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特定秘密保護法パブコメを受けて(後編) パブコメへの回答集 [2014年公文書管理問題]

2014年9月10日、第3回の情報保全諮問会議が開催され、パブリックコメントを受けて特定秘密保護法の施行令案と運用基準案の修正が行われた。
運用基準案改正の話は前編で既に述べた。

今回の諮問会議の配付資料で重要なのは、パブコメへの回答集である。

意見募集に対し寄せられた御意見の概要及び御意見に対する考え方(案)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai3/siryou2.pdf

細かいExcelの表が68頁にわたるもので、読むにも骨が折れるが、内閣官房がここまで回答集を作らなければならないところに追い込まれていたことも確かだろう。
パブコメへの回答方法にはフォーマットがあるわけではなく、中にはおざなりにしか回答しないケースもあるので。

この回答集を見ると、疑問に対してきちんと答えているケースもあるが、原則論に終始したり、ずらして答えたり、拒否したりするなど、ツッコミ所が満載である。
これ以上のツッコミ手段が一般市民からは限られているので、これを元に、疑問を国会で追及するといいのではと個人的には思う。

論点が多岐に亘るので、私の興味関心から、2つだけコメントしたい。

国民からの特定秘密解除請求の仕組み(米国に存在する)についてだが、内閣官房によれば、「情報公開法の手続きがある」から、新たに制度は不要であるという言い回しをしている(パブコメ回答3頁)。

特定秘密文書は行政文書であるので、情報公開請求の対象である。
よって請求を行うことはできるが、防衛公安関係の情報はもともと不開示なので、不服がある場合は情報公開・個人情報保護審査会に異議を申し立てることができる。

審査会は、特定秘密保護法の規定によって、実際にその文書自体を見て可否を判断できる(インカメラ審査)ので、「調査審議の過程で、特定秘密の指定の適否についてもチェックされ、特定秘密に係る部分を開示することとなれば、指定を解除する」とのことである。
よって「御指摘のMDR〔引用者注:米国の強制的機密指定解除審査請求〕による解除審査請求と類似の機能を情報公開法の開示請求が担うことができると考えます」と主張されている。

この説明はまやかしである。
米国の制度とは似て非なるものである。

まず、審査会が判断するのは、「情報公開法に基づいて」開示するか不開示にするかである。
よって、特定秘密の指定の是非を問題にする機関ではない。

また、そもそもとして審査会は「決定」する機関ではない。
あくまで「答申」を出すだけで、その答申に従うかは各機関に委ねられる。
開示せよとの答申が出ても、それを行政機関側は拒否できるのだ。

つまり、ここで内閣官房が言っているのは、情報公開法上「公開すべき」と判断した情報(「特定秘密に係る部分を開示することとなれば」)は、特定秘密であることはおかしいと言っているにすぎない。

そんなことは当たり前だ。
国民に即座に開示できるような文書を、特定秘密に指定していることがおかしいのだから。

そもそも情報公開法上の「不開示」基準と、特定秘密保護法上の特定秘密「指定」基準は異なる
特定秘密に指定できなくても、「不開示」になる情報など腐るほどある。
それこそ防衛公安情報は、情報公開法上、合法的に不開示にできる。特定秘密で無い文書ですらも。

ということは、防衛公安情報を審査会で争ったとしても、「不開示」は覆らない。
審査会が、「不開示」ではあるが「特定秘密指定はおかしい」という答申を行うことは不可能である(そのような機能は法的に存在しない)。
よって、審査会が特定秘密の適否についてチェックするなどということは、実質的には機能することはない。

「特定秘密も情報公開法で請求できるので、そこでチェックできるから大丈夫」と、諮問会議のある委員がテレビで話していたのを見たことがあるが、情報公開法の防衛公安情報の不開示基準の広さを無視した論であって、実態からかけはなれている。

本当にこの制度を機能させようとするのであれば、情報公開法を改正して、不開示の基準を狭める努力がなされる必要がある。
それとセットでないと意味が無い。


もう一つ気になったのは、特定秘密であった文書の廃棄について。
特定秘密に指定された文書が、いずれは解除され、公開されることは、検証のためには必要不可欠な制度である。

ただし、特定秘密をすべて残すかと言われると、兵器の部品を買った領収書のたぐいまですべて残せという話になり、そこまでする必要があるのかと言われると微妙な所でもある。
もちろんそれも含めて残せという主張はあり得るとは思うが、保存費用やスペースの問題からしても、あまり現実的とは思えない。
ただ、当然ではあるが、他の一般の文書よりは、永久に残す必要のある文書は多いはずである。

今回のパブコメへの回答を見ていると、「特定秘密である情報を記録する行政文書についても、公文書管理法に従って国立公文書館等への移管が行われる」(パブコメ回答7頁38)といったように、公文書管理法に丸投げするという書かれ方がされている。

公文書管理法に基づくならば、保存期間が満了した際に、各行政機関が国立公文書館等に移管して永久保存するか、廃棄するかを決定し、廃棄をする場合は内閣総理大臣の承認が必要(内閣府公文書管理課と国立公文書館がリストをチェック)となっている。

なお特定秘密保護法では、特例で、30年以上特定秘密に指定されていたものは、保存期間満了後にすべて国立公文書館等へ移管される(運用基準でもそこは明記)。
25年を超えるものは、運用基準案で「慎重に判断」すると書かれており、実質的には移管されるだろう。

そうすると、25年以下の文書は、「特別扱いせず、他の文書と同様の基準で判断をする」というのが内閣官房の方針のようである。
もちろん、特定秘密であった以上「重要」ではあるはずだが、国立公文書館等に移管して永久保存か廃棄を決める第一次的な判断をするのは各行政機関であるから、何食わぬ顔で他に紛れ込ませて廃棄する可能性はあるだろう。

これを防ぐためには、移管か廃棄するかを判断する際に使っていると思われる、公文書管理法上の行政文書ファイル管理簿に、当該文書が「特定秘密であった」との表示がなされる必要がある。
そうしておけば、内閣府公文書管理課や国立公文書館などが廃棄のチェックをする際に、厳重に審査できることになるだろう。
ただ、書いてきたような内容のパブコメに対して、内閣官房は回答をスルーしているため(パブコメ回答39頁38など)、そういったことをしたくない(つまり紛れ込ませて廃棄する手段は確保したい)という本音が透けて見えなくもない。

特定秘密であった時のチェック機能については、それなりに配慮が示されるようになってきたと思うが、特定秘密を外れた後の処置については、相当に不備が多いように思える。


さて、パブコメを振り返って考えたいのは、パブコメは果たして意味があったのかということだ。
結論から言うと、意味はあったとは思う。

総数は23,820通である。
法律が国会を通って1年近く経つのにこれだけ集まったのだから、色々な人々が監視をしているということをアピールできたので、十分なプレッシャーにはなっただろう。

法律はできたら終わりということではなく、執行のされ方が問題である。
常に監視されているというプレッシャーをかけ続けることが、法律の濫用を妨げることに繋がるのだ。

パブコメの意見を受けて、内容が大幅に修正される見込みは、募集の時期から考えてほぼありえなかった。
公布から施行まで1年というのは法律で決まっている以上、残り3ヵ月の段階で大幅な修正を加えることは不可能だったろう。

もしパブコメを官僚の側が本当に活かそうとするのであれば、もっと前の叩き台の段階を提示してパブコメを求めるべきである。
昨年の特定秘密保護法案の時は、まさしく叩き台を出してパブコメを募集したわけで、そういったことは制度上可能なはずである。
これは、パブコメをやる側の意識の問題でいかようにもなるのだ。

パブコメを真に意味のあるものにするのであれば、もう少しやり方を考える必要があるのでは無いかと思う。

今回の諮問会議で運用基準は固まり、あとは各行政機関の特定秘密の管理規則の策定がなされた上で施行されることになるだろう。

今後も分析は続けていきたいと考えている。
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