは有識者会議の最終報告を無視した極めて不当な文面であることを指摘した。
このままでは、以前と変わらず「移管・廃棄」を行政機関の長が勝手に行えることになり、まともに歴史公文書が残らなくなる。まさにこの部分が修正されるかは、今後の公文書管理行政にとった非常に大きな点であった。

そして、今回の修正は、文書の廃棄の際には「内閣総理大臣」の同意が必要となった。これは、要するに内閣府の公文書管理課及びそこと強く結びついている国立公文書館の同意が事実上必要になるということを意味している。
また、内閣府の方から、重要な文書については廃棄しない要求をすることができるという一文も入った。これは国家的な大プロジェクト(例えばオリンピックとか先進国首脳会議(サミット)といったもの)に関して系統的に文書を残すことも可能になるということである。
これらは非常に大きな改正である。

この文面については、「まだ行政機関の長が第一義的には廃棄するか否かの判断をしているではないか」と言われる方もおられるかもしれない。
もちろん、米国のように、廃棄する判断を一から国立公文書館ができれば理想ではあろう。だが、今の国立公文書館の職員数(42人)ではそれは不可能である。

以前に、広島大学文書館の小池聖一館長が廃棄の方法について話していたことをブログに書いたが、おそらく現状では、第一義的な廃棄判断は各省庁にさせ、それをチェックする所に重点を置く以外には、廃棄業務を効率的にかつ有効的に行う方法は無いと思われる。

問題は、そのチェックがどれだけ機能するかという点、つまり「運用」の問題にかかってくる。
そのためにも、この法案が施行されることになる2011年4月までに、急速に国立公文書館の職員を増やし、判断のできる職員を各省庁にも養成しなければならない。
今すぐ取りかかれば、1年以上の時間がある。是非とも、お金の投入と人材の登用をはかる手段を考えてほしいと思う。


次に、第29条(委員会への諮問)について。
文面を引用しても何だかさっぱりわからないものなので、解説だけ付けます。

第29条は公文書管理委員会に諮問しなければならない事項が挙がっている。例えば、公文書管理法の施行令にあたる政令を作る時にその文面を諮問することなどがそれにあたる。
今回の修正で、新たに、各行政機関や独法、国立公文書館等が規則を定める際には、内閣総理大臣が公文書管理委員会に諮問した上で同意をしなければならなくなった(第10、13、27条関係)。
これまではただ「内閣総理大臣の同意」だけだったが、それだけでは各行政機関の規則の共通化は果たせないのではないかという疑問が挙がっていたので、委員会への諮問を必要とすることで、より共通化への道を開いたということになるのだろう。
細かい話ではあるが、これも紛れを減らしたということだと思う。


次に第32条と第33条として新たに加えられたものについて。
長いですが、文面を引いておきます。まずは第32条(研修)。

第三十二条
 行政機関の長及び独立行政法人等は、それぞれ、当該行政機関又は当該独立行政法人等の職員に対し、公文書等の管理を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。

2 国立公文書館は、行政機関及び独立行政法人等の職員に対し、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。


これは、研修をしっかりやりましょうという文章。
この法律は、結局のところどこまで「実効性」を確保できるかがカギとなる。そのため、この一文が入ることで、各省庁も研修を義務づけられるし、また予算も取りやすくなると思う。その意味では、なかなか味な条文を入れてくれたと思う。
また、重要なのは2で、「歴史公文書等」の扱い方も「行政機関・独法の職員」に教えるという点である。つまり、現役で文書を扱っている人達にも歴史公文書の研修を行うことで、どのように「残す」かの視点を入れた文書作成のやり方を学ばせるということを意図している。

是非とも、この研修の徹底化を図ってほしい。
特に「新人」の教育は重要である。新人に今回の法律に基づいた文書作成の方法を叩き込めば、次第にその文化は根付いていくはずである。新人研修には特に力を入れてほしいと思う。


次に、第33条(組織の見直しに伴う行政文書等の適正な管理のための措置)について。

第三十三条
 行政機関の長は、当該行政機関について統合、廃止等の見直しが行われる場合には、その管理する行政文書について、統合、廃止等の組織の見直しの後においてこの法律の規定に準じた適正な管理が行われることが確保されるよう必要な措置を講じなければならない。

2 独立行政法人等は、当該独立行政法人等について民営化等の組織の見直しが行われる場合には、その管理する法人文書について、民営化等の組織の見直しの後においてこの法律の規定に準じた適正な管理が行われることが確保されるよう必要な措置を講じなければならない。


この文もよくぞ入れてくれたというもの。
廃止機関(例えば国鉄(現JR)や電電公社(現NTT))の公文書は、これまで全く保存の手段を取られていなかったため、民営化と同時に、これらの機関が持っている文書は「私文書」となってしまい、公的機関時代の文書を国民が閲覧できる手段を失ってしまった。
この条文は、民営化したり廃止したりした機関も、その公的機関時代に作られた文書を、その後もきちんと管理(要するに公開・保存・移管などを行政機関に準じて行う)しなければならないというものである。

すぐに想定されるのは、民営化の可能性が強い日本郵政公社が挙げられる。
郵政公社はもちろん、明治期から現在までずっと行政機関であり、現在でも公社化しても情報公開法の対象の中にまだ入っている(当然、公文書管理法の対象の中にある)。
この条文が入ったことで、例え民営化された場合でも、それまでの文書を「私文書」扱いとして勝手に処分したり、非公開にしたりできなくなる。
非常に大きい条文が入ったと思う。


最後に、附則の第13条(検討)について。

附則 第十三条
 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案しつつ、行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

2 国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び権能等を踏まえ、検討が行われるものとする。


第一項は5年後に法を見直すということである。
これは重要な項目ではあるが、一方、情報公開法で起きたことをきちんと反省しなければならない。

情報公開法にも4年後の見直しという附則がきちんと入っていた。しかし、情報公開法の制定を求めていた多くの団体が、この見直しの時にはほとんど運動を起こさなかった。
そして、有識者の検討が行われた結果、問題がたくさん起きていたにも拘わらず、「まだ情報公開法の主旨が徹底されてないから問題なのだ」というように意見をすりかえられ、コピー料金が20円から10円になったという点を除いては、全く有効な改正をなしえなかった。

いまから考えてみると、情報公開法施行四年目の時に起きていた問題の多くは、公文書管理法がないが故に起きていたことだった。(例えば、文書開示が遅れるとかいったことは、行政機関の文書管理がずさんだったからである。)
あの時に、公文書管理法を作らなければダメなんだということをきちんと問題化できていれば、この法案はもっと前に提示できていたかもしれないのだ。

だから、この五年で見直しという文面が入った以上、きちんと公文書管理法が機能しているのかを見定めた上で、よりよい改正を行うような運動を行うことが必要になるだろう。そのためにも、施行後の問題もフォローする必要がある。

何度も書いているが、この法律はできたら終わりではなく、むしろできたところが「スタートライン」である。
是非とも、施行後の動きにも注目をし続けてほしいと思う。
私自身も、このブログで引き続き、この問題を取り上げ続けようと考えている。

次に第二項についてであるが、これは国会と裁判所にある公文書管理をきちんと検討しなさいということである。
この一文が入ったことで、国会と裁判所が各自で研究をすることになるだろう。

特に、私が注目しているのは国会の方である。
国会は「立法府」として、法律の作成に関わっているところである。だからこそ、ここで作られている文書もきちんと保存され公開されるべきである。

だが、ここの文書をどこまで「公文書」と呼べるかは、実は行政機関ほど簡単ではない。
例えば、「議員立法」をしたときに、その議員が立法までに作成した文書は果たして「公文書」になるのだろうか。
これが「閣法」だったら、官僚達が作成しているので間違いなく「公文書」になる。
そう考えてみると、各議員が自分の事務所で作成している文書が「公文書」となる可能性が出るということになるのだ。

これはなかなか分類することが簡単ではない。
だが、行政機関に公文書を残すことを課した以上、自らの襟を国会議員達は正してほしいと思う。是非とも議長の下にでも検討する機関を設け、地道に議論を続けてほしいと願っている。
今回の法案化に関わった議員達は、是非ともこの点も忘れずにやってほしいと願っている。

以上で修正案の解説は終わり。次回は衆議院の附帯決議の内容についてと残された課題について解説します。
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【連載】公文書管理法修正案の解説(第1回)第1条~第6条まで [【連載】公文書管理法案を読む]

6月11日に公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)が衆議院を通過しました。
法案についての解説はすでに以前の連載(全八回+補遺三回)でやっておりますが、今回は修正された部分の解説をしたいと思います。
2回かけて修正案の解説、あと1回で附帯決議の内容について解説します。

修正案の比較表→こちら

第1回 第1条~第6条まで

まずは第1条(目的)から。赤字が加わった部分。

第一条
 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得る物ものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。


この第一条の変化は、「国民」が主語の文面が入ったということである。
以前の法文は、行政側の説明責任が中心に書かれており、国民の側がそれを利用するという言葉がなかった。
今回の修正で、事実上の国民の「知る権利」にあたる部分が入ったことになる。

この「知る権利」という言葉自体は、官僚達の抵抗が激しかったために入らなかったが、言葉の代わりに「実」が入ったということになるだろう。
公文書市民ネットで一緒に活動していたまさのあつこさんによれば、行政法で「国民」が主語である目的規定が入ったのは初めてではないかと述べているぐらい、画期的なことである。


次に第4条の文書の作成。
まず前提として、「第2章 行政文書の管理」として第4条から10条まで全てまとめられていたのが、節で「第一節 文書の作成」(第4条)と「第二節 行政文書の整理等」(第5条から10条)に分けられた。
第4条だけを別にわけたことで、文書の「作成」の部分が重要だと明示されることになったのは大きいと思う。

それで、第4条。

第四条
 行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 一 法令の制定又は改廃及びその経緯
 二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
 四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
 五 職員の人事に関する事項


ここは、今回の修正の中で最も良くなった点。よくここまで頑張ったと評価したいところ。内閣委での枝野幸男議員の発言などを見ると、ここが一番揉めたところなようだ。

以前の案に対する批判として、作成しなければならない文書が「意思決定」のみとしか読めず、この文章で「意思決定過程」が残ることは絶対にあり得ないということを書いた。→こちら
今回の修正は、それをかなりの部分で直すことができた。
「経緯」や「過程」といった言葉がしっかりと文面に入ったこと、「合理的に跡付け」「検証」できるといった、国民の利用を視野に入れた部分具体的な内容についての列記。そして、列記した物だけではないということを示すために「次に掲げる事項その他の事項」という言葉が入ったこと。
これらは、全て非常に重要な点である。

なお、これだけ細かくなったがゆえに、「政令で定めるところにより」という文面が落ち、これ以上の細かい点は公文書管理委員会のチェック無しで決められることになった。
だが、さすがにここまできちんと「経緯」とか「過程」とか書かれていれば、それを作成しないでよいという政令が作られることはないだろう。
法律としては十分な物が書き込めたと思う。あとは実効性をどう担保するかが課題となるだろう。


次に第5条(整理)の第5項。

5 行政機関の長は、行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない。

ここは「あらかじめ」→「できる限り早い時期」に変わった。
これも細かい変化だが、レコードスケジュールを決めるのは保存期間が切れる直前ではないよということを明示したということで、政令での紛れを減らしたということだと思う。


次に第6条(保存)。第1項は変わらず、第2項が増えたのですが、とりあえず第1項から載せておきます。

第六条
 行政機関の長は、行政文書ファイル等について、当該行政文書ファイル等の保存期間の満了する日までの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。
2 前項の場合において、行政機関の長は、当該行政文書ファイル等の集中管理の推進に努めなければならない。


第1項は非常にわかりにくい。政府側は「必要な場所」=中間書庫という解釈だと説明をしていた。しかし、そこだけではいまいちわかりにくかった。
そこで、第2項の「集中管理の推進」というのを入れることで、中間書庫の設置をきちんと入れなければという方向性を見せたということになるだろう。
ただ、中央での集中管理というよりは、各省庁個別に中間書庫が置かれるという方向での話になりそうである(衆議院附帯決議の三。第3回で説明)。
また、「中間書庫」という言葉自体は入らなかったこともあり、少々不完全燃焼な条文になってしまったように思う。

今回はここまで。次回は第7条から最後までです。
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【連載】公文書管理法案を読む(補遺第3回)―作成・取得義務について [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回はこちら/第2回はこちら/第3回はこちら/第4回はこちら
第5回はこちら/第6回はこちら/第7回はこちら/第8回(終)はこちら

補遺第1回はこちら
補遺第2回はこちら

補遺の第3回は、「第3回 問題点(1) 公文書の定義」で書いた内容を、作成義務・取得義務の方向から再度書き直して整理してみようという試みです。
なので、できたら前のものも合わせて読んでもらえると良いかと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

補遺第3回 作成・取得義務について

まず、公文書管理法案の第4条を早速だが引用してみる。

第四条 行政機関の職員は、当該行政機関の意思決定並びに当該行政機関の事務及び事業の実績について、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、政令で定めるところにより、文書を作成しなければならない。

この法文は、文書の作成義務を定めたものである。
実は、情報公開法の施行令第16条には次のような文面がある。

二  当該行政機関の意思決定に当たっては文書(図画及び電磁的記録を含む。以下この号において同じ。)を作成して行うこと並びに当該行政機関の事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とし、次に掲げる場合についてはこの限りでないこととするものであること。ただし、イの場合においては、事後に文書を作成することとするものであること。
イ 当該行政機関の意思決定と同時に文書を作成することが困難である場合
ロ 処理に係る事案が軽微なものである場合


これから、公文書管理法案の第4条がこの条文を下敷きにしていることはすぐにわかる。
そして、「原則」から「義務」にしたことは評価できる。
なぜなら、情報公開法上では文書の作成はきちんと行われてこなかった。特に、情報公開の対象になるからといって、あえて文書を作らないということも頻繁に起きていたと言われている。
今回、それを「義務」にすることで、作らないことが違法であるということになったことは大きい。

ただし問題は「作られる文書の内容」である。
管理法第4条法文を見ると、「意思決定」「事務及び事業の実績」と書かれている。
これは「決定」と「実績」だけを作ればよいと読める。
つまり、やはり発想は「決裁文書を作っておけば説明責任は果たせる」という考え方なのである。

日本の国立公文書館所蔵の文書のほとんどは「決裁文書」だけで、使えないという話は以前からなんども書いたことがあるので繰り返さない。→こちら参照
まずは「意思決定過程」を残させること。これを法文に入れておく必要がある(ちなみに「政令で決めるから」というのは甘い。政令は官僚が作るもの。そこにそんな画期的なものは入ることはあり得ない)。

さて、そして今回もう一つ取り上げたいこと、それは「取得義務」についてである。
私はあまりその発想がなかったので、この話を聞いたときに、なるほどと思った。

「取得義務」とは「業務遂行上の根拠や証拠となるもの」を「取得」しなければならないということである。
具体的には、外部委託した調査(例えば高速道路建設の際の環境調査など)の結果の根拠となるデータをきちんと公文書として取得しなさいということである。

どうやら多くの省庁では、外部業者に委託されている調査だと、結果だけを受け取り、その根拠となっているデータをもらわないようなのだ。
そうすると、例えば高速道路の建設が本当にその場所でなければならないのかという根拠となるデータは民間業者が保有しているということになり、それを情報公開で請求することはできない。
つまり、省庁側が示しているデータの正確性を検証することができないのである。

実際に各省庁の業務は、調査から議事録のテープ起こしまで、さまざまなものが民間に委託されているのは間違いない。
しかし、民間業者の所にあるものを「公文書」と認定することは当然できない。
だからこそ、意思決定過程がわかるものについては、各省庁がその文書を作成するだけでなく「取得」することも義務化する必要があるのだ。
そしてその「取得」を義務化するためには、契約をするときに必ず「取得する」ことを明記する必要があるだろう。(そうしないと、民間業者の「私物」を各省庁が「押収する」という立場になりかねない。)

公文書管理法案の第4条はそれ自体はよくぞ入れてくれたという文章ではある。だが、これではまだ抜け道が多すぎる。是非とも、「意思決定過程」の文書化と「取得義務」を加えてほしいと思う。


3回にわたり補遺を書いてきました。もしまた書くことがあれば続きを書きます。
今回の連載はここまで。
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【連載】公文書管理法案を読む(補遺第2回)―国立公文書館のあり方 [【連載】公文書管理法案を読む]

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補遺第1回はこちら

今回は前回の補足。国立公文書館のあり方についてです。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

補遺第2回 国立公文書館のあり方

すでにこの問題は、連載の第4回「問題点(2) 延長・移管・廃棄の権限」の際にも触れている。
その中で、私は、国立公文書館の権限の問題について次のような文章を書いた。

有識者会議の最終報告では、国立公文書館の権限を強めるために、現在の独立行政法人のままではあるけれども「特別の法人」とすること、公文書管理担当大臣を設けること、そして国立公文書館長をアメリカのNARA(国立公文書記録管理局)長官の地位(大統領による指名)を参考にしつつ、より格の高い存在として位置づけることも考えられる、との記載があった。(P20-22)

しかし今回の公文書管理法案の中には、国立公文書館の機能についての記載は文書の移管・公開・保存以外のことはほとんど書かれていない。
また、公文書管理法案には国立公文書館法の改正案がセットになっているが、これを読んでも、正直言って、「特別の法人」となったようには全く思えないのだ。

(引用終)

しかし、正直に言うと、この「特別の法人」って何?って思っていたのだ。
何をすれば「特別な法人」になるのか、それは普通の独法と何が違うのかよくわからなかった。なので、曖昧に書いて細かい話は省いたのである。

最近、公文書市民ネットの会議での議論で、このあたりがどういうことなのかやっと理解した。今回の補遺はそれについて書いてみたい。

まずこの話をするときに、「そもそも独立行政法人とは何か」ということを説明する必要がある。
独立行政法人を定義している法律は「独立行政法人通則法」というものである。
この第2条の第1項に定義が書かれている。

第二条  この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。

この文面で注目すべき点は、独法の行っている仕事が、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」として定義されているという点にある。
つまり、独立行政法人国立公文書館の行っている職務は、「国が直接実施する必要のないもの」と考えられているということである。

これは明らかにおかしい。
国の公文書を保存し公開する職務が、「国が直接実施する必要のない」事業でないはずがない。国がやる事業であるのは当たり前だ。

そこで「特別な法人」という概念が出てくる。
つまり、国立公文書館のために新たな法律を作り、そこに「公文書の保存公開は国が直接に行う事業である」との定義づけを明確にして、強力な機関として法的な根拠を与える必要があるのである。

一方、国立公文書館をもう一度国立機関に戻すべきだという意見も有識者会議では挙がっていた。
つまり、そもそもとして国立公文書館を独法化するということ自体が間違っていたということだ。
ただ、この点については、簡単にはそれが良いとも言えない事情がある。

国立公文書館関係の方の話を見聞きした感じだと、どうも独法化は全てが悪かった訳ではないようなのだ。特に、人事面においては明らかに良くなった点があるという。
それまでは、各官庁から全く公文書館に理解のない人が人事で回されてきたりすることもあり、専門の職員の採用にも融通が利かなかった。
また予算運用にもある程度の柔軟性が出たという話もあるようだ。

だが、独法化して国家機関ではなくなったことで、公文書の移管に支障が出たのではと思う。
統計の数字からは、移管数が増えているように見える。
だが、時折大きな資料群を移管したような巨大な数字があるので、日常的な移管はあまり進んでいないように感じるのだ。
独法化以前の状況もあまりわからないので断定はできないが、情報公開法ができたにもかかわらず、移管は進まなかったということだけは確かだろう。

国立公文書館の職員はこの移管協議でものすごく苦労しているという話は色々な所から話が入ってくる。
移管させようと努力しても、移管権限が各省庁にある限り、それは「お願い」にしかならない。
もともと少ない職員数でそのような所に労力をかけさせていることは大きな問題である。

つまり、独法の良さを引継ぎながらも、その権限を強めるというところが必要となる。
そうなると、やはり「特別な法人」として位置づけるということは、それなりの説得力はあると思う。

私としては、今回の法律では「特別な法人」としておき、いつか公文書管理庁が内閣からも独立した機関になるときに、国立公文書館を統合して、アメリカのNARAのようになれればよいのではと考えている。つまりここでも二段階で考えた方がよいのではと思うのだ。
そして、その間に人材の大量養成を行うだけでなく、国立公文書館自体が国民から敬意を持って見られるような機関になるように努力していけばよいと思うのだ。

以上ここまで。次回は「作成・取得義務」の話をします。→補遺第3回
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【連載】公文書管理法案を読む(補遺第1回)―公文書管理機関のあり方 [【連載】公文書管理法案を読む]

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「公文書管理法案を読む」の連載をしてから、すでに1ヶ月が過ぎました。
その間、公文書市民ネットの人達と色々と議論をする機会があり、新たな知見などをたくさん学びました。

そこで、今回より数回かけて、前回の連載では述べることができなかった点について、「補遺」という形で書いてみたいと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

補遺第1回 公文書管理機関のあり方

前回の連載で、触れなければならないと思いつつも、判断が難しくて書けなかったことの一つが、この公文書管理機関についてである。
この問題は、下手に取り上げると、法案を全否定しなければならなくなる所でもあり、それは私の意図するところではなかったので躊躇していた。

だが、最近、公文書市民ネットの方達の意見や、消費者庁問題から、やっとどう論じればよいかが見えてきたので、それについて書いてみようと思う。

今回の公文書管理法案において、公文書管理機関は大雑把に言うと、次のように考えられている。

・公文書管理担当の司令塔  →内閣府公文書管理課
・公文書の移管先        →独立行政法人国立公文書館
・公文書管理の監視機関    →公文書管理委員会(内閣府の審議会)


これは、「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告よりも明らかに後退した案である。

まず「司令塔」について
最終報告では、司令塔の機能として次のものが挙げられていた。

「公文書管理担当機関は、行政機関のみならず、立法府や司法府からの文書の移管も視野に入れた我が国全体の公文書管理に関するいわば「司令塔」として、①公文書管理に関する法令等の企画・立案・調整、②作成・保存・移管等の公文書管理に関する基準の策定・改定、③文書の延長・移管・廃棄への関与、④文書管理の実施状況の把握と不適切な実態の是正、⑤移管を受けた文書の保存・利用、⑥専門的知見を活用した各府省・地方公共団体等の支援、⑦国内・国外の関係機関との連携、⑧人材育成・研修・研究等の幅広く高度な機能を担うべきである。」(P20)

要するに、かなり多くの業務を行わなければならないということがわかってもらえればよい。例えば③の文書の延長・移管・廃棄への関与というだけでも、膨大な仕事量であることがわかる。
このことから、この「司令塔」はかなり大規模なものが考えられていたはずである。
しかし、実際には内閣府の「課」止まりである。おそらく職員は20~30人ぐらいではないか(正確な情報を求む)。

次の、国立公文書館については第2回で書くので飛ばします。

そして、監視機関である「公文書管理委員会」も、非常に権限が弱い。
ここからの説明はなかなかわかりにくいのだが、重要なので我慢して読んでほしい。

そもそも、国家が行政機関を作るときには、「国家行政組織法」という法律に基づいて設置がなされる。
その際に、第3条に基づいて作られた機関(いわゆる「3条委員会」)と、第8条に基づいて作られた機関とがある。第8条はさらに1~3まで分かれるのだが、とりあえず1が今回に関係があるので、そこだけ取り上げる。

第3条に基づいて作られた機関は、具体的には、公安調査庁、林野庁、国税庁、気象庁、海上保安庁、中央労働委員会などが挙げられる。おおよその「庁」がつくものは、ここに属すると考えて良い。「外局」とも呼ばれる。
これに対し、第8条1項によって作られる機関は「審議会等」と分類されるものであり、各省庁の下に作られる諮問機関のようなものである。具体的には、中央教育審議会、法制審議会などが挙げられる。

なお、内閣府の元に置かれた庁などは、別の法律(内閣府設置法)で定められており、前者の「外局」は設置法の第49条によって置かれており、後者の「審議会等」が第37条3項などで置かれている。
前者の代表例は公正取引委員会、後者は原子力安全委員会となる。

ちなみに、今回国会で議論になっていた消費者庁は内閣府の「外局」にあたる。
与野党で揉めていた監視機関である「消費者委員会」は、当初は消費者庁の「審議会等」にあたる位置づけだったが、妥協案として「外局」に格上げされた。つまり、消費者庁と同等の組織になるということになる。

さて、話を戻し、公文書管理委員会であるが、これは「審議会等」に分類されている。
公文書管理法案の法文だけを見ていると「内閣府に置く」(第28条)としか書かれていないのでわかりにくいのだが、法案の附則第10条に「内閣府設置法」の改正というのが書かれていて、そこでは明らかに「審議会等」の部分に併記されていることがわかる。
つまり、権威も権限も明らかに落ちるところに位置づけられていることがわかるであろう。

こうなってみると、公文書管理に関する機関は、かなり弱い立ち位置として作られていることがよくわかる。
これは、すでに以前の連載で取り上げたように、「「移管廃棄の権限」などが「行政機関の長」に残されたこと=公文書管理機関は規模が小さくてOK」という点とつながっているのである。
権限がないからこそ、小さくて構わない(もしくは小さく作るために、権限を無くしたか)という組織の作られ方をしているのである。

ではどうすれば良いか。
もちろん、アメリカのNARA(国立公文書記録管理局)のように、全ての行政機関に文書管理についての介入権限があるような強力な機関ができるのであればそれは望ましい。
だが、残念だが今の日本ではこれを作ることは非常に難しい。人材が全く足りていないからだ。
前から書いているように、アメリカのNARAの職員は約2500人、日本の国立公文書館は42人に過ぎない。文書管理を行うレコードマネージャーやアーキビストの養成も明らかに遅れている。

今現実に可能そうなのは、「公文書管理庁」を内閣府の外局として設置し、公文書管理委員会を「3条委員会」とするというところではないか。つまり、消費者庁問題と同じように考えるということである。

まずは、公文書管理の権限を各省庁から切り離して、内閣府の「公文書管理庁」に一元化する。
公文書管理庁は百人規模の大きさとする。そして、まずはじっくり人材を育成し、将来的に公文書管理庁を会計検査院のような「内閣に対し独立の地位を有する機関」として設置できるようにすればよいと思う。

アメリカですら、初めからあのような強力な公文書管理機関があったわけではない。まずは制度を定着させ、その先に理想的な制度を作るという二段階で考えた方が良いのではないかと思う。

もちろん、公文書管理庁が最初は各省庁からの出向組の寄り合いになることは間違いないであろう。そのために、各省庁の主張を庁内に持ち込んでくる可能性がある。
だからこそ、公文書管理委員会を「3条委員会」として、強力に監視できるようにしておく必要がある。

この公文書管理機関の組織をどうあるべきかという点は、この法案の全ての条項と関わってくる重要な問題である。
おそらく国会での議論でもここが大きなポイントとなるであろう。

次回は、今回の議論の積み残しである国立公文書館について述べます。→補遺第2回
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【連載】公文書管理法案を読む(第8回・終)―法案の総合評価 [【連載】公文書管理法案を読む]

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公文書管理法案を読むの最終回です。何だかえらく長い連載になってしまいました。
今回は法案の総合的な評価をして、締めたいと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第8回 法案の総合評価

まず率直に言って、この公文書管理法案であるが、このままの条文であれば非常にまずい法律になるだろう。
特に、第4回で指摘した移管・廃棄権限を各省庁が持ったという点は、今後に大きな禍根を残すと思われる。

でも、以前からの持論であるが、「そんな法案ならできない方がましだ」というのは絶対にダメである。

公文書管理法は、どんな形であれ「無いよりもあった方が良い」のである。
無ければ現状のひどい状況が今後も続くことになる。これは最悪の選択肢である。
なので、私は問題点を厳しく追及しながらも、それをどのように変えればよいかということと常にセットで提案して記事を書いてきたつもりである。

私としては、民主党をはじめとする野党が、修正案を提出してくれることを望みたい。
また、おそらく自民党の中でも、この法案ではまだ甘いと考えている人はいるはずである。
そういった人達と手を携えて、超党派で修正に取り組んでほしい。

絶対にやっては困るのは、55年体制下の日本社会党のように、現実性のない理想主義に固められた対案を提出して、玉砕して満足することである。
それは事実上、現法案を無条件で承認することにつながってしまう。
この問題は政争から離れて、きちんと議論をしてほしい。

ちなみに、私の中の改正の優先順位は、第4回で指摘した移管・廃棄権限の部分が最優先。
最低限、ここが変わるだけで法案のあり方が変わる。

それにプラスして、第3回で指摘した公文書の定義の拡大が行われると望ましい。
残りの指摘した部分は、場合によっては運用でどうにかなる可能性がある。
ただ、上記の二点は法案自体の改正がないと難しい。ここだけは何とかしてほしいと思う。

とにかく、やっと福田元首相の力でここまで持ってきたのだ。何とか今国会で成立させてほしい。

ただ、麻生がどこまでもつんか・・・ 予算後解散とか言われとるしなあ・・・ 小沢も肝心なときに脇が甘い・・・
解散になると廃案だからなあ・・・。そうすると、下手をすると一からやり直しになりかねん・・・。
それだけは勘弁してほしいなあ・・・

以上で連載はとりあえず終わります。また何かあれば記事は書いていきます。長々とお読みいただきありがとうございました。
なお、私の逐条解釈のPDFデータはホームページの方にアップしてあります。御参考になれば幸いです。

補遺第1回へと続く

補足
この公文書管理法については、最近出た『ジュリスト』1373号(2009年3月1日)が重厚な特集を組んでいます。
特に、高山正也国立公文書館理事の「国立公文書館の現状と有識者会議最終報告に基づく改革に要する課題」はなかなか骨太で読み応えがあった。興味がある方は是非お手にとって下さい。
『ジュリスト』は公共図書館にも入っていることが多いので手に入りやすいかと思います。


Jurist (ジュリスト) 2009年 3/1号 [雑誌]

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2009/02/25
  • メディア: 雑誌



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【連載】公文書管理法案を読む(第7回)―問題点(5) 入らなかった論点 [【連載】公文書管理法案を読む]

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公文書管理法案を読むの第7回です。
公文書管理法案の問題点についての続きです。今回は問題点の指摘というよりも、法文に入らなかったけれども、重要だと考えられる点について指摘しておこうと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第7回 問題点(5) 入らなかった論点

・請求されてから開示されるまでの期間の限定

これは、有識者会議でも論じられていなかったのでしょうがないのだが、国立公文書館等において閲覧者が不開示部分のある文書の開示請求を行ったとき、その開示期限を設定するべきだと思う。

これについては、以前に指摘したこともあるのだが、国立公文書館や宮内庁書陵部では、移管された文書を管理簿にリストアップするのを優先している。
そのため、不開示部分が含まれている可能性のある文書(国立公文書館では「要審査」と分類されているもの)は、開示請求があった時点で不開示審査を行うことにしている。

このシステム自体は効率がよいので全く問題ない。移管されてから一度も利用されない文書もあるだろうから、時間の無駄も省けるだろう。
また、「時の経過」によって開示に転じる部分も出てくるわけだから、請求があった時点でチェックをすることは無駄な不開示を無くすこともできる。

だが、この審査がえらく時間がかかるのだ。場合によっては数ヶ月単位で待たされる(書陵部では数年単位で待たされているものもある)。
もちろん、審査の慎重さは求められるのだろうが、請求があったらせめて30日以内ぐらいでは見せてほしいと利用者の側からは思う。

これについては、法案に入れると言うよりも、国立公文書館等が利用規則を法に合わせて改訂するときに、是非とも自主的に入れて欲しいと強く願っている。

・施行日とそれまでの「間」

法案の附則の第1条に、この法律は公布後2年を超えない範囲で施行と書かれている。
想定としては、今国会で成立させて、平成23年(2011年)度から始めるということらしい。

この施行日については異存はない。国立公文書館の体制を整える必要もあるだろうし、多少時間は必要だろう。
問題は、その間に、各省庁にある文書が大量に破棄されないかという危惧である。

情報公開法が公布されてから施行までの1年数ヶ月の間に、大量の文書廃棄が各省庁で行われたことはよく知られている。→情報公開クリアリングハウスの調査を参照
今回は、有識者会議が作られたときに、当時の上川陽子公文書管理担当大臣が各省庁に文書廃棄を一時停止するように要望を出した。
どこまで守られているかはわからないが、この要望の内容にもっと具体的な法的裏付けを付ける必要があるのではないか。

もし、2年も文書を溜めていたら、置き場所が無くなって困ると言われたら、その時は「中間書庫」(保管期限切れ前だけども、利用していない文書を移しておく書庫)の利用を勧めればよいのだ。
せっかく、実験を行っているのだから、法が施行されるまでに中間書庫の運営実績を積めばよい。→実験の話についてはこれを参照
とにかく、あの情報公開法前の駆け込み廃棄のような事態だけは避けなければならない。

・罰則規定

この公文書管理法には、違反した際の罰則規定がない。
おそらく、これまでと同様に国家公務員法の規程を使うということになるのだろう。→Wikipedia「懲戒処分」参照

ただ、例えば、第6回で紹介した厚労省のC型肝炎問題での処分は「厳重注意」だけだったように、公文書管理の違反行為に対しては厳罰に処されたのを見たことがない。
防衛省の補給艦「とわだ」の航海日誌の廃棄問題でも、処分するとは言われていたが、減俸にすらなったという話も聞かないから、おそらくたいした処分はされなかったのだろう。
懲戒処分を行うのは任命権者である自省庁の大臣であるのだから、処分が甘くなるのも当然であると思う。

そのために、是非とも公文書管理法には、独自の罰則規定の条文を加えた方が良いと思う。
私案としては、「悪質」「故意」の場合には公文書管理委員会で審査を行って処分できるということにすべきである。
国家公務員法との関係などをどのように調整するのかは法律の専門家でないのでわからないが、十分可能なのではないかと思っている。

罰則規定を入れるだけで、公文書管理をしっかりやらないと罰せられる可能性があるという緊張感を持たせることができ、公務員の意識改革につながる可能性がある。
罰則の適用を行うケースに厳しい制限がつけられても構わない。要するに「入れておく」こと自体に意味があると思う。
官僚達がもっとも嫌がる部分だと思うが、そもそも「公務員の意識変革」を目指すための公文書制度改革なのだから、この規程はあったほうが効果が上がると思われる。

・専門家の育成

この公文書管理法のシステムの中核を担う人材を、早急に大量育成する必要がある。
具体的には、「レコードマネージャ」「アーキビスト」である。
簡単に分類すると、前者は、現役の文書の作成や管理を行う。
後者は、非現役の文書の保存や公開を行う。
いずれにしろ、文書を専門に取り扱うことができる人のことである。

このためには、例えば国家資格を作るとか、大学院を作って育成プログラムを組むとかなどが考えられる。
現在は学習院大学大学院人文科学研究科のアーカイブズ学専攻が、大学院として初めて専門家の養成に携わっている。
また、日本のアーカイブズ学の総本山とも言える、国文学研究資料館史料館では、毎年アーカイブズカレッジという季節限定のアーキビスト養成講座を設けている。
国立公文書館でも、各地の公文書館員の研修を行っており、こういった機関が連携しながら、大量の専門家の育成に着手する必要があるだろう。

そして、何よりも必要なのは、「お金」である。
是非とも、この専門家の育成に国家が長期的に金銭的な支援を行うような仕組みを作ってほしいと思う。
この専門家の養成に勤めるというようなことが附則に入れられるのであれば、それが法案に入ると、政策の推進力を増すと思われる。

以上で問題点の指摘は終わります。次回最終回は、公文書管理法案についての総合評価を行いたいと思います。→第8回
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【連載】公文書管理法案を読む(第6回)―問題点(4) ファイル管理簿問題 [【連載】公文書管理法案を読む]

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民主党の逢坂誠二議員がメルマガ(880号、3月10日)で紹介してくださいました。またmixiでもどなたか紹介してくださったようです(アカウントがないのでわかりませんが)。どうもありがとうございます。

公文書管理法案を読むの第6回です。
公文書管理法案の問題点についての続きです。細かい話を並べようと思ったのですが、ファイル管理簿問題だけで長くなってしまったので、とりあえずそれだけを書きます。何だかえらく長期連載化してきました・・・。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第6回 ファイル管理簿問題

有識者会議の第5回の際に、各省庁の行政文書ファイル管理簿の状況についての報告があった。
「行政文書ファイル管理簿」とは、情報公開法が制定されるときに、省内にある行政文書のタイトルを公開させるためにつくられたものである。
詳しくは私の解説をみてほしいのだが、以前から、このファイル管理簿の杜撰さは問題になっていた。→この記事も

一度、興味がある人は検索してみれば良いと思うのだが、とにかくタイトルの付け方は杜撰だし、抽象的で、これで自分の探している行政文書を探し出せる人はすごいと思う。→検索システム

例えば、厚生労働省が、C型肝炎の調査を2002年に行ったときに判明した名簿を放置して2007年10月に発覚して問題になった話がある。→Wikipedia「薬害肝炎」参照
この2002年の報告書「フィブリノゲン製剤によるC型肝炎ウイルス感染に関する調査報告書」で厚生労働省は次のようなことを書いている。

はじめに
 〔中略〕
(2)調査の方法
 〔中略〕
 (3) 文書調査

○医薬局及び関係部局等(健康局、国立病院部、雇用均等・児童家庭局、感染研)が保管している文書のうち、以下のものについて収集・精査を行った。
1)「フィブリノゲン製剤」の用語が含まれる医薬局の文書(平成10年度分まで)
2)フィブリノゲン製剤の安全性に関する記述が含まれる関係部局等の文書(昭和52年~62年度分)
○なお、いわゆる血液凝固第VIII因子製剤によるHIV感染問題に関連して東京地方検察庁に押収された旧薬務局等の文書(以下「地検資料」という。)についても、上記の基準に照らし調査の対象とし、同庁と協議の上、本報告書の公表に併せて公表した。


つまり、厚労省は、「フィブリノゲン製剤」の用語が含まれる文書を調べたと言っている。
さて、ではファイル管理簿で「フィブリノゲン」という用語を検索してみよう。

検索結果・・・5件
1. 2009年04月01日  医薬食品局血液対策課
平成19年11月7日付け事務連絡に対する都道府県等回答(2008年度)
2. 2009年04月01日  医薬食品局血液対策課
平成19年11月7日付け文書に対する7,000医療機関回答(2008年度)
3. 2008年04月01日 医薬食品局血液対策課
フィブリノゲン製剤等関係事務連絡(2007年度)
4. 2007年04月01日 医薬食品局安全対策課
【薬安36】乾燥人フィブリノゲン製剤再評価追加臨床試験資料関係(平成6年9月14日)(1996年度)
5. 1997年04月01日  医薬食品局安全対策課
【薬安36】乾燥人フィブリノゲン製剤再評価追加臨床試験資料関係(平成6年9月14日)(1996年度)

まず、4は5を延長手続きしただけなので計算から外して良い。
1から3までは、まさにその隠していたことが発覚した後に作られた文書である。
はてさて、一体厚労省は、医薬局の何を調べたのだろうか?全部文書をひっくり返して、用語を必死に探したのだろうか。
ちなみに、「C型肝炎」で調べると52件出てくるが、うち35件は高知労働局のC型肝炎調査。10件は特許申請書類。残りの7件は実質3件で4件が延長手続き分。

これがどういうことかわかるだろうか。
ファイル管理簿だけ見ると、「フィブリノゲン」というファイル名はほぼ存在していなかったと言える。
でも調査はできていた。(内部資料を使わずに報告書は作ってないだろう。)

ということは、次のようなことが考えられないだろうか。

厚生労働省には「フィブリノゲン」という名前の付いたファイルは「存在する」
だけど、「フィブリノゲン」という名の付いた「ファイル管理簿上のファイル」が「存在しない」

ただし、もちろん「フィブリノゲン」という名前のファイルがなかった可能性も十分にある。
その場合、行政文書ファイル管理簿はこの調査に何の役にも立たなかったのだけは確実である。

ファイル管理簿に記載されている名前がファイル名と一致していない。だから放置されたり、間違って廃棄されたりということが起きているのではあるまいか。
そして、そのために、内部の人ですら使い物にならない管理簿を作ってしまったのではないのか。

さて、今回の公文書管理法案ではファイル管理簿について次のような条文がある。

(行政文書ファイル管理簿)
第七条 行政機関の長は、行政文書ファイル等の管理を適切に行うため、政令で定めるところにより、行政文書ファイル等の分類、名称、保存期間、保存期間の満了する日、保存期間が満了したときの措置及び保存場所その他の必要な事項(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第五条に規定する不開示情報に該当するものを除く。)を帳簿(以下「行政文書ファイル管理簿」という。)に記載しなければならない。ただし、政令で定める期間未満の保存期間が設定された行政文書ファイル等については、この限りでない。


つまり、ファイル管理簿を作ることは義務化されている。これは情報公開法でもすでにあったので問題はない。
ただ、問題は「政令で定めるところにより」である。

残念ながら、官僚達には、このファイル管理簿の不備が重要な問題であると全く認識されていない。
このようなめちゃめちゃなファイル管理簿が作られた原因は、情報公開法施行前の2000年2月25日に行われた各省庁事務連絡会議申合せの「行政文書の管理方策に関するガイドラインについて」の次の文章にある。

第1 行政文書の分類
(2) 「行政文書ファイル」とは、施行令第13条第2項第1号で定義されているとおり、「能率的な事務又は事業の処理及び行政文書の適切な保存の目的を達成するためにまとめられた、相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間が1年以上のものであって、当該保存期間を同じくすることが適当であるものに限る。)の集合物」であり、小分類の下で保存及び廃棄について同じ取扱いをすることが適当であるものである。
 「行政文書ファイル」は、いわゆる「簿冊」と同義ではなく、複数の簿冊が1ファイルである場合、一つの簿冊の中に複数のファイルが存在する場合等種々の態様が想定されるが、的確な管理ができるよう各行政機関において適切に設定される必要がある。


前半の部分の行政文書の定義は、それ単体では実は問題はない。
問題は後半の「行政文書ファイル」が「簿冊」と同義ではないという点にあるのだ。
これによって、抽象的なファイル名を付けて、「関係のある」という名目で大量の簿冊を入れてしまうということが可能になってしまったのである。つまり、後半の部分を基礎として、前半部分の「関連」という仕組みを悪用したのである。

普通、目録というものは、ファイルに付いている名前と目録に載っている名前は一致するのが当たり前である。そうでないと資料が探せるわけがない。
ところが、行政ファイル管理簿を作るときに、その規制を外してしまったのである。
そのために、上記のような事態が起きてしまったのである。

そして、この「申合せ」は未だに使用されている。
2007年12月から開かれている「行政文書・公文書等の管理・保存に関する関係省庁連絡会議」の第1回の会議において、この「申合せ」は参考資料としてそのまま配布されている。

また、今回の公文書管理法案の第5条第2項には次のような文章が入っている。

2 行政機関の長は、能率的な事務又は事業の処理及び行政文書の適切な保存に資するよう、単独で管理することが適当であると認める行政文書を除き、適時に、相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間を同じくすることが適当であるものに限る。)を一の集合物(以下「行政文書ファイル」という。)にまとめなければならない。

つまり、「申合せ」の前半の部分がほぼそのまま文章として入っていることがわかる。
これでファイル管理簿の名前の付け方に規制がかからないと、情報公開法の時と全く同じ事がおそらく起きるだろう。

私は第5条第2項に「管理簿記載のファイル名と簿冊名を一致させる」ということを入れるべきだと思う。
ただこの点については、法律の文章に入れるのはむずかしいかもしれない。ファイル名自体が不開示情報である可能性もあるからだ。
だからといって、このまま官僚任せに政令を作らせたら、同じ事が起きてしまう。そう考えるとやはり法文に入れるという主張をする方が良いように思っている。

第6回は終わり。長くなってしまったので、細かい話は次回に持ち越します。→第7回

追記(4/23)
たまたま、上記の厚生労働省の「フィブリノゲン資料問題及びその背景に関する調査プロジェクトチーム」の報告書をネットで見つけた。
その24~25頁に次のようなことが書かれていた。

・課室毎に書棚を確認したが、例えば図書館のように、「どの書棚にどの書類がある」と系統立てて整理されていないため、文書ファイルが実際どこにあるかは、一つ一つ書棚を探さないと分からない状態となっており、 各文書ファイルの重要度や優先度も分からない状態であった。

・保管されている個々の文書ファイルについて確認すると、文書ファイルの背表紙に件名が記載されていなかったり、通路から文書ファイルの背表紙が見えない状態で置かれたものも多々あり、通路から一見して文書ファイルの内容が判別できるような状況ではないところがあった。なお、これは、そもそも書棚の入れるスペースがB5版に合わせた高さのままとなっているため、そこにA4版の文書ファイルが立てて入らないため、横にして詰めているものと思われた。

・また、スペース不足のためか、書棚の隙間に斜めに突め込まれた文書ファイルや、文書がまとめて段ボール箱に入れられて通路脇に置かれているものがあった

・その他、「ハイキ」と書かれた段ボール箱が通路脇に置かれたままとなっていたり、30年以上前の日付の書類が書棚にそのまま置かれたものがあった。加えて、殆どの文書ファイルは、背表紙などに保存年限が記載されておらず、廃棄の時期が分からなかった。

ひどすぎる。どうも想定していたよりもさらにひどかったようだ・・・。
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【連載】公文書管理法案を読む(第5回)―問題点(3) 不開示範囲の拡大 [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回はこちら
第2回はこちら
第3回はこちら
第4回はこちら

公文書管理法案を読むの第5回です。
公文書管理法案の問題点についての続きです。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第5回 不開示範囲の拡大

今回は、公文書管理法の第16条第1項の一と、それに関係する第8条第2項、第18条第3項について述べていきます。これらは、国立公文書館等での歴史文書の開示の際に「不開示」にできる情報を書いたものです。

まずは条文を。

(特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱い)
第十六条 国立公文書館等の長は、当該国立公文書館等において保存されている特定歴史公文書等について前条第四項の目録の記載に従い利用の請求があった場合には、次に掲げる場合を除き、これを利用させなければならない。
 一 当該特定歴史公文書等が行政機関の長から移管されたものであって、当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
  イ 行政機関情報公開法第五条第一号に掲げる情報
  ロ 行政機関情報公開法第五条第二号又は第六号イ若しくはホに掲げる情報
  ハ 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
  ニ 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報


まずは条文の解説を。
「特定歴史公文書等」というのは、国立公文書館等(「等」には外務省外交史料館、宮内庁書陵部などが入ると思われる)に移管された文書である。簡単に言えば、国立公文書館に保存されている公文書と考えてもらえれば良いと思う。(もちろん、国立公文書館にある江戸時代の文書などは対象外。)
この「一」では、国立公文書館にある文書でも不開示にできる場合を列記したものである。「二」から「五」もあるのだが、これは取り上げる必要がないと考えたので略。

まず「イ」にあたる部分は、個人情報。
「ロ」は前半は法人情報。後半は監査情報とか公共団体の企業活動の情報。
「ハ」は書いていないけど、情報公開法の第5条第3項にあたる部分。外交情報。
「二」も同様に、情報公開法の第5条第4項にあたる部分。公安情報。

なお、この第16条第2項では、不開示に該当するかは「時の経過を考慮」するとの一文が入ったので、国立公文書館の規則(別表)に合わせた開示が行われるものと思われる。
国立公文書館の判断で個人情報の開示不開示が決まるのは大きい。これまでは各省庁で過剰な個人情報隠しが行われていたわけであるから、この点は評価したい。

問題は「ハ」や「ニ」の「当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」という一文。
これに対応するのが、第8条第2項である。
引用します。

2 行政機関の長は、前項の規定により国立公文書館等に移管する行政文書ファイル等について、第十六条第一項第一号に掲げる場合に該当するものとして国立公文書館等において利用の制限を行うことが適切であると認める場合には、その旨の意見を付さなければならない。

原則として移管した後は公開(イ、ロを除き)で、不開示にしたい場合は「意見書」を提出しなければならなくなった。
この「原則公開」という点は評価できるのだが、問題はこの「意見書」の効力についてがどうもあいまいなのである。

引用した第16条の第1項一のハの「当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」のその「相当の理由がある」を誰がどのように判断するかが、この法律には書かれていない。
また、第2項の「時の経過」で不開示を考えるという条文にも、この「意見書」が付いている場合は、国立公文書館は「当該意見を参酌しなければならない」と書かれている。
この具体的な取扱については、政令(施行令)で決めるということになるのだろうが、どうも法文だけを読んでいると「意見書の提出=必ず不開示」というようになる可能性が高いように読めるのだ。

この条項が入った理由は、明らかに警察庁などの要請だったと思われる。
有識者会議の第9回の議事録の解説でも述べたが、中間報告が出た段階で、一番不開示規程に噛みついてきたのは警察庁であった。
警察は、「公安情報」の開示は、捜査手法等が公になると業務に支障が出るとして大きな反発をしていた。
しかし、これを無条件で認めてしまえば、「昔の捜査手法は全て現在につながる」という理由をつければ、何でもかんでも不開示にすることができてしまう。

もちろん、私も不開示に慎重にならざるを得ない情報が、外交情報や公安情報にあることは否定しない。
そして、その不開示にするべきかの判断に、元の省庁の参考意見の提出はあっても良いと思うのだ。
ただ、問題はあくまでもそれは「参考」だけに留めなければならないと思う。

元の省庁の判断では必ず不開示部分の拡大解釈が行われることは必定。
そこは、国立公文書館側が意見を聞きながら、自分の判断で不開示にするかどうかを決めるべきである。
あくまでも移管された以上、歴史的な視野を持った専門家が開示するかどうかを判断するべきである。

それと関連して、第18条第3項を引用しておく。

3 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等であって第十六条第一項第一号ハ又はニに該当するものとして第八条第二項の規定により意見を付されたものを利用させる旨の決定をする場合には、あらかじめ、当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他政令で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。

これは、意見書を聞いて不開示にした部分を、後に開示に転じるときには、元の省庁に通知して意見書を出す機会を与えなければならないという内容である。

これは、一見すると、入っていてあたりまえのように見えるだろう。時の経過によって省庁側の意見も変わる可能性があるからである。
だが、私はこの条文については、「開示する際に通知する義務」は良いとして、最後の「意見書」の部分は、「国立公文書館側が意見を聞くことができる」という文面にするべきだと思う。
つまり、開示するかどうかはあくまでも始めに提出された意見書に基づいて、国立公文書館側が「時の経過」を見て独自に判断をするということにしなければならない。あくまでも、再度意見を聞くのは、公文書館側が慎重を期したいときのみに限定すべきである。

私は、一度移管された文書については、国立公文書館側が自らの判断で開示するか不開示にするかを決めることができるようにする必要があると考えている。
あくまでも、公文書館に移管された以上、それは「歴史文書」なのである。現役ではないのだ。
その「歴史文書」には、現役の文書とは異なる判断が要求されて然るべきである。それは元の省庁では判断ができないはずなのだ。

なお、この条項が入ったのは、おそらく移管を渋る省庁に対して「保険をかけられますよ」という「配慮」のためであると思われる。
つまり、前回述べたように、移管・廃棄の権限を各省庁に持たせたままにしておいたために、移管を進めるためにこのような条項を入れざるを得なかったのだろう。
なので、この部分の改正をもし行うのであれば、前回書いた移管・廃棄の問題とセットで考えられなければならないことは強調しておきたい。

なお、私がこのように主張するのには、もう一つ大きな理由がある。
それは、外務省外交史料館と宮内庁書陵部の問題である。
この二つの省庁は、内部にある公文書館に自分の行政文書を移管できることが許されている。
よって、まず間違いなく、この二省庁は「意見書提出=即不開示」が確定することになるだろう。

これはこれで問題なのだが、その後、時の経過によって開示に転じる可能性が出たときに、内局に聞いていたらいつまでも「不開示」が続くことになるだろう。
そのため、外交史料館や書陵部が独自の判断で開示不開示を決めることが可能なようにしておくべきである。

もちろん、所詮は省庁内の一部局であることは承知である。ただ、書陵部で資料を閲覧していたりしてなんとなく感じるのは、書陵部自体はあまり不開示に積極的でないように見えるのだ。
公文書館や史料館に勤めている人達は、基本的には自分の所にある資料を使って欲しいというように考えることが多い。書陵部とてそのあたりは同じ感覚があるような気がするのだ。(もちろん限界があるだろうが。)

また、私は最終的には、書陵部と外交史料館は、国立公文書館の分館として位置づけられるべきだと考えているので、そこまで見通した上で、公文書館自体に開示不開示の判断の責任を持たせた方が良いと思う。
同じ「意見を聞く」でも「聞かなければならない」と「聞くことができる」では、全然法的な意味づけが変わってくるのだ。

よって、私は、この第16条と第18条を、国立公文書館側があくまでも判断の主体であるような文章に書き換えるべきだと考える。

これにて第5回は終わり。次回は細かい問題点を列記したいと思います。→第6回
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