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特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
今回が3回目。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03

今回は運用基準案についての概要を。

「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072402&Mode=0

特定秘密保護法の運用基準は、法第18条第2項において、有識者会議である情報保全諮問会議で審議され、最終的には閣議決定が必要とされている。
この運用基準に基づいて、各行政機関のそれぞれの規程が決まることになる。

つまり、この運用基準に書かれていることが、特定秘密保護法が施行されたのちに、そのまま行われることになる。
よって、この基準がものすごく重要な意味を持つ。

今回はザックリと注目すべき点を説明したい。
特に重要な部分の解説は次回以降で。

運用基準案はこちら
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115916
特定秘密保護法の本文はこちら
http://law.e-gov.go.jp/announce/H25HO108.html

運用基準案の文自体も、施行令案ほど読みにくいものでもないので、目を通していただきたい(特に適性評価に関わる可能性のある医師の方は)。

目次を見てみると

Ⅰ 基本的な考え方
Ⅱ 特定秘密の指定等
Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等
Ⅳ 適性評価の実施
Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等
Ⅵ 本運用基準の見直し
【別添様式】


となっている。

Ⅰ 基本的な考え方(1~3頁)

ここでは、拡張解釈の禁止や基本的人権や報道の自由尊重、公文書管理法や情報公開法の適正な運用などが掲げられている。
要するに、特定秘密保護法案の審議の中でもっとも問題視された拡大解釈への戒めが書かれている。

この部分は「書いてあることに意味がある」というもの。もし何か問題があった時に、ここを根拠に反論ができる。
もっと良い文面があるかもしれないが、ここの改善に労力をかけるのはあまり生産的では無いかもしれない。
そもそもの法律自体の問題が大きいので・・・

Ⅱ 特定秘密の指定等(3~11頁)

まず、第3条第1項にある「特定秘密の指定方法」について細かく解説している。
特定秘密に指定するためには、「別表該当性」「非公知性」「特段の秘匿の必要性」の3つが必要である。

「別表該当性」は、法の最後についている別表に列挙されている情報しか特定秘密にできない。
そのため、管理簿にどれに当てはまっているのかを書かなければならない。

この運用基準案では、法律にあった23の項目を55項目まで細分化している。
内容を見てみると、確かに細かくなった部分があることは否定しないが、結局曖昧な部分は残っている。
特に特定有害活動(スパイ活動)やテロリズムにあたる第3号と第4号は、ただ単に元の文章を別の書き方をしているだけに見えるものが散見される。

もちろん厳密に書ける限りは書いた方が良いが、残念ではあるが未来が予知できない以上、幅を持たせて書く部分が残ってしまうのはやむを得ない部分もある。
だからこそ、監視機関の質が問われるわけだが・・・

「非公知性」とは、不特定多数の人が知った情報は、特定秘密にできないということ。
外国政府から公表された情報は「公知」とみなすと書かれているので、米国との「密約」が先方で公表されている場合は「特定秘密」にはならない。
ただ、情報公開法の不開示規定を使って「公表しない」かもしれないが。

「特段の秘匿の必要性」は、漏えいが安全保障に関わる等に限定するという書き方。
ここも結局は別表と同様の話で、官僚側の恣意が働く余地は何を書いても残ってしまうだろう。

他には、指定の手続きの仕方や有効期間の設定などについて書かれている。
管理簿にきちんと書くとか、特定秘密とそれ以外の情報をできる限り分けるなどが書かれている。

原発の情報隠しについてずいぶん言われたからか、次のことが書かれている。

特定秘密に指定しようとする情報が、災害時の住民の避難等国民の生命及び身体を保護する観点からの公表の必要性、外国の政府等との交渉の終了その他の一定の条件が生じた場合に指定を解除すべき情報である場合には、当該条件を指定の理由の中で明らかにするものとする(10頁)

有効期間の設定については、プロジェクトに関わるものならその期限とか外国政府の政策に関するなら指導者の任期とか、むやみに長期間指定しようとしないということが書かれている。

Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等(11~14頁)

有効期限が来た時の対応について書かれている。
むやみに延長されることが懸念されていたので、色々と配慮は見られる。

30年を超えて特定秘密にする情報は60年以上でも良いとされている事項(第4条第4項)に基本的に限定するとも書かれている。
また、いくつか情報の例を挙げて、これを延長することは「慎重に判断」(あまり望ましくない)と書かれている。

ア 見積り又は計画のうち、対象期間が定められているもの
 当該対象期間が満了したとき
イ 情報収集活動の方法又は能力
 これらのものを活用しなくなったとき
ウ 暗号
 当該暗号を使用しなくなったとき
エ 防衛の用に供する物、通信網若しくは通信の方法又は施設
 これらのものを使用しなくなったとき
オ 外国の政府等との交渉が困難となるおそれのある情報
 当該交渉が終了したとき


ただ、イなどはおそらく「活用しなくなる」とは警察は言わないだろうとは思うけど。
捜査手法などは、「すべて過去の蓄積から現在の手法が生まれている」と言えばどうとでもなるだろうし。

満了後の措置については、30年以上特定秘密だと国立公文書館等に移管することは明記され、25年を超える場合は廃棄するかは「慎重に判断」をと書かれている。

この25という数字の根拠がまったくもって不明。
なぜこれを10年にしなかったのか理解に苦しむ。

行政文書の保存年限は30,10,5,3,1年という区切り方をしており、各行政機関の文書管理規程を見ていると、10年以上の文書の多くは国立公文書館等へ移管対象となっている。
特定秘密を10年かけるということは、その元になっている文書も10年保存以上の指定をされている可能性は高いわけであり、少なくとも廃棄するかを「慎重に判断」という文言を使うのであれば、10年という数字が妥当な線だろう。
25という数字を出して配慮しているように見せたのかもしれないが、正直、意図が不徹底な規定である。

Ⅳ 適性評価の実施(14~27頁、別添様式(35~91頁)も)

運用基準案で最も量が多い部分。
最後に付いている別添様式に、その具体的な書類の様式が入っている。
適性評価を受ける可能性のある人は、むしろその「別添様式」を見た方がイメージはつかみやすいと思う。

まず、適性評価の際に、思想信条や適法な政治活動、労組での活動について調査をしてはならないということが書かれている。
適性評価はすべて「本人の同意=自発的に情報を提供しているから思想信条の自由は侵害していない」という構造になっている。
「同意が取れていれば何をしてもいいのか」という問題は、以前に記事で書いたことがある。

適性評価と医療への影響(特定秘密保護法)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-13

適性評価のやり方は、受けさせたい人の名簿を上司が作る→本人に文書で告知→本人が同意書に署名→本人が質問票記入・本人以外(上司・友人、警察・病院など)への質問調査→OKかどうか決定、という流れ。
もしNoだった場合、苦情の申立ては可能だが、行政機関内での申立てのみなので簡単ではないと思われる。

適性評価で収集した情報は10年保存、最初から評価に同意しなかった場合は3年保存で「廃棄等」と言っているので、廃棄処分するということだろう。
これは個人情報の塊なので、残すというわけにも行かないだろうとは思う。ただこの年数で良いのかというのは議論があっても良いかも。

気になるのは、民間業者に特定秘密を扱わせる際に、契約前に名簿を作成させること。適性評価を行うのは契約後だが。
おそらく、特定秘密を取り扱える人がどれだけいるのかも、契約する際に考慮するということなんだろう。
筋は通っていると言えなくもないが、もし契約に考慮するなら、名簿の段階でこっそり裏で調査しそうでもあり、果たして「契約後に調査します」が徹底されるかは疑問。

巻末の「別添様式」で注目は「別添5」の「質問票(適性評価)」だろう(49~75頁)。
とにかく細かいのが特徴。内容を見ると「踏み絵だな」という印象。

例えば、特定有害活動を聞く部分で「こういった活動を支援したことがありますか」という質問項目がある。
「はい」を選ぶ人はどう見てもいるわけないが、ここに「いいえ」と書かせておいて、あとで警察が調査してなんらかの活動に過去に関わっていたことが発覚した場合、調査書にウソを書いたということで何らかの不利が働く可能性が高い。
(質問票にウソを書いた場合の対処については、運用基準案には記載されていない。ただ、同意書に「正確かつ誠実に答え」との文があり、それに署名した上で調査書を書いている以上、なんらかの不利な対応をされる可能性は十分にありうるだろう。)

Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等(27~34頁)

適正な運用のための監察機関や内部通報者保護についての規程。
大きな問題なので、別の記事を立てて詳しく分析したい。ここが今回の運用基準案の一番の論点。

Ⅵ 本運用基準の見直し(34頁)

何かあれば見直すという一文が入っている。定型文。


全体を通して思うのは、とにかく記述が細かい。
政府の側からすれば「誤解を解く」という意味合いがある以上、かなり具体的に記述したということは言えるだろう。
その点はまだ不十分ではあるが、一定の評価はしても良いと思う。

ただ、残念ではあるが、元々の法律の不備や首相の不十分な答弁に縛られていることもあり、誠意をいくら尽くそうとしても、所詮は限界がある。
特に、監視機関や内部通報者保護の問題は、法律にはない部分であるので、もっと強力なものを作れるはずだが、首相のダメな答弁に縛られて中途半端なものを作ってしまっている。
もちろんその答弁から逸脱するのは理論上おかしいわけであり、作った時の進め方がいかにまずかったかということに尽きる。

この運用基準が「本当に守られる」のであれば、それなりの抑止力にはなるはず。
だが、適正な運用を担保する監視機関や内部通報者保護が不十分である以上、いくら「俺達を信用してくれ!」とか言われてもねえという感じである。

次回から個別の部分を論じていくが、管理簿、監視機関、内部通報者保護の3本ぐらいにわける予定である。
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