So-net無料ブログ作成
前の5件 | -

衆議院選挙公約における公文書管理制度改革 [2017年公文書管理問題]

ものすごく久しぶりのブログ更新です。
今回は、2017年10月22日投票の衆議院議員選挙における、各党のマニフェストの比較をします。

私の関心は、森友・加計・南スーダンPKO文書などの様々な問題で採り上げられた「公文書管理法」に関する記述がどのように書かれているかです。

まずは与党から。

□自民党
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/manifest/20171010_manifest.pdf

Ⅳ. 国の基本 政治・行政改革
・国民への情報公開、説明責任を全うするため、行政文書の適正な管理に努めます。
(37ページ)

【コメント】特に重点的な政策として取り上げられていない。また、一般論的なことしか書かれておらず、あまり熱心さは伝わらない。


□公明党
https://www.komei.or.jp/campaign/shuin2017/manifesto/manifesto2017.pdf

⑥政治改革と行財政改革 ⑶ 行政サービスの向上と効率化

●公文書管理のガイドラインを改正し、国の行政機関等の公文書管理を厳格化し、国民への適切な情報公開体制の整備を図ります。
(21ページ(最後))

【コメント】マニフェストの最後の最後に書いてあった。自民党と比べると、ガイドラインの改正に言及し、「国民への適切な情報公開体制の整備」という所に踏み込んでいるので、より積極性はうかがえるが、重点政策には取り上げられていない。


次に野党。

□希望の党
https://kibounotou.jp/pdf/policy.pdf

公約 8 憲法改正
憲法9条をふくめ憲法改正論議をすすめます。
国民の知る権利、地方自治の分権を明記します。

自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方を議論します。
たとえば、国民の知る権利を憲法に明確に定め、
国や自治体の情報公開を進めること。
地方自治の「分権」の考え方を憲法に明記し、
「課税自主権」、「財政自主権」についても規定すること。
これらを含む憲法全体の見直しを、
与野党の協議によって進めていきます。

〔具体的な記述〕
8.憲法に希望を ~地方自治、国民の知る権利など幅広く憲法改正に取り組む~

•国民の知る権利を憲法に明確に定め、国や地方公共団体の情報公開を抜本的に進める。
(15ページ)

【コメント】公約8のページに大きく記載があり、「知る権利」や「情報公開」を重点的な政策として置いていることがわかる。「知る権利」の憲法への明記は、かなり踏み込んだ主張。
憲法改正の中に情報公開を位置づけるというのは、保守の側からの情報公開への取り組みとして、興味深い考え方に見える。


□日本共産党
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/10/2017-senkyo-seisaku.html

重点政策
1、森友・加計疑惑を徹底究明し、国政の私物化を許しません
 安倍首相の昭恵夫人が名誉校長だった森友学園に、国有地が8億円も値引きされてタダ同然で払い下げられていました。安倍首相の「腹心の友」という加計孝太郎氏が長年にわたって要望してきた獣医学部新設が、安倍首相が議長の国家戦略特区会議で唯一例外的に認められました。安倍首相夫妻の「お友達」に、行政が歪められて特別の便宜が図られたという、重大な国政の私物化疑惑です。

 国民の7~8割が安倍首相の説明に「納得できない」と言っています。「資料は捨てた」「記憶にない」を繰り返しながら「手続きは適正」と開き直る、批判をする者は「悪者」扱いして権力を使って潰そうとする、都合の悪い事実が明らかになると「私は知らない」「秘書官や役人が勝手にやった」と部下に責任をおしつける――こんな説明に国民が納得できないのは当然です。

 真相究明の最大の障害になっているのは、安倍昭恵夫人、加計孝太郎氏という二人のキーパーソンが口をつぐんで何も語ろうとしないことです。日本の行政を法治国家としてまともな姿にするためにも疑惑の徹底究明は不可欠です。

 ――安倍昭恵氏、加計孝太郎氏ら、関係者の証人喚問をはじめ、国会の強力な国政調査権を使った真相究明を求めます。

 ――「国民の知る権利」の立場にたって、公文書管理と情報公開のあり方を根本からあらため、公正・公平な行政を確立します。

 ――内閣人事局を廃止し、「全体の奉仕者」としての公務員にふさわしい人事制度を確立します。

【コメント】森友・加計問題への徹底追求からの、公文書管理、情報公開の改革という主張。ただ、公文書管理制度改革が疑惑追及の手段のみに止まっているようには見える。


□立憲民主党
http://cdp-japan.jp/teaser/pdf/pamphlet.pdf

4 徹底して行政の情報を公開します
 知ること、議論すること、そして声を上げること。それは民主主義の根本です。しかし、2012年に安倍政権が誕生してから、政治は一部の権力者に私物化され、大切な情報が隠蔽されてきました。私たちは、現在の政治に違和感や怒り、不満を持つ人たちの声を、しっかりと受け止めます。適切なルールにもとづいて情報を公開し、オープンでクリーンな政治を実現します。

1 政府の情報隠ぺい阻止、特定秘密保護法の廃止、情報公開法改正による行政の透明化

2 議員定数削減、企業団体献金の禁止と個人献金の促進

3 中間支援組織やNPO団体などを支援する「新しい公共」の推進

4 公務員の労働基本権の回復、天下り規制法案の成立

5 取り調べの可視化をはじめ、国民から信頼される司法制度の確立

【コメント】情報公開が民主主義にとって重要という、情報公開の根本から理念を打ち立てていると言う意味で、他の政党と一線を画している。情報公開の前提となる公文書管理法に触れていないのはやや残念。


□日本維新の会
https://o-ishin.jp/election/shuin2017/common/pdf/manifest.pdf

記述なし

【コメント】うーん・・・。森友問題で大阪府から全く文書が出てこなかったことからしても、維新が公文書管理や情報公開に関心がないことはわかっていたが、記述が一切無いとは…。
自民党すら最低限の記述はあるのに。
全くこの問題に意識のないことがわかる。


□社民党
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2017/commitment.htm

政治 変えます
10 「モリカケ」疑惑の徹底究明、権力の私物化を許さず、国民優先のクリーンな政治

○政治と行政を私物化した森友学園・加計学園疑惑を徹底究明します。

○国民の知る権利の観点で情報公開制度と公文書管理のあり方を見直し、透明で公正な行政をめざします。
(以下略)

【コメント】共産党とスタンスはほぼ同じ。森友・加計問題への徹底追求からの、公文書管理、情報公開の改革という主張。


以上を見ていると、与党側はとりあえずマニフェストには入れておいたという対応です。

野党側は、希望の党は知る権利の憲法明記を打ち出し、立憲民主党が情報公開の理念から踏み込んでいる所を見ると、旧民進党の公文書管理や情報公開に詳しい議員が、マニフェストの記述に関与した可能性があります。
立憲民主党は、公文書管理法の作成に関与した議員(枝野幸男氏や西村智奈美氏など)が流れ込んでおり、踏み込み方が一番強いという印象です。

共産や社民は森友・加計問題への対応で、公文書管理法や情報公開法の強化を要求しています。
維新はこれでいいのかと言いたくなります。

私は与野党通じて、この問題に関心がある議員には、何とか国会に戻ってきてほしいと願っています。
公文書管理制度の改革は、与党か野党かは関係なく、行政の効率化や透明化に必要不可欠なものですが、なかなか理解して下さる議員の方は少ないのが現状です。

公文書管理法の骨抜きの改革が政府によって進められてきている現状、なんとか少しでもこの問題に関心がある人が生き残って欲しいと心から願ってやみません。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

公文書管理法5年後見直しの報告書について [2016年公文書管理問題]

公文書管理法が施行されてから5年が経過し、附則に定められた見直しが公文書管理委員会で検討され、報告書が2016年3月23日に出されました。

公文書管理法施行5年後見直しに関する検討報告書(案)→そのまま変更無し
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2015/20160323/20160323haifu1-2.pdf

この報告書についてコメントしてみたいと思います。

そもそも、関係者から洩れ伝わる話として、所轄の内閣府公文書管理課があまり見直しに乗り気ではないということは聞いていました。
結果として、非常に抽象的であいまいな報告書がでてきたというのが率直な感想です。

まず「基本的な考え方」として、公文書管理法の評価が書いてありますが、以前より「改善」という評価が強く、問題点として指摘されたのは、「(1)現用文書と非現用文書をつなぐ評価選別の在り方、(2)特定歴史公文書等、(3)地方公共団体における文書管理」の3点に絞られました。

そこであげられた「見直しの方向」は、概要によると以下の通り(下線も本文の通り)。

(1) 現用文書と非現用文書をつなぐ評価選別の在り方について
研究者の知見・協力を活用した評価選別の在り方を向上させる仕組み
専門職員の育成・配置等、各行政機関における 文書管理業務を支援する仕組み
学識経験者の知見・協力を活用した文書管理に関する評価・検証を行う試み
○ 電子文書の適切な保存・移管のための電子中間書庫の検討文書管理システムの改善
○ Web・サテライト研修等の多様な研修の実施コンテンツの充実

(2)特定歴史公文書等について
○ 利用者の声も踏まえ、専門職員の増員等、利用サービスの更なる充実
○ 「時の経過」を踏まえた利用決定を行っている国立公文書館等の現状や運営体制、諸外国における判断ルール、個人情報の取扱に関する議論の状況等に配慮した 利用審査事務・不服審査事務の効率化
○ 国立公文書館等の指定に当たって指針となる 「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン 」について、独立行政法人等の視点を踏まえた見直し

(3)地方公共団体における文書管理について
○ 地方公共団体の参考となる取組の情報収集・提供や、実務的な課題の支援等、国や国立公文書館が地方公共団体を積極的に支援し、普及・啓発を実施する取組

具体策が概要からは見えないと思って本文を見ても、ほぼこの内容に尽きています。
「どう具体的に改善するのか」が書かれる必要があるのに書かれていません。
どれもが改善する必要があることはたしかですが。

それもそのはずで、報告書は「見直しの方向性」というまとめ方をしており、すべてが「検討すべきである」という語尾になっています。
要するに「別のところで検討し直して具体策を立てましょう」としか読めません。

比較対象として、情報公開法の4年見直しの時を見ますと、直すべきところは「改善措置等」として「○○する必要がある」というまとめ方になっていました。
その結果、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律及び独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の趣旨の徹底等について」(総務省行政管理局長通知)が出されたりするなど、法改正には繋がらなかったですが、いくつかの点では改善された部分もありました。
総務省のウェブサイトに「検討会報告等」「改善措置」として情報がまとめてあります。)

今回の「検討すべき」として挙げられた問題は、いったいどうやって検討を続けることになるのでしょうか。
その点が委員会で議論されていたかは、傍聴していなかったので良くわかりません。
法改正は今の政権から考えて難しいとしても、ガイドラインの改善など、すべきことは色々とあると思います。

なぜこんな中途半端なことになってしまったのかを考えてみると、公文書管理や情報公開、秘密保護、歴史的文書の管理など、それをまとめて構想する司令塔がいないということに原因がある様に見えます。
公文書管理は内閣府ですが、情報公開や文書の電子化は総務省、秘密保護は法務省ですし、国立公文書館は未だに独立行政法人と、制度に関係する機関がバラバラで、司令塔を欠いています。

そのため、自分の管轄以外の改善案が出てきません。
省庁を横断するには政治家のリーダーシップが必要だとは思いますが、この問題に関心のある人がそもそも少ないです。

ただ、それを言っては元も子もないというところでしょうから、結局は現場現場で改善を積み重ねていくしかないのでしょう。

今回の報告書をもとに、具体的な改善にどうやって繋げていけるのかを考えていく必要があると思います。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

情報監視審査会(特定秘密保護法)の審査報告書について [2016年公文書管理問題]

2016年3月30日、特定秘密保護法運用の監視を行う国会の情報監視審査会が、今年度の報告書を提出しました。

衆議院情報監視審査会報告書http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/jyouhoukanshihoukokusyo.htm

参議院情報監視審査会報告書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/ugoki/h28/160330.html

概要の紹介と簡単なコメントをしておきます。

報告書を比較します。

衆議院は各行政機関からのヒヤリング結果をかなり詳細に資料として付けています。
内容はどういった情報を特定秘密に指定しているのか(いないのか)という運用の概略について、ひたすらに情報収集を行っているという印象です。
また、どうやってこの審査会を機能させるのかという制度論の部分の議論も多いです。それに関連して、政府に対して「意見」を6項目付けています。

参議院は資料があまり充実しておらず、意見も特に付けていません。
野党が開催を要求できる人数を満たしている(3分の1以上)ため、衆議院の倍近く開催し、特定秘密を実際に提出させて議論するなど、衆議院より特定秘密の「内容」に関わる問題を議論していました。
なので議論の内容自体は面白いです。

衆議院が付けているような具体的なヒヤリングの結果を、参議院の報告書にも載せてほしかったというのが率直なところです。


報告書を読んでの感想ですが、所属した議員は頑張って職務に取り組んでいたとは言えると思います。
秘密保護法や安保法の反対運動のプレッシャーなどもあったでしょうが、自分達がきちんとこの審査会を軌道に乗せなければならないという意識は強くあったのではないでしょうか。

ただ、官僚からきちんと資料が出てこないことが多かったようです。
衆議院の報告書に次のような部分があります(12頁)。

情報監視審査会において、特定秘密そのものではない事項についても、政府は「答弁を差し控える」旨の答弁をすることが多かった。情報が開示されないと審査会の任務である特定秘密の指定が適正かどうかの調査ができないとの発言が委員からなされているところである。
〔中略〕
額賀福志郎会長から、審査会は特定秘密に関する国民と行政との接点にあるとの観点から、国益と国民の利益をよく勘案し、より良い方向性を作っていけるように関係者が努力する必要がある旨の指摘が幾度もされているところである。


与党自民党の委員長が「幾度も」指摘をしているというところから見てもわかるように、漏洩に対する罰則まで用意している審査会においてすら、答弁を拒否されたり、情報が出てこなかったりしたことが多かったのでしょう。
与党が圧倒的多数の衆議院の側が、「意見」をつけて文句を言いたくなるのだから、よほどのことだと思います。

衆議院側が出した意見は6つあります。


(1)特定秘密の内容を示す名称(特定秘密指定管理簿の「指定に係る特定秘密の概要」及び特定秘密指定書の「対象情報」の記載)は、特定秘密として取り扱われる文書等の範囲が限定され、かつ、具体的にどのような内容の文書が含まれているかがある程度想起されるような記述となるように、政府として総点検を行い、早急に改めること。
 その上で、各行政機関が特定秘密の内容を示す名称の付け方に関し、各行政機関の間でばらつきが出ないよう、横断的な事項について政府としてある程度統一した方針を策定し、公表すること。

特定秘密の「名称」や「概要」があまりに曖昧すぎて、「審査することは極めて困難であり、不適切」(報告書10頁)な状況であるとのこと。
内容がある程度わかるように具体的に書けということです。

行政文書のファイル管理簿ですら、文書名の曖昧さ(検索して特定されないように、わざと曖昧な名称にする)は問題になっており、特定秘密でも同様の問題が起きているということでしょう。


(2)特定秘密を保有する行政機関の長は、指定された特定秘密ごとに特定秘密が記録された文書等の名称の一覧(特定秘密文書等管理簿)を、特定秘密ごとの文書等の件数とともに当審査会に提出すること。文書等の名称からその内容が推察しにくい場合は、文書等の内容を示す名称をもって説明すること。
 内閣府独立公文書管理監は、特定秘密文書等管理簿を提出させ、それを基に文書等の内容を示す名称となっているか否かを審査し、不適切と思料するものについては改めること及びこれらの経過につき当審査会に報告することについて検討すること。

(1)に関連して、「特定秘密文書等管理簿」を提出せよという意見。
審査会には「指定」管理簿は提出されますが、「文書」管理簿は提出されません。
「指定」管理簿は「こういった情報類型を特定秘密にします」という管理簿であるにすぎません。実際に管理しているのは「文書」管理簿です。
こちらを出さないと監視ができないと主張しています。

後半部分は、文書管理簿を見ることができる独立公文書管理監(内閣府で特定秘密保護法の監視を担う)が、審査会に報告をすることを検討せよということです。
これは(6)とも関係しますが、国会の審査会と内閣府の独立公文書管理監との関係は現在何も考えられていないため、そこを繋いで国会への報告義務を課そうとしています。

この(2)の部分はかなり重要な意味を持つと考えます。

国会が監視するとしても、全ての文書をフラットに監視できるわけではありません。
リストなどを用いて問題のある書類をピックアップして検証するという作業になる以上、まともなリストが提出されていない限り、機能は制限されることになります。


(3)特定秘密を指定する行政機関において、特定秘密を含む文書等の保存期間は、当該特定秘密の指定期間に合わせることも考慮した上で、それ以前の保存期間を設定する場合や特定秘密の指定期間満了前に当該特定秘密を含む文書等を廃棄する場合には、内閣府独立公文書管理監に合理的な説明を行うこととし、独立公文書管理監は、上記の運営状況について、定期的に当審査会に対し報告することとする制度を構築するよう検討すること。
 また、1年間に廃棄した文書等及び今後1年以内に廃棄予定の文書等(特定秘密の指定期間が切れる場合を含む。)について、その件数と、文書等の名称(名称から文書等の内容が推察しにくい場合はその内容)を当審査会に報告すること。

さらっと間に挟まっているが、かなり重要な事実が明らかになっています。
以前から私はブログでこの危惧を書いていましたが、文書の保存期間が満了した時に「特定秘密」の指定期間が残っていた場合、特定秘密を解除せずに廃棄することを、この法律は排除していません。

行政文書は、公文書管理法に基づいて、移管して国立公文書館等で永久に保存するか、廃棄するかの選択をしなければなりません。
廃棄をする際には「内閣総理大臣」と「協議」し「同意」を得る必要があります。
現在は、内閣府公文書管理課が審査し、国立公文書館が助言をしているという形で運用されています。

この(3)では、特定秘密のまま文書が廃棄されることを前提として話が進められており、さらに「内閣総理大臣」との「協議」「同意」の相手を、独立公文書管理監にしようとしています。
しかも「合理的な説明」としか書いていないので、事実上各行政機関の意志を追認するだけとして独立公文書管理監を位置づけようとしています。
監視機関をむしろ「合法的に捨てる隠れ蓑」にしようとしているようにも見えます。

特定秘密の廃棄はあくまでも緊急事態(戦地などで相手に文書が奪われそうになった時)に留めるべきであり、通常の廃棄をする際には、一度特定秘密は解除するか、公文書管理課や国立公文書館の担当職員に適性検査を受けさせて特定秘密を扱えるようにして、いま行われている方法で審査するべきだと思います。


(4)政府においては、当審査会への説明に際し、特定秘密以外の秘密等不開示情報の解除など事前に十分な準備を行ってから審査会に出席し、答弁すること。特に、国会に対する説明責任と審査会に対する情報提供の在り方について改めて検討すること。

これは、審査会の場で官僚側が、特定秘密でないことすら答弁拒否を続けたことに対する、審査会側の不満がストレートに反映されているところです。
答弁拒否をせずにきちんと説明せよということでしょう。


(5)特定秘密指定管理簿及び特定秘密指定書の内容について、不開示部分とされている部分を除き、各行政機関の長が積極的に公表すること及び内閣情報調査室は、これらの公表結果を取りまとめ、特定秘密全体の指定件数とともに総括的な閲覧を可能とすることについて検討を行うこと。また、特定秘密指定管理簿の特定秘密の概要の記載について、他省庁と同様の記述となっているものについては、審査会においてそれぞれの相違点を明確に答弁すること。

公開できる情報は自ら積極的に公開するべきという主張です。
こういった地道な情報開示は重要だと思います。


(6)内閣府独立公文書管理監の活動・機能等について当審査会として重大な関心を持っていることから、審査会に定期的に活動状況報告を行うこととする運用基準の改正等を検討すること。

独立公文書管理監を国会が監視するという仕組みを作りたいということです。
監視機関を監視するということですね。

さて、この6項目ですが、(3)は保留しますが、それ以外は「勧告」として行うべきものだったと思います。

「意見」はあくまでも「参考」にすぎません。
ただ、「勧告」であったならば、勧告に対してどのように対処したかの報告を求めることができます。
つまり、応答義務が各行政機関に発生します。

衆議院の提案は、実際に監視をきちんと行おうとするための基本的なインフラにあたる部分です。
これが整備されることは、監視のための大前提です。
勧告という強制力が働く方法で出すべき主張だったと思います。

1年目ということで、まずは仕組みを整えるところが議論の中心になったのはやむを得ないことかもしれません。
ただ、限界はあるにせよ、少しでも監視機能が有効的に使える仕組みを整え、特定秘密の歯止めのない拡大を阻止することが必要だと思います。

他に気づいたことがあれば、別途追加して書こうと思います。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

立法府(国会など)と公文書管理・情報公開制度 [2016年公文書管理問題]

先日某所で立法府(国会など)の公文書管理制度や情報公開制度について話す機会がありました。
せっかくなので、覚えているうちにまとめておきます。

「立法府では「公文書管理法」や「情報公開法」がない!」

こういう書き方をすると、「議事録は整備されて公開されてるよね?」と返されることがあります。

確かに、立法府が作る公文書には、作成や公開されることが義務づけられているものもあります。
代表的なものとしては、憲法57条で定められている本会議の議事録が挙げられるでしょう。
他にも慣例で、委員会の議事録や議事日程、法律案、質問主意書・答弁書などが公開されています。

特にインターネットが普及し始めてから、これらの情報へのアクセスはしやすくなりました。
私が院生になった頃には、国会のインターネットでの会議録検索が無かったため、委員会の議事録は国会図書館の議会官庁資料室に行かないと見ることができなくて苦労した思い出があります(都道府県図書館に部分的には入っていたりしたが)。
その時代から比べると隔世の感です。

ただ、これらは立法府側が自発的に提供している「広報」の類です。
立法府が所有している「公文書」=立法文書は当然これに止まりません。

立法府の公文書は大きく分けると、①補佐・附属機関の文書②会派・議員事務所の文書、の2つに分けることができます。
後者については、情報公開などになかなか馴染みにくい話ですので、とりあえず今回は脇に置いておきます(議員活動の自由があるので)。

①についてですが、以下のように分類できます。

1.事務局文書
 A:議院行政文書(参議院は「事務局文書」)→情報公開対象
 B:立法及び調査に係る文書(立法調査文書)
 C:その他(衆議院憲政記念館、参議院議会史料室にある歴史文書)→公開?

2.法制局文書

3.国立国会図書館文書
 A:事務文書→情報公開対象
 B:図書館資料(憲政資料なども含む)→公開
 C:立法及び立法に関する調査文書(国会図書館法第15条第1~3号)

4.裁判所訴追委員会文書

5.裁判官弾劾裁判所文書


1,2は衆議院と参議院とそれぞれに存在します。
2,4,5については、情報公開制度が無いので、内部でどのように文書を分類しているかわかりません。
1,3については、それぞれのAに情報公開制度が作られていますので、文書管理の規程を見ました。

1の事務局文書を説明すればおおよそ残りも説明がつくので、ここを中心に説明します。
4,5については私もよくわからないので飛ばします(判例は公開されているようですが)。

事務局の事務に関する文書(A)は、情報公開請求の対象となっています。

衆議院事務局
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/osirase/jyouhoukoukai.htm
参議院事務局
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/johokoukai/seido.html

ただし、立法府には情報公開法が存在しませんので、行政に対する情報公開請求と違って法的拘束力がありません。
そのため、行政の方では義務化されているファイル管理簿の公開がウェブにアップされていません。事務局に出向けば見ることはできます(国会図書館も同じく管理簿がアップされていない)。
5年ほど前に両院の事務局で管理簿のウェブ上公開をなぜしないのかを聞いたことがあるのですが、「予定はない」との答えでした。

事務局文書で大きいのは、Bの「立法調査文書」が公開されていないことです。
2の法制局文書、3のCの国会図書館が議員から依頼されて調査しているものも非公開となっており、議員が調査を求めた文書については一切公開されないこととなっています。

この「立法調査文書」は、国会における政策決定過程を解明するためには非常に重要な資料です。
また、普段から国会議員がどのような活動をしているのかを明らかにすることにも繋がります。
特に、行政の側に資料が残りにくい議員立法の政策立案関連の文書は、法制局などに残っている可能性は十分にありえます。

しかし、これらの文書は、情報公開の対象でないどころか、何年経っても公開されない(廃棄されている可能性も十分にありうる)文書となっています。
関係者から聞いた話だと、「議員活動の自由を侵害することを事務局が勝手に公開することはできない」という論理のようです。政治的中立性が問われる立場ですので、そのようにしか運用できないのでしょう。

確かに、例えば原発反対についての法律などの調査を法制局や国会図書館に依頼していたことが、情報公開請求で公開されてしまえば、原発賛成派からの圧力をかけられることも十分にありえます。
また、根回し中の政策の情報収集を依頼している可能性もあり、公開に慎重になるのはわからなくはないです。

ただ、依頼した本人が国会議員で無くなってから10年経過した後、とか、本人が亡くなった後、などに公開をするなど、本人の議員活動に影響が出ない形での公開方法を整備することは可能に思います。
このあたりは事務局の一存ではどうしようも無い部分ですので、国会議員が自ら法制度を作らないと公開されることはないでしょう。

では、この「立法調査文書」が非公開になっている状況はこれで良いのかということです。

おそらく国会議員がこの公開制度を整備しないというのは、関心が無いこともあるけれども、「作りたくない」というところもあるのでしょう。
何を調べていたのかを知られたくない、知られたときに批判されるかもと怖れているかもしれません。

私はここまでの文面を見てわかるように、「公開制度を整備すべき」という立場です。
そのために「立法公文書管理法」「立法情報公開法」を制定する必要があると考えています。

すでに行政府には公文書管理法と情報公開法が存在しており、公文書をどのように作成し、保存するか、公開の基準はどうするかなどの制度が法制化されています。
これは、現在だけでなく未来の国民に対する「説明責任」のためだと規定されています(公文書管理法第1条)。

立法府の「説明責任」を果たすために、どのような文書を作成しなければならないか、公開制度をどうするか、など、ルールをきちんと作る必要があると思います。
上記の立法調査文書だけでなく、法案の修正の経緯がわかる文書を作成することを義務化する(現在は密室の政党間協議で行われるから理由が分からない)とか、公開されていない委員会の理事会の記録作成なども必要でしょう。
すぐには公開できなくても、いずれは公開して検証の対象とすることで説明責任を果たすことができます。

そして、歴史的に重要な文書を永久保存して公開する仕組み(公文書館)を作ることも大切です。
歴史的に重要な文書を保存・公開する機関として、上記の1のCに衆議院憲政記念館などが位置づけられていますが、実際にはほとんど文書は移管されていません。
また、参議院議会史料室にある貴族院時代の文書も、目録が未整備でなかなか公開されないという話も聞きます。
国立公文書館に文書を移管することは法的には可能ですが、一切なされていません。

日本近代史の第一人者である加藤陽子東京大学大学院教授は、「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」の第10回(2015年10月19日)において、建設予定の新しい「国立公文書館」構想への提言をされているなかで、次のようなことを話されています。

○ 国民の目に映ずる国の文書
 国民にとって国の文書といった場合、立法、司法、行政のそれぞれが作成した記録といった目では見ていないはず。国家として一体的になされた政策決定過程を、現在及び将来の国民にしっかりと残し、「この国のかたち」として見て貰う施設。


つまり、「国の文書」というのは、立法、司法、行政のすべての文書が一括して管理・保存される必要があるということです。

今現在、行政は法律ができました。司法は最高裁によって一定のルールが作られています。

立法だけが何も対応していないのです。

この状況は変えていく必要があるのではないでしょうか。

行政の公文書管理法の附則第13条第2項には、「国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び権能等を踏まえ、検討が行われるものとする」と書かれています。
自分達で決めた法律に書かれているのですから、そこは検討してほしいと思っています。

最後に、この立法府の公文書管理や情報公開問題は、2001年の情報公開法施行前あたりには、法学者などが活発に議論をしていたのですが、その後はあまりされていないようです。
自由人権協会が2001年に国会の情報公開法案を作っていますが、その後はあまり要求も出ていないように思います。

立法府の公文書管理や情報公開を考えることは、国会議員の活動を国民により「見える」ようにする仕組みを考えることでもあると思います。
「何をやっているかよくわからない」から「税金の無駄だから減らせ」と言われがちな議員達が、どのような仕事をしているのかを、もっと国民の目に見えるようにしていくための制度として、これらを位置づけてはどうでしょうか。

もっと国民の側から必要性を訴えていかなければならないと考えます。


○参考文献

山田敏之「国会の情報公開と欧米の議会文書館制度」『調査と情報』319号、1999年6月
→国会の情報公開制度をコンパクトにまとめたもの。やや古くなったが、今でも参照にされる。

・大山礼子「国会情報」、浦田一郎・只野雅人編『議会の役割と憲法原理』信山社、2008年
→大山先生は国会制度の第一人者。岩波新書の『日本の国会――審議する立法府へ』もおすすめ。

大蔵綾子「わが国の立法府における情報公開の新展開」『レコード・マネジメント』57号、2009年5月
→大蔵さんは当時筑波の院生。その後、国立公文書館にも勤務されていた。アーキビストからの立法文書問題への切り口は非常にユニーク。私が本で立法文書問題を取り上げた際は、彼女の論文を手がかりにして調査をしました。

・奈良岡聰智・上田健介「イギリス議会文書館・図書館の概要」『RESEARCH BUREAU論究』11号、2014年12月、30-40頁
曽雌裕一「ドイツ連邦議会における議会公文書の管理状況―ドイツ連邦議会公文書館と公文書館規則を中心に」『レファレンス』66巻1号、2016年1月
→この2本は、近年の他国の議会文書館を紹介したもの。こういった事例紹介がもっと積み重なっていくと、日本がどうするべきかを考える手がかりになると思います。

瀬畑源『公文書をつかう―公文書管理制度と歴史研究』青弓社、2011年
→拙稿。立法文書問題については、今後の課題という所で詳しくまとめています。

立法府の情報公開の現状(2011年5月7日)
→上記の本を書くときの調査記録をブログに書いたもの。この頃から何も変わっていない・・・

・「衆議院事務局文書取扱規程」「参議院事務局文書管理規程」
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/report.html
ウェブに上がっていなかったので。2011年に情報公開請求で入手したもの。リンク先の一番下の所に貼りました。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密が会計検査院の検査に提出されない可能性について [2015年公文書管理問題]

ずいぶんと時間が空いてしまいましたが、この問題は自分なりにきちんと考えたいと思ったので取り上げてみます。
毎日新聞の2015年12月8日のスクープ。

特定秘密保護法 会計検査院「憲法上、問題」指摘
毎日新聞 2015年12月8日 08時30分
http://mainichi.jp/articles/20151208/k00/00m/040/176000c

「すべてを検査とする憲法の規定上、問題」

 特定秘密保護法案の閣議決定を控えた2013年9月、法が成立すれば秘密指定書類が会計検査に提出されない恐れがあるとして、会計検査院が「すべてを検査するとしている憲法の規定上、問題」と内閣官房に指摘していたことが分かった。検査院は条文修正を求めたが、受け入れられないまま特定秘密保護法は成立。内閣官房は修正しない代わりに、施行後も従来通り会計検査に応じるよう各省庁に通達すると約束したが、法成立後2年たっても通達を出していない。【青島顕】

 毎日新聞が情報公開請求で内閣官房や検査院から入手した法案検討過程の文書で判明した。10日で施行1年を迎える特定秘密保護法の10条1項は、秘密を指定した行政機関が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある」と判断すれば、国会などから求められても秘密の提示を拒むことができるとしている。

 開示された文書によると13年9月、同法の政府原案の提示を受けた検査院は、「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」がある場合、特定秘密を含む文書の提供を検査対象の省庁から受けられない事態がありうるとして、内閣官房に配慮を求めた。憲法90条は、国の収入支出の決算をすべて毎年、検査院が検査すると定めているためだ。

 ところが、内閣官房は「検査院と行政機関で調整すれば(文書の)提供を受けることは可能」などと修正に応じなかった。検査院側も譲らず、同年10月上旬まで少なくともさらに2回、憲法上問題だと法案の修正を文書で繰り返し求めた。

 結局、検査院と内閣官房の幹部同士の話し合いを経て同年10月10日、条文の修正をしない代わりに「秘密事項について検査上の必要があるとして提供を求められた場合、提供する取り扱いに変更を加えない」とする文書を内閣官房が各省庁に通達することで合意した。約2週間後の10月25日に法案は閣議決定され、国会に提出されて同年12月に成立した。

 それから2年たつが7日までに通達は出ていない。会計検査院法規課は取材に「今のところ、特定秘密を含む文書が検査対象になったという報告は受けていない」とした上で「我々は憲法に基づいてやっており、情報が確実に取れることが重要。内閣官房には通達を出してもらわないといけない。(条文の修正を求めるかどうかは)運用状況を見てのことになる」と話した。

 内閣官房内閣情報調査室は取材に「憲法上の問題があるとは認識していない。会計検査において特段の問題が生じているとは承知していない」と答えた。通達については「適切な時期に出すことを考えている」としている。

〔中略〕

情報隠し 危険はらむ

 会計検査院にとって、大日本帝国憲法下では軍事関係予算の検査に限界があった。政府・軍の機密費が会計検査の対象外だったため、膨れ上がった軍関係予算の多くがブラックボックスに入った。「会計検査院百年史」は、軍事上の秘密漏えいを処罰する軍機保護法(1937年改正)によって「会計検査はかなり制約を受けた」と記す。

 現行憲法90条はこうした反省から「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院が検査する」と規定する。検査院は内閣から独立している。これまでも自衛隊法の規定する防衛秘密について検査院への提供を制限する規定はなかった。

 特定秘密には防衛や外交などの予算措置に関する文書が含まれる。

 秘密保護法10条1項について、元会計検査院局長の有川博・日本大教授(公共政策)は「検査を受ける側が(提出文書を)選別できるなら、憲法90条に抵触すると言わざるを得ない」と指摘する。

 国の重要な秘密の漏えいや不正な取得に重罰を科す秘密保護法は、運用次第で深刻な情報隠しにつながりかねない危険をはらむ。疑念を解消する努力が政府に求められる。【青島顕】
(引用終)

『毎日新聞』社会部の情報公開制度を利用した調査報道は群を抜いている。
先日の内閣法制局が集団的自衛権を認める閣議決定に関する文書を持っていなかった件も『毎日新聞』のスクープであった。

さて、内容について分析したい。
会計検査院は憲法90条に基づいて置かれる機関である。

憲法90条1項を見てみると

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

とある。
キーワードは「すべて」「毎年」「次の年度」「国会に提出」である。

予算は必ず「毎年」締めて、会計検査を受けなければならない(「すべて」であり例外は無い)。
そして内閣はそれを翌年度内に国会に報告する義務を負っている。

「すべて」とある以上、特定秘密に指定されている予算もその対象となる。
当然だが、その検査を行うためには特定秘密を見る必要も出てくる可能性が高い。
それが行えなくなる可能性があるということが、この記事の指摘した点である。

これは非常に大きな問題である。
ただ、この問題を理解するためには、戦前からの会計検査院の歴史について考える必要がある。
会計検査院が作成した『会計検査院百年史』(1980年)を参考にすると、以下の通りである。


戦前の会計検査院は、天皇の下に置かれていたため、帝国議会との関係が無かった。
また、軍などの検査に、大きな制約を科されていた。

帝国憲法に基づいて会計検査院法が制定されたのは1889年であるが、この23条には、「機密費」は「検査ヲ行フ限リニ在ラス」とされており、軍だけでなく、外務省なども含めた「機密費」について、会計検査院は一切手を出せなかった。
また、翌年に「陸海軍出師準備ニ属スル物品検査ノ件」が法制化され、軍の「出師」(出兵)の準備のための物品費用については、検査を受けなくても良くなった。
そして「出師準備品」に何を指定するかは陸海軍に任された。

陸軍は当初から、さまざまな物品を「出師準備品」として会計検査を受けないようにし(海軍は1941年から拡大)、会計検査院の検査から逃れようとした。
会計検査院は何度も抗議をしたようだが、全く相手にされなかったらしい。

また、1899年には軍機保護法が制定され、軍の機密に関わる文書を入手しづらくなり、会計検査がさらにやりづらくなった。
特に1937年の大改正の後には、たとえ検査のために軍事機密を見せてもらえたとしても、その報告をする際に情報を利用することができず、会社名はA社とかいった形で、ぼかして報告せざるをえなかった。

さらに、日清戦争の際に「臨時軍事費特別会計」が置かれることになった。
これは、作戦行動に必要な経費を、細目を付けずにざっくりと陸海軍に渡し、戦争が終わって会計を閉じるときに検査を受けさせるという仕組みである。
予算が足りないときには追加予算を申請するが、その細目も議会で説明する必要が無い。

この会計は軍に重宝された。この「特別会計」は、戦争が終わるまでを一つの年度と考え、途中に検査が行われない。
また、検査には制約もあったので、軍はかなり自由にこの予算を使っていた。

この「臨時軍事費特別会計」は、のちに日露戦争、第一次世界大戦、アジア・太平洋戦争において設置された。

第一次世界大戦の臨時軍事費は、シベリア出兵にまで流用された。
のちに田中義一陸軍大将が持参金300万を持って立憲政友会総裁になった際の資金の出所として、この臨時軍事費の流用が疑われたこともある(陸軍機密費事件)。

アジア・太平洋戦争時の臨時軍事費は、元々「支那事変」対象のものだったが、陸海軍が対英米戦の準備に大量に流用し、そのまま「大東亜戦争」対象へと繋がっていった。
また、選挙対策などにも流用されたとされており、検査が戦争終結まで来ないことをいいことに、目的外利用が繁雑に行われていた。

この「臨時軍事費特別会計」は、敗戦後の1946年に停止になるが、会計検査院の検査の結果、全体で約1554億円の支出のうち、陸軍は約64億、海軍は約62億が「戦災などによる証明書類消失」のため、「検査したことにする」として処理された(当時の物価は今よりかなり安いので、相当な額だと思われる)。
もちろん、本当に消失したものもあっただろうが、使途不明金などがまとめて処理されたということだろう。

ちなみに会計検査院によれば、1945年の国家予算は7割近くが臨時軍事費で占めていたとのことであり、その金額の大きさがうかがえる。

戦後の会計検査院は、この反省を活かして作られた。
軍が「暴走」できたのは、当然「予算」の裏付けがあったからこそである。
臨時軍事費は打ち出の小槌のように予算を吐き出すシステムだったのだ(歳入のほとんどは公債)。
だからこそ、きちんとチェックをする体制を作らなければならなかったのだ。

そこで、臨時軍事費特別会計のような複数年度にわたって検査を受けない予算は作れなくした。
国家機密であろうとも、それを検査できるようにした。防衛省や自衛隊の予算でも例外は無い。

ここまでを踏まえると、今回の記事の何が論点になっているかがわかるだろう。
つまり、特定秘密に関する予算がきちんと検査できなくなれば、戦前の軍機保護法の下での検査に類似する状況になるという恐れである。

特定秘密に関わる予算であろうと、憲法90条を考えれば会計検査の対象となる。
適切な使用法かを判断するには特定秘密を見なければならない可能性もある。
報告書にはぼかして書かざるをえないかもしれないが、少なくともチェックする会計検査院側の仕事に制限がつくようなことがあってはならない。

少なくとも法律を作る際に、会計検査院と「秘密事項について検査上の必要があるとして提供を求められた場合、提供する取り扱いに変更を加えない」とする文書を出すと決めたのであれば、それは速やかに実行されるべきであろう。


追記、というより、むしろこっちも重要。

なお、この問題を考える際に、もう一つ考えなければならないのは、「内閣官房機密費」(報償費)の問題である。
本来この機密費は会計検査院の検査対象であるが、どうも「別のやり方」でスルーしているらしい。

この件は情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんが、この報道を受けてのブログで書かれているが、どうやら「原則として国の機関は会計検査院には支出証拠の原本を提出することになっているが、内閣官房機密費、外務省機密費、警察庁機密費などは例外的に別の方法で支出の証明をすればよいことになっている」とのことである。

おそらく、特定秘密に関する予算については、この機密費と同様の検査で済ませたいというのが、内閣官房の方にはあるのではないだろうか。
だから、会計検査院との約束を無かったことにしようとしているのではないか。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問
前の5件 | -