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特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
前回の記事でその募集の概要について説明した。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28

今回から募集内容について解説をしていきたい。
まずは、特定秘密保護法施行令案から。

①「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0

施行令とは法律を動かすための細則のことである。
法律は国会を通さなければ変えることができないので、変わる可能性のある細則部分は、法律に基づいた政令に基づいて定められることになっている。
これは、特定秘密保護法にかかわらず、多くの法律で行われている。

今回のパブコメ募集では、この施行令案が対象となっている。

私注を付けたので、これを参考にしていただきたい。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_order.pdf
(法学者ではないので読み間違えがあるかもしれません。その際は御指摘いただければと思います。)

法律を曖昧にしておいて施行令に重要なことを一杯書き込むことは、官僚によくあるテクニックではあるのだが、さすがにあれだけ問題になった法律であったこともあり、多くの部分はそれほど違和感はない。

例えば、特定秘密を満了・解除された際に、それぞれの文書の「特定秘密」の表示を消すだけでなく、「満了」や「解除」の表示をすることになっている。
その文書が特定秘密であったことがわからないようにはしないということだ。
当たり前といえば当たり前のことだが、こういったことすらごまかそうとしてきてもおかしくはなかったので・・・

内閣官房が作った説明資料によれば、売りは「指定を行う行政機関の長の限定」ということになるだろうか。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115912

施行令の第3条によれば、特定秘密の「指定」をできない機関が列挙されている。
ここに列挙されていない機関は残り19。

国家安全保障会議、内閣官房、内閣府、国家公安委員会、金融庁、総務省、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、外務省、財務省、厚生労働省、経済産業省、資源エネルギー庁、海上保安庁、原子力規制委員会、防衛省、警察庁。

ざっくりと分類してみると

総合・・・内閣官房、内閣府、財務(運営予算の統括)
防衛・外交系・・・安保会議、外務、海保、防衛
公安警察系・・・公安委、金融(スパイ?)、総務(サイバー攻撃)、消防(テロが起きた時の対応)、法務、公安審査委、公調、厚労(細菌兵器テロ?)、経産(防衛産業スパイ)、資エネ(原発へのテロ)、原子力規制委(原発へのテロ)、警察


という感じだろうか。

こういった限定の仕方をしたのは、審議の最中に「TPPは特定秘密なのか?」みたいな疑問が出たので、防衛・公安系以外の機関を外すことで、「誤解」を解こうとしたと見れるだろう。

入っていない機関であれっと思うのは検察庁ぐらいなものなので、限定されたといっても、そもそもこれらの機関ぐらいしか「指定」はしないものと思われる。
ちなみに、あくまでも「指定ができない」だけなので、他の42の機関は他の機関が特定秘密に指定した情報を扱うことは可能である。
なので、ここで指定機関が限定されたからといって、特定秘密の数が減るということではないだろう。

なお、この施行令案で気になったのは、「特定秘密」のまま廃棄できる規定についてである。
(他にも細かくはあるが、「運用基準」案の解説にまわす。)

施行令案の第12条第1項には、各行政機関の長が、運用基準に合わせて規程を作ることが定められている。
この中の10番目に、次の条文が紛れ込んでいる。

特定秘密文書等の奪取その他特定秘密の漏えいのおそれがある緊急の事態に際し、その漏えいを防止するため他に適当な手段がないと認められる場合における焼却、破砕その他の方法による特定秘密文書等の廃棄

特定秘密保護法の審議の際に民主党の長妻昭議員が出した「特定秘密保護法案及び防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書」(2013年11月28日提出)に対する首相の答弁書(同12月6日)において、次のようなことを首相は述べていた。

特定秘密の保護に関し必要な措置を定める政令等において、秘密の保全上真にやむを得ない場合の措置として保存期間前の廃棄を定めることは否定されない。

関連して長妻議員は、2014年1月31日の衆院予算委員会で質問をしている。
これに対して安倍首相は

 真にやむを得ないときはいつかと私も聞いたんですが、なるほどそうだと思ったんですが、例えば、有事などの際に航空機が不時着をしまして、運搬中の特定秘密が記録された文書が奪取されるおそれがある場合など、そういう場合は、これはその場で奪取されないように破棄をしなければいけない、そういう場合も生じる、これは極めて例外的な状況であります。
 いずれにせよ、このような、緊急やむを得ない、極めて例外的な場合の取り扱いについては、特別な定めとして政令等を定めるかについては、その要否も含め、今後検討していくこととしたい。


と答弁を行っている。
これに対して、長妻議員は興味深いことを述べている。

 私が懸念するのは、仮に、例えばマスコミがスクープをしそうになっている、こういう情報を政府が持っているんじゃないのかと。これは捨ててしまえばないわけですから、そういうことでまさか捨てるということはないようにしなければならないし、あるいは、野党に何かそういう書類の存在を嗅ぎつけられそうになって、これは捨てちゃえばないということだから、捨てちゃおうと。
 安倍総理、お笑いになりますけれども、やはり我々政治家は、そういうことはないように真摯に議論して法律をつくって、政令も、政令は役所、まあ閣議決定ですけれども、つくるわけでありますが、例えば、総理がかわって何年かしてまた別の内閣になったり、時がたつとその法律がひとり歩きして、官僚システムというのは、別に官僚の方個々が悪いわけではありませんが、拡大、拡大、拡大解釈になる傾向があるので、できるだけ抑制的に考えなきゃいけないというのが、特にこの秘密保護法案だと思います。


ここでは、安倍首相は「特定秘密」が廃棄できるのは「緊急事態」に際してのみだと述べているが、長妻議員はそれを疑っているということである。

さて、ではこの施行令案は、長妻議員の疑念を払拭できたのだろうか。
私は「微妙」だと思っている。

まず、すでに引用した施行令案の文章を見ると、確かに「漏えいのおそれがある緊急の事態」で「他に適当な手段がない」時にのみ、廃棄が認められている。
これは問題ないように見える。

ところが、この「緊急の事態」がどういうものであるのか、「運用基準」案に全く書かれていないのだ。

次回以降で説明するが、「運用基準」案は全般的に非常に細かい説明が多く、解けているかは別としても、国民からの「誤解を解こう」という意思を感じさせる文章である。
にもかかわらず、この「緊急の事態」については、次の説明があるだけである。

特に、施行令第12条第1項第10号に掲げる緊急の事態に際する特定秘密文書等の廃棄について、危機管理に万全を期すため、その実施手続その他必要な事項を定めるものとする。(11頁)

つまり、「緊急の事態」が何であるかは、各行政機関の定める規程に完全に丸投げなのである。
というより、おそらく「緊急の事態」は「緊急の事態」のままにしておいて、拡大解釈が可能な状態に置こうという意思を強く感じるのだ。

もちろん、「緊急の事態」のすべてを想像することは不可能である。
だが、ある程度の情報類型は提示し、それ以外の恣意的な運用を妨げるようなことは書かれるべきではないのか。

そして、ここに関連して気になるのは、「運用基準」案の内閣総理大臣への毎年の報告事項の中に「(カ) 過去1年に廃棄した特定行政文書ファイル等の件数」(32頁)という、「特定秘密」の廃棄件数を記載する欄が存在しているのだ。

もちろん、この件数を示すことは必要である。
緊急の事態が起きていなければ、すべての行政機関がここに「ゼロ」を並べるはずなのだから。
この「ゼロ」を並べさせることは重要なことである。

でも、深読みすると、毎年捨てることを想定しているとは読めないだろうか。

特定秘密保護法では、特定秘密の間に文書を廃棄することに対する制限は書かれていない。

「特定秘密」が廃棄されないストッパーは、実は公文書管理法の第8条第2項の、行政文書を廃棄する際には「内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」という部分にしか存在していないのだ。
「特定秘密」も行政文書であり、公文書管理法の適用を受けることは、首相も森雅子担当相も国会で明言している。

では、こっそり捨てられずに済むだろうか。

みなさん、秘密保護法案の審議を思い出してほしい。
公文書管理法が2011年4月に施行されたにもかかわらず、その後も重要な文書を勝手に捨てていた行政機関があったことを。
防衛省が「防衛秘密」を捨てていたことを。

この時に防衛省が出した論理は、公文書管理法第3条の「公文書等の管理については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」を悪用したものであり、自衛隊法などに文書管理の特別な定めがあると主張して、公文書管理法の適用逃れをしていたのだ。

これとおなじことが、今回の特定秘密保護法でも十分可能ではないのか。
各行政機関が、特定秘密の運用規程に文書管理について混ぜこんで、防衛省と同じような公文書管理法の適用逃れをする可能性は本当に無いのだろうか。

特定秘密保護法の施行令案の「緊急の事態」が規定されている2つ後の条文(第12条第1項第12号)に、次の文章が入っている。

前各号に掲げるもののほか、特定秘密の保護に関し必要なものとして運用基準で定める措置

こういった「その他」の部分が施行令案に入るのは当たり前であるが、この部分を利用すれば、特定秘密の廃棄を各行政機関の規程に入れることは可能なのではないのか?
そして、それを元に公文書管理法の適用逃れが可能なのでは無いのか?
各行政機関の規程、運用基準に合わせて作成する必要はあるが、この規程の案は内閣総理大臣に「通知」する必要はある(運用基準案11頁)が、公表する義務はないのだ。

もちろん、これが深読みで杞憂であったなら、それに越したことはない。

もし、政府の側に、私の考えたような懸念が無いというのであれば、運用基準に緊急事態の定義をある程度書き込むことや、この緊急事態以外の廃棄の禁止を書き込むこと、各行政機関が作成した規程は公表することなどが行われるべきではないかと思う。
または首相からきちんと国会答弁で言質を取っておくべきだと思う。

特定秘密保護法を「適正」に動かすと政府がいうのであれば、疑念はすべて潰すべきである。
もともと疑念を持たれる制度である以上、こういった穴は塞いでほしいと強く願っている。

次回からは、運用基準案の解説に行きます。
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